2009年6月19日金曜日

星空に学ぶ(2)ミニ衛星で広がる興味

(読売 6月10日)

宇宙への興味をかき立てる体験型の授業が始まっている。

秋田県立能代高校の一室。
黒板の前のスクリーンに映し出されたロケット打ち上げの映像を、
課題研究で物理を選択した理数科の2年生10人が、
食い入るように見つめていた。

「これを実現したのは、みんなと同じ高校生です。
設計図はなく、すべて自分たちで設計して組み立てたんだよ」
秋田大学の土岐仁教授(57)(機械工学)が説明。
驚いた表情を浮かべる生徒たち。
男子生徒の一人は、「ロケットを飛ばすのはかっこいいと思って
参加したけど、大変そうだ」

高校生たちが挑戦するのは、ミニ衛星「缶サット」。
空き缶の中に、小型無線カメラなどの観測機器を搭載したもの。
費用の大半は、独立行政法人科学技術振興機構の
「サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト」の支援。

製作は、秋田大と共同で進められ、最終的には土岐教授らが
中心となって、8月に全国の高校生を集めて能代市内で開く
「缶サット甲子園2009」に出場。
全長約2メートルのプラスチック製小型ロケットで、
約400メートル上空に打ち上げ、パラシュートで降下する間に、
地上のターゲットを撮影する技術を競う。

授業を担当する能代高校の石崎敦史教諭(43)は、
「教科書を教える授業だけでは、宇宙の魅力がすべて伝わるわけではない。
体験を通じて宇宙に興味を持ってくれれば」と期待。

土岐教授は、2006年度から、女子高生を対象にした
「ロケットガール養成講座」を秋田大で開講。
缶サットに加え、打ち上げ用の小型ロケットも作る。
女子高生が、物理や数学を好きになったきっかけに、
宇宙が多かったという調査結果を知り、理系分野に親しむためには
宇宙を教材にするのがふさわしいと考えた。

設計図や教科書はなく、女子高生たちは自分たちで
試行錯誤しながら作業を進める。
機体作り、エンジンの配線と配管、パラシュートと缶サットを投下する
仕組み作り、缶サット内部の製作という4班に分かれ、
秋田大生にアドバイスを受ける。
缶サットのカメラの向きやパラシュートを工夫したり、ロケットと缶サットの
切り離しのタイミングが成功の鍵になる。

土岐教授は、「打ち上げに成功しても、缶サットがうまく投下できないことや、
パラシュートが開かず墜落したことも。
生徒が自分の頭で考え、工夫することで、
本当のおもしろさを分かってもらえる

これまでに参加した女子高生のうち2人が秋田大に進学し、
宇宙工学を学んでいる。

土岐教授は、「缶サット甲子園とロケットガールの相乗効果で、
さらに宇宙分野に興味を持ってもらうようにしたい」

◆サイエンス・パートナーシップ・プロジェクト

教育現場と大学などの研究機関との連携によって、
科学教育や理数科目への興味を高めることを目的に、
研究者らが実験や講演会の講師をする講座の費用を負担する事業。
大学や企業などの研究・技術開発を支援する
独立行政法人科学技術振興機構が実施。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090610-OYT8T00272.htm

0 件のコメント: