2009年6月17日水曜日

2型糖尿病 運動不足と食べ過ぎ、子どもの発症が増加

(2009年6月12日 毎日新聞社)

2型糖尿病を発症する子どもたちが増加。
予防法がない1型と違って、2型は運動不足と食べ過ぎが原因。
肥満によって自信を失い、不登校になるケースも。

もみのき病院(高知市塚ノ原)の内田泰史理事長(66)と
岡田泰助・小児科部長(47)=日本糖尿病協会小児対策委員会副委員長=
に、全国に先駆けて取り組んでいるサマーキャンプや
治療法について聞いた。

----糖尿病はどんな病気か?

岡田部長 インスリンの働きが悪くなり、血中ブドウ糖が身体の細胞の中に
取り込まれなくなり、血糖値が上昇(高血糖)してくる病気。
高血糖状態が持続すると、全身の血管に障害が生じ、合併症を起こす。
代表的なものは、目の奥の血管が損傷される網膜症。
失明して、日常生活に支障。
脳卒中や心筋梗塞のリスクも高くなる。

----1型と2型糖尿病の違いは?2型が子どもに増えているのはなぜ?

部長 1型は、何らかの原因でインスリンの製造工場が壊され、
インスリン分泌がゼロになる。
遺伝的要素は少なく原因不明だが、
注射でインスリンを補充すれば100%治療できる。
2型は、食べ過ぎと運動不足からインスリンの作用が悪くなる。
遺伝(体質)の影響が大きい。

治療の基本は、食事と運動療法。
子どもに増えているのは、肥満傾向の子どもの増加に伴い、
インスリンを作る膵ベータ細胞が早期からダメージを受け、
小児期から発症している。
現代社会において、身体活動量が減っていることが最も大きな原因。
食事も、脂肪の占める割合が増えたことも一因。
全く無症状のため、治療を中断してしまう方が多く、
成人後に重症合併症を起こしやすい。
体質的に、日本人は発症しやすい。

----原因や増加の背景をどう分析するか?

部長 社会が便利になるにつれ、身体を動かす必要がない。
通学に車を使ったり、お手伝いもしなくなったり、
夏休みの過ごし方が変わるなど、子どもの身体活動量が激減。

幼少期からの家族の問題が解決できない、現代社会の弊害。
核家族化に伴い、「地域による子育て」がされない。
食の欧米化に伴い、乳製品や高脂肪食、ファストフードなどの
摂取が増え、忙しいお母さんのために簡単にできる料理も普及。
コンビニの軒数や車の台数などと、2型糖尿病患者の増加は比例。

----治療法や生活習慣の改善について。

部長 家族をはじめ、本人と良い信頼関係を築き、
徐々に生活の中へ介入し、「これならやれる」と思えることから始める。
外来診療で、いかに詳しく生活について話してもらえるかが、
主治医の腕の見せどころ。
患者さんとその家族の生活歴を聞き、
登校手段、買い物の仕方、ゲームを買うか買わないか、
テレビの見せ方、家族の生活などを聞くと、ほぼ確実に肥満の原因が存在。
治療方法はすぐに見つかるが、
実行してもらうためにどうお話しすればよいのかがポイント。
いかにモチベーションを持ってもらうか、ということ。

----2型も対象にしたサマーキャンプの目的や内容は?

部長 1型のキャンプは、日本では1963年から始まり、
2型は肥満が要因と言うことで、「自業自得だ」との考えから、
支援の動きがなく、キャンプを開くことが出来なかった。
肥満が原因でいじめられ、運動能力も低いために運動嫌いになり、
不登校や引きこもり状態になる子が多い。
「放っておいていいのか」と、全国に先駆けて、

13年前に1型のキャンプに肥満の子を連れて行ったのが始まり。
以来、毎年参加してもらっている。
栄養士や学生のボランティアの協力で、4泊5日の日程で
カロリー計算の仕方を学んだり、サーキットトレーニングなどの
運動をこなしたりする。

昨年は広島・江田島で行い、4歳-高3の約40人が参加。
「ご飯を1杯食べたら、カロリーを消費するには1時間の散歩が必要」
などと毎食ごとに学ぶ。
運動では競争させ、褒美を用意すると、驚くほど積極的に取り組む。
運動が嫌いなのではなく、自信がなくてやる機会がなかっただけ。
昨年は、減量目標を全員に課し、最大約4キロの減量に成功。

----食事制限は大人でもつらい。どのような工夫が大切か?

部長 一番つらいのは、家の中にたくさん食べものがある状態で
我慢させられること。
家の中に食べ物を持ち込むことを控えるように、
家族全員の協力が必要。
親や祖父母が持ち込まなければ、かなりの方がやせていく。
褒めるのが下手な親と、褒められたことがない子ども、
という組み合わせが多い。
親には褒め方を教える。

----予防策や早期発見について、助言。

部長 母子手帳や幼稚園・保育園・学校での検診から、
成長曲線を作成すれば、早期発見が可能。
10年以上前から県内各地の学校を訪問し、養護教諭の先生に
このことをお願いしている。
予防に関して、3歳から小学入学までの体重増加速度を参考に、
早期に介入すべき。
小児科医にも、啓もう活動。
家族の中に、肥満や2型糖尿病の方が存在している場合はハイリスク。
早期発見早期介入により、発症予防することが大切。

----健康な身体を作る食事は?

内田理事長 よくかんで食べれば、脳の血流が良くなる。
消化吸収が良くなり、発育も良くなる。
かむことによって、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎを防げる。
20回かむと、食べる量が半分で済む。

家族だんらんで楽しく食べることも大切。
今は、学校から帰ると一人で食べる子どもが多く、
食べる環境が整っていない。
一人で食べると、早くたくさん食べがちに。
家族と一緒に食べることにより、親子の会話が弾み、
コミュニケーションの手段にもなる。
家族との会話を大切にすると、健康になる。

笑うことによって、免疫力が増す。
楽しく食事をして生き生き暮らせば、糖尿病の防止に。
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◆09年度(第20回)県小児糖尿病サマーキャンプ
(主催・県小児糖尿病つぼみ会)

【日程】8月5日(水)-9日(日)4泊5日
【場所】瀬戸アグリトピア(愛媛県伊方町大久)
【対象】1型糖尿病患者(高校生以下)
【参加費】会員1万円、非会員1万600円
【申し込み先】〒780-0952 高知市塚ノ原6の1
もみのき病院小児科 岡田泰助
(088・840・0222、FAX088・840・1001)
【締め切り】今月30日(火)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/12/101956/

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