(サイエンスポータル 2008年3月18日)
地球環境をはじめ近い将来、社会が直面する“未来の課題”の解決は、
これまで大学で行われてきたシーズ先導型の研究では無理。
大学が蓄積してきた知識と研究力を総動員する、
ニーズ先導型の研究活動でこの壁を乗り越える。
こんな目的を掲げた東京工業大学統合研究院ソリューション研究機構の
機関誌「そりゅーしょん通信」最新(第9)号に、
「統合」についてあらためて問う記事が載っている。
「統合がうまくいっても、理工系だけの統合に終わるのではないかと危惧」。
元毎日新聞編集局次長・科学環境部長の
瀬川至郎・早稲田大学客員教授の寄稿記事。
「取材すべき喫緊の課題は複合的であり、個々のディシプリン(専門分野)を
統合した形で取り組まなければならない」。
前段で、毎日新聞時代の経験を紹介したうえでの指摘。
統合研究院が目指すのも同様、ディシプリンの「統合」と思われるのに、
機関誌を創刊号から読み返してみたら、紙面に登場するのは
理工系の研究者や企業の幹部ばかりではないか、というわけだ。
「そりゅーしょん通信」の巻頭言を書いているのは、
冨浦梓・東京工業大学監事(元新日本製鐵常務・技術開発本部副本部長)。
冨浦氏も、専門教育だけでは課題解決が困難になっていることを指摘。
目につくのは、「専門教育と一体化した教養教育が重要」と言っていること。
「試行不能な巨大人工物、試行が許されない生命倫理などにかかわる
対象が増加した結果、仮説実証法は破綻に瀕した」のだから、
「依拠すべきは論理整合性。論理整合を図るには、自然科学的論理や
人文社会科学的論理の充実に加えて、社会的合意や動向の把握も不可欠」。
理工系と、文科系の人間が集まって知恵を出し合えばよいというのではなく、
文科系的知識や思考法も備えた理工系の人間や、
その逆の人間が必要になっている、というようにも読める。
瀬川氏も、実はメディア企業においても、政治、経済、社会、科学など
各部が「統合」して目前の課題に取り組むことの難しさがあることを認めている。
「各取材セクションは、それぞれ『自分たちがやってきたこと』に固執し、
なかなか統合しようとしない」。
大学でも同様な現実があるのでは、というのが氏の危惧、
興味深いことに、氏も教育の重要性に触れている。
大学院教育については、相澤益男・総合科学技術会議議員
(前東京工業大学学長)も、最近、早急な改革の必要を唱えている。
では、大学院だけの改革で十分だろうか。
大学入学時に理科系、文科系に明確に仕分けられてしまう。
入学者選抜の仕組みと、その後のカリキュラムのあり方を変えずに、
冨浦氏が言うような「専門教育と一体化した教養教育」の充実が可能なのか。
大学(学部)に手を付けない限り、課題解決能力のある理系人材の育成は
難しいだろうし、文科系出身者でないと指導的な立場に就きにくい
日本社会の構造も変わらないのでは…。
そう考える人は、理工系出身者の一部だけだろうか。
http://www.scienceportal.jp/news/review/0803/0803181.html
2008年3月28日金曜日
女性教授計画により多くの女性科学者を頂点へ!
(サイエンスポータル 3月7日)
連邦教育研究省(BMBF)は、3月8日の国際婦人デーにちなみ
「女性教授計画」をスタート。
BMBFでは、国内大学に今後5年間で200名までの女性教授職を用意、
BMBFと各州政府は総額1億5000万ユーロを投入。
特筆すべき点は、大学が助成を受けるためには男女参画の機会均等が
良好と判断されなければならないことにあり、
判定は科学、研究、大学運営などに傑出した代表者からなる
独立の審議会によって行われる。
この措置について、シャヴァン連邦教育研究大臣は、
「大学が優れた後継女性科学者に長期的な展望を与えることができなければ、
価値あるポテンシャルを失うことになり、
女性教授計画はこの点で大学を支援するもの。
「女性教授計画」は、研究や学問における女性の機会均等にとって
万人が認めるものとなる。
大学の機会均等化活動を強化し、ドイツ研究界のトップにおける
女性の割合を拡大し、学界の創造性・イノベーション能力を引き上げるという
目的を達成するものとなる」
http://crds.jst.go.jp/watcher/data/386-003.html
連邦教育研究省(BMBF)は、3月8日の国際婦人デーにちなみ
「女性教授計画」をスタート。
BMBFでは、国内大学に今後5年間で200名までの女性教授職を用意、
BMBFと各州政府は総額1億5000万ユーロを投入。
特筆すべき点は、大学が助成を受けるためには男女参画の機会均等が
良好と判断されなければならないことにあり、
判定は科学、研究、大学運営などに傑出した代表者からなる
独立の審議会によって行われる。
この措置について、シャヴァン連邦教育研究大臣は、
「大学が優れた後継女性科学者に長期的な展望を与えることができなければ、
価値あるポテンシャルを失うことになり、
女性教授計画はこの点で大学を支援するもの。
「女性教授計画」は、研究や学問における女性の機会均等にとって
万人が認めるものとなる。
大学の機会均等化活動を強化し、ドイツ研究界のトップにおける
女性の割合を拡大し、学界の創造性・イノベーション能力を引き上げるという
目的を達成するものとなる」
http://crds.jst.go.jp/watcher/data/386-003.html
2008年3月27日木曜日
統計資料集「欧州の科学・技術・イノベーション」2008年版
(サイエンスポータル 3月10日)
EU研究総局は、欧州委員会統計局(Eurostat=ユーロスタット)が
標記資料集を公表。
同資料集は、全244ページから成り、内容は以下の3部構成。
1)研究開発投資(Investing in R&D)
・各国政府の研究開発費
・対国内総生産(GDP)比
2)知的従事者の調査(Monitoring the knowledge workers)
・研究開発人材
・高等教育など
3)生産性と競争力(Productivity and competitiveness)
・イノベーション
・特許
・先端技術産業
・知的サービス業
・EU産業R&D投資スコアボード
同書には、EU加盟27カ国の上記各事項に関する統計データや
指標がまとめられている他、適宜日本、中国、米国などとの国際比較。
http://crds.jst.go.jp/watcher/data/385-001.html
EU研究総局は、欧州委員会統計局(Eurostat=ユーロスタット)が
標記資料集を公表。
同資料集は、全244ページから成り、内容は以下の3部構成。
1)研究開発投資(Investing in R&D)
・各国政府の研究開発費
・対国内総生産(GDP)比
2)知的従事者の調査(Monitoring the knowledge workers)
・研究開発人材
・高等教育など
3)生産性と競争力(Productivity and competitiveness)
・イノベーション
・特許
・先端技術産業
・知的サービス業
・EU産業R&D投資スコアボード
同書には、EU加盟27カ国の上記各事項に関する統計データや
指標がまとめられている他、適宜日本、中国、米国などとの国際比較。
http://crds.jst.go.jp/watcher/data/385-001.html
21世紀地球科学の主要10課題
(サイエンスポータル 3月12日)
全米研究会議(NRC)は、21世紀の地球科学分野が直面する
主要課題をまとめた報告書を公表。
カリフォルニア大学バークレー校の地球化学教授、Donald J. DePaolp氏は
「地球科学分野が発展するためには、我々は過去を見つめ、
地球や生命の起源、惑星の構造や力学、生命と気候の関係など
根本的で深い問題に取り組んでいかなければならない」。
21世紀地球科学分野の主要課題(10課題)
1.地球や惑星はどのようにして生まれたのか?
2.地球の「暗黒時代」に何が起きたのか?
3.生命はどのようにして生まれたのか?
4.地球内部はどのようになっており、どのように地表面に影響しているか?
5.地球はなぜプレートテクトニクス(岩盤移動)が起き、大陸があるのか?
6.地球は材料の物性にどのようにコントロールされているのか?
7.気候変動がなぜ起こるのか?そしてどの程度変動するのか?
8.生命と地球は互いにどのように影響合っているのか?
9.地震と火山噴火は予知できるのか?
10.(地層と地表面との)流動現象はどのように生活環境に影響するのか?
同書は、米エネルギー省、国立科学財団、米国地質調査所、
米国航空宇宙局の要請を受け作成。
http://crds.jst.go.jp/watcher/data/386-001.html
全米研究会議(NRC)は、21世紀の地球科学分野が直面する
主要課題をまとめた報告書を公表。
カリフォルニア大学バークレー校の地球化学教授、Donald J. DePaolp氏は
「地球科学分野が発展するためには、我々は過去を見つめ、
地球や生命の起源、惑星の構造や力学、生命と気候の関係など
根本的で深い問題に取り組んでいかなければならない」。
21世紀地球科学分野の主要課題(10課題)
1.地球や惑星はどのようにして生まれたのか?
2.地球の「暗黒時代」に何が起きたのか?
3.生命はどのようにして生まれたのか?
4.地球内部はどのようになっており、どのように地表面に影響しているか?
5.地球はなぜプレートテクトニクス(岩盤移動)が起き、大陸があるのか?
6.地球は材料の物性にどのようにコントロールされているのか?
7.気候変動がなぜ起こるのか?そしてどの程度変動するのか?
8.生命と地球は互いにどのように影響合っているのか?
9.地震と火山噴火は予知できるのか?
10.(地層と地表面との)流動現象はどのように生活環境に影響するのか?
同書は、米エネルギー省、国立科学財団、米国地質調査所、
米国航空宇宙局の要請を受け作成。
http://crds.jst.go.jp/watcher/data/386-001.html
腎臓がん克服、小橋建太さん 不屈のリング…自分信じ生きる
(毎日 3月18日)
人気、実力ともに日本を代表するプロレスラー、小橋建太さん(40)が
腎臓がんを克服してリングに帰ってきた。
がんで腎臓を片方取って、現役復帰したプロスポーツ選手は前例がない。
プロレスや生き様を通して、たくさんの人を勇気付けている小橋さん。
不屈の闘志を支えるものは何か?
「こばしーーーっ!」
叫ぶような声が、日本武道館のあちこちから聞こえてくる。
得意技のマシンガンチョップや剛腕ラリアットが決まるたびに、
観客から「お~~」という歓声が地鳴りのように響く。
リングの上では、汗でぬれた鍛え上げられた体がライトに照らされる。
復帰第8戦を飾った小橋さん。
コールや拍手が鳴りやまない。会場が一つになっていった。
小橋さんは、両親の離婚で父の姿を知らないまま育った。
母はパートなどを掛け持ちして、小橋さんと兄の2人を1人で育てた。
経済状況は苦しかった。
家は雨漏りし、畳がへこみ、床底が抜けた。
母は、愚痴ひとつ言わずに必死で働いた。
「母が胸を張れる立派な人間になりたい」。
早く自立したく、高校卒業後は京セラで工場勤務。
しかし、自分が置かれた状況が見えてくるに従って、
「本当にこれがしたかったことなのか?」という疑問が。
小さな新聞の記事が目に入った。
米国のプロボクサー、マイク・タイソンの活躍を伝えるもの。
恵まれない環境に育ち、少年院にまで入っていた同い年の男が、
好きなボクシングでのし上がっている。
「自分にとってのボクシングはなんなのか?」。
「プロレスラーになりたい」。子供のころの夢がよみがえった。
退職してウエートトレーニングに取り組み、全日本プロレスに入門願。
しかし、実績がないことや20歳という年齢を理由に入門を断られた。
交渉して何とか入門したが、上下関係が厳しい先輩たちとの共同生活や
付き人としての苦悩など、苦労は絶えなかった。
リングデビューは88年。
熱いファイトスタイルや不屈の強さで、徐々に存在感を増した。
たくさんの賞を取り、前シーズンではチャンピオンだった06年6月、
がんが見つかった。
所属する「プロレスリング・ノア」の健康診断。
東京都江東区にある事務所を訪ねると、
白いシャツにブルーのネクタイをきちんと締めた小橋さんが現れた。
黒のスーツに包んだ体は、リングの上よりも小さく見える。
激しい戦いの後、観客に何度も丁寧にお辞儀をした、
あの誠実な人柄は、ここでも全身からにじみ出ている。
「(告知された時)がん=(イコール)死=『もうプロレスができない』って、
すべてが結ばれました。
帰りのタクシーの中で、入門して20年のことが頭にフラッシュバック。
家に帰って、少し落ち着いてから、いろいろ考えました。
ああ、もうこれで死んでしまうんだな、と。
あこがれのチャンピオンベルトも取ったし、
ベストバウト(年間最高試合賞)とかMVPとかの賞もいっぱいもらったけど、
でも何が自分にとって一番大きかったのか、と考えたら、
ファンのみんなの声援だったんですね。
自分のプロレス人生は本当にファンのお陰だった。
そう思うと、後悔はなかった。
こんなにみんなに愛されたプロレスラーとして後悔はない、とね」
手術後は、底なし沼といえるほどの精神の激しい落ち込みに苦しんだ。
全身の倦怠感が3~4カ月続き、心身ともにブラックホールにいるよう。
練習熱心で知られるが、当時は「ここで動かないとダメだ」と、
自分を無理やり道場に連れて行き、練習を再開。
「早くリングに上がりたい」という一心。
復帰について、主治医は「絶対反対」と言い続けた。
07年12月2日。日本武道館で、546日ぶりの復帰戦。
詰め掛けた1万7000人は「プロレスリング・ノア」史上最多の観客動員数、
異例の立ち見券も販売。
終了後、観客は総立ちとなり、「小橋コール」。
多くの人が泣いていた。みんなが「生きる」ことの大切さを共有。
「まずは生きること。
生きたくても、生きることができない人がいっぱいいる中で、
自分は生きるチャンスを得たんですよ。
当たり前にできていたことが、当たり前って感じない。
すごくありがたく感じますよね。
すべてに対して、ありがたい、ありがとう、って感謝の気持ちが
余計に強くなりましたよね」
がんは今、不治の病というわけではない。
たくさんの人が不安の中で闘病している。
「がんばるしかないですよね。自分を信じて、生きようと。
自分も、チャンピオンになったこのいい時期に、なんでなんだ?と
思いましたけどね、やっぱり。だから……」
言葉の端々から一生懸命な姿勢が見える。おごらず、偉ぶらない。
「自分だけじゃないんだよ、と。人間なんてみんな一緒、みんな弱いと思う。
でも、強くなろうとする気持ちがあれば、強くなっていく。
『上がって行こう、上がって行こう』と思えば、必ず上がって行ける。
プロレスが好きか嫌いかは別にして、がんになっても復帰したプロレスラーが
いるということを一人でも多くの人に知ってもらいたい。
病気とかいじめとかにあっている人に、負けないで自分自身を信じて
がんばって行けば道は開けていくんだと。それを伝えたいんですよね」
小橋さんの目は、どこまでも真っすぐだった。
==============
◇こばし・けんた
1967年、京都府福知山市生まれ。
福知山高校卒業後、京セラ勤務を経て、87年、全日本プロレス入門。
88年にデビュー。00年「プロレスリング・ノア」創設を機に、
「新しい自分を建てる」という意味を込めて本名の健太から改名。
186センチ、115キロ。
http://mainichi.jp/select/science/news/20080318dde012050013000c.html
人気、実力ともに日本を代表するプロレスラー、小橋建太さん(40)が
腎臓がんを克服してリングに帰ってきた。
がんで腎臓を片方取って、現役復帰したプロスポーツ選手は前例がない。
プロレスや生き様を通して、たくさんの人を勇気付けている小橋さん。
不屈の闘志を支えるものは何か?
「こばしーーーっ!」
叫ぶような声が、日本武道館のあちこちから聞こえてくる。
得意技のマシンガンチョップや剛腕ラリアットが決まるたびに、
観客から「お~~」という歓声が地鳴りのように響く。
リングの上では、汗でぬれた鍛え上げられた体がライトに照らされる。
復帰第8戦を飾った小橋さん。
コールや拍手が鳴りやまない。会場が一つになっていった。
小橋さんは、両親の離婚で父の姿を知らないまま育った。
母はパートなどを掛け持ちして、小橋さんと兄の2人を1人で育てた。
経済状況は苦しかった。
家は雨漏りし、畳がへこみ、床底が抜けた。
母は、愚痴ひとつ言わずに必死で働いた。
「母が胸を張れる立派な人間になりたい」。
早く自立したく、高校卒業後は京セラで工場勤務。
しかし、自分が置かれた状況が見えてくるに従って、
「本当にこれがしたかったことなのか?」という疑問が。
小さな新聞の記事が目に入った。
米国のプロボクサー、マイク・タイソンの活躍を伝えるもの。
恵まれない環境に育ち、少年院にまで入っていた同い年の男が、
好きなボクシングでのし上がっている。
「自分にとってのボクシングはなんなのか?」。
「プロレスラーになりたい」。子供のころの夢がよみがえった。
退職してウエートトレーニングに取り組み、全日本プロレスに入門願。
しかし、実績がないことや20歳という年齢を理由に入門を断られた。
交渉して何とか入門したが、上下関係が厳しい先輩たちとの共同生活や
付き人としての苦悩など、苦労は絶えなかった。
リングデビューは88年。
熱いファイトスタイルや不屈の強さで、徐々に存在感を増した。
たくさんの賞を取り、前シーズンではチャンピオンだった06年6月、
がんが見つかった。
所属する「プロレスリング・ノア」の健康診断。
東京都江東区にある事務所を訪ねると、
白いシャツにブルーのネクタイをきちんと締めた小橋さんが現れた。
黒のスーツに包んだ体は、リングの上よりも小さく見える。
激しい戦いの後、観客に何度も丁寧にお辞儀をした、
あの誠実な人柄は、ここでも全身からにじみ出ている。
「(告知された時)がん=(イコール)死=『もうプロレスができない』って、
すべてが結ばれました。
帰りのタクシーの中で、入門して20年のことが頭にフラッシュバック。
家に帰って、少し落ち着いてから、いろいろ考えました。
ああ、もうこれで死んでしまうんだな、と。
あこがれのチャンピオンベルトも取ったし、
ベストバウト(年間最高試合賞)とかMVPとかの賞もいっぱいもらったけど、
でも何が自分にとって一番大きかったのか、と考えたら、
ファンのみんなの声援だったんですね。
自分のプロレス人生は本当にファンのお陰だった。
そう思うと、後悔はなかった。
こんなにみんなに愛されたプロレスラーとして後悔はない、とね」
手術後は、底なし沼といえるほどの精神の激しい落ち込みに苦しんだ。
全身の倦怠感が3~4カ月続き、心身ともにブラックホールにいるよう。
練習熱心で知られるが、当時は「ここで動かないとダメだ」と、
自分を無理やり道場に連れて行き、練習を再開。
「早くリングに上がりたい」という一心。
復帰について、主治医は「絶対反対」と言い続けた。
07年12月2日。日本武道館で、546日ぶりの復帰戦。
詰め掛けた1万7000人は「プロレスリング・ノア」史上最多の観客動員数、
異例の立ち見券も販売。
終了後、観客は総立ちとなり、「小橋コール」。
多くの人が泣いていた。みんなが「生きる」ことの大切さを共有。
「まずは生きること。
生きたくても、生きることができない人がいっぱいいる中で、
自分は生きるチャンスを得たんですよ。
当たり前にできていたことが、当たり前って感じない。
すごくありがたく感じますよね。
すべてに対して、ありがたい、ありがとう、って感謝の気持ちが
余計に強くなりましたよね」
がんは今、不治の病というわけではない。
たくさんの人が不安の中で闘病している。
「がんばるしかないですよね。自分を信じて、生きようと。
自分も、チャンピオンになったこのいい時期に、なんでなんだ?と
思いましたけどね、やっぱり。だから……」
言葉の端々から一生懸命な姿勢が見える。おごらず、偉ぶらない。
「自分だけじゃないんだよ、と。人間なんてみんな一緒、みんな弱いと思う。
でも、強くなろうとする気持ちがあれば、強くなっていく。
『上がって行こう、上がって行こう』と思えば、必ず上がって行ける。
プロレスが好きか嫌いかは別にして、がんになっても復帰したプロレスラーが
いるということを一人でも多くの人に知ってもらいたい。
病気とかいじめとかにあっている人に、負けないで自分自身を信じて
がんばって行けば道は開けていくんだと。それを伝えたいんですよね」
小橋さんの目は、どこまでも真っすぐだった。
==============
◇こばし・けんた
1967年、京都府福知山市生まれ。
福知山高校卒業後、京セラ勤務を経て、87年、全日本プロレス入門。
88年にデビュー。00年「プロレスリング・ノア」創設を機に、
「新しい自分を建てる」という意味を込めて本名の健太から改名。
186センチ、115キロ。
http://mainichi.jp/select/science/news/20080318dde012050013000c.html
2008年3月26日水曜日
ダウン症のリコーダー奏者:障害乗り越え、奏でる音色 家族4人でCD発表
(毎日 3月18日)
ダウン症のリコーダー奏者、荒川知子さん(24)=仙台市泉区=
一家4人が、ファミリーアンサンブルの初CD
「みんなしあわせ」を発表。
知子さんが、知的障害や四肢が短いハンディキャップを乗り越えて
奏でる音色に「真っすぐで純粋で、天から降ってくるよう」とファンも多い。
音楽一家に育った。
父健秀さんはフルートや作編曲の音楽講師、母幸子さんはピアノ教室主宰、
兄洋さんは新日本フィルハーモニー交響楽団のフルート奏者。
リコーダーが知子さんの宝物になったのは、小3の時。
養護学級の交流授業で、普通学級の児童に交じり縦笛を演奏。
演奏に雑談がやみ、終わった瞬間、拍手が起こった。
担任教諭から「涙が出ました。すごい拍手で知子ちゃんも泣いていました」。
以来、リコーダーを手放さなくなった。
演奏が注目されたのは、仙台で01年開かれた「とっておきの音楽祭」。
障害の有無を超えて、心のバリアフリーを目指す趣旨に賛同し、
家族で出演した。
知子さんの演奏に足を止める客で、
会場周辺の通路がふさがるほどの大盛況だった。
CDは、洋さんの作品など10曲を収録。
プロデュースしたシンガー・ソングライターのあんべ光俊さんは
「技巧に走らない純粋な音色」と絶賛。
知子さんは、「空に向かって広がるような、いい演奏をしたい」。
CDは2500円。29日から全国で発売。
問い合わせは、発売元のイーハトーブ・ウィンズ(電話022・265・7004)。
http://mainichi.jp/select/science/news/20080318dde041040063000c.html
ダウン症のリコーダー奏者、荒川知子さん(24)=仙台市泉区=
一家4人が、ファミリーアンサンブルの初CD
「みんなしあわせ」を発表。
知子さんが、知的障害や四肢が短いハンディキャップを乗り越えて
奏でる音色に「真っすぐで純粋で、天から降ってくるよう」とファンも多い。
音楽一家に育った。
父健秀さんはフルートや作編曲の音楽講師、母幸子さんはピアノ教室主宰、
兄洋さんは新日本フィルハーモニー交響楽団のフルート奏者。
リコーダーが知子さんの宝物になったのは、小3の時。
養護学級の交流授業で、普通学級の児童に交じり縦笛を演奏。
演奏に雑談がやみ、終わった瞬間、拍手が起こった。
担任教諭から「涙が出ました。すごい拍手で知子ちゃんも泣いていました」。
以来、リコーダーを手放さなくなった。
演奏が注目されたのは、仙台で01年開かれた「とっておきの音楽祭」。
障害の有無を超えて、心のバリアフリーを目指す趣旨に賛同し、
家族で出演した。
知子さんの演奏に足を止める客で、
会場周辺の通路がふさがるほどの大盛況だった。
CDは、洋さんの作品など10曲を収録。
プロデュースしたシンガー・ソングライターのあんべ光俊さんは
「技巧に走らない純粋な音色」と絶賛。
知子さんは、「空に向かって広がるような、いい演奏をしたい」。
CDは2500円。29日から全国で発売。
問い合わせは、発売元のイーハトーブ・ウィンズ(電話022・265・7004)。
http://mainichi.jp/select/science/news/20080318dde041040063000c.html
ナマコの皮膚からヒントを得た新素材
(Science 3月7日)
ナマコの皮膚とよく似た方法で、硬い柔らかいという状態を
変化させることができる新素材を開発。
このような素材は、生体用インプラントに使用されるようになる。
一例としては、脳に埋め込む微小電極の保護鞘。
この素材であれば、埋め込み時には硬いがその後柔らかくなり、
周辺組織への影響が軽くて済む
(パーキンソン病、脳卒中、脊髄の損傷の治療に使用されている微小電極は、
硬いインプラントの周辺に瘢痕組織が生じ、時間の経過に伴い効果が弱まる)。
Jeffrey Capadonaらは、弾性のある共重合体混合物に
セルロースナノ繊維、つまり「ウィスカー」を添加。
水素結合を引き起こす溶剤を加えると、溶剤により繊維間の結合が破壊され、
素材は柔らかくなる。
溶剤が蒸発すると、ウィスカーの網状構造が再形成され、素材は硬くなる。
被嚢動物として知られる固着性の海洋生物の外皮から採取した
セルロースウィスカーを使用、木材や綿といった再生可能な資源からも
同様のナノ繊維が採れるであろう。
"Stimuli-Responsive Polymer Nanocomposites Insipred by the Sea Cucumber Dermis,"
J.R. Capadona; K. Shanmuganathan; D.J. Tyler; S.J. Rowan; C. Weder at Case Western Reserve University in Cleveland, OH;
J.R. Capadona; D.J. Tyler; S.J. Rowan; C. Weder at Louis Stokes Cleveland DVA Medical Center in Cleveland, OH.
http://www.sciencemag.jp/highlights.cgi?_issue=98#415
ナマコの皮膚とよく似た方法で、硬い柔らかいという状態を
変化させることができる新素材を開発。
このような素材は、生体用インプラントに使用されるようになる。
一例としては、脳に埋め込む微小電極の保護鞘。
この素材であれば、埋め込み時には硬いがその後柔らかくなり、
周辺組織への影響が軽くて済む
(パーキンソン病、脳卒中、脊髄の損傷の治療に使用されている微小電極は、
硬いインプラントの周辺に瘢痕組織が生じ、時間の経過に伴い効果が弱まる)。
Jeffrey Capadonaらは、弾性のある共重合体混合物に
セルロースナノ繊維、つまり「ウィスカー」を添加。
水素結合を引き起こす溶剤を加えると、溶剤により繊維間の結合が破壊され、
素材は柔らかくなる。
溶剤が蒸発すると、ウィスカーの網状構造が再形成され、素材は硬くなる。
被嚢動物として知られる固着性の海洋生物の外皮から採取した
セルロースウィスカーを使用、木材や綿といった再生可能な資源からも
同様のナノ繊維が採れるであろう。
"Stimuli-Responsive Polymer Nanocomposites Insipred by the Sea Cucumber Dermis,"
J.R. Capadona; K. Shanmuganathan; D.J. Tyler; S.J. Rowan; C. Weder at Case Western Reserve University in Cleveland, OH;
J.R. Capadona; D.J. Tyler; S.J. Rowan; C. Weder at Louis Stokes Cleveland DVA Medical Center in Cleveland, OH.
http://www.sciencemag.jp/highlights.cgi?_issue=98#415
2008年3月25日火曜日
細胞内小器官の中心子がもつ「9」の謎を解く
(nature Pacific-Asia)
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 廣野雅文准教授
膜のカプセル内に「おりたたまれたさらなる膜構造」をもつミトコンドリア、
鏡餅のようなかたちのリボソーム……。
私たちの細胞内には、実に不思議なかたちをした小器官がいくつもある。
「中心子」とよばれる小器官もまた興味深い。
「微小管」という細い管が、決まって9本、美しい円筒状に配置した構造。
なぜ「決まって9本」なのか?どうやって「円筒」ができるのか?
中心子の形成メカニズムを探ることで、謎の解明への糸口。
中心子は、被子植物や菌類以外の多くの真核細胞にみられる構造で、
光学顕微鏡では小さな顆粒として観察。
顆粒は、9本の微小管が並んでできる円筒形の構造(9回対称性構造)。
機能は、細胞骨格の形成に働く「中心体」を形づくることと、
べん毛や繊毛の基底部となること。
中心体は、細胞分裂の間期に糸のような微小管を放射状に伸ばし、
分裂期になると2つに分かれて紡錘体を形成。
基底部の中心子は、9本の微小管をさらに伸長し、べん毛や繊毛を作り出す。
中心子は、「微小管構造を形成するための司令塔」としてはたらく。
「べん毛をもつクラミドモナスという単細胞緑藻を使って
中心子の研究ができないか考えていたが、1997年に環境が整った」。
中心子形成の研究には、突然変異体を使った遺伝学解析が欠かせないが、
クラミドモナスはべん毛を使って接合するので、
べん毛がなくなる中心子変異体は次世代を残せなくなってしまう。
ところが、アメリカのあるチームがべん毛をもたないクラミドモナスを
接合させることに成功し、廣野准教授もその技術を伝授。
解明すべき謎は2つ。
第1に、「あらゆる生物の中心子がなぜ9回対称形なのか」、
第2に、「どのようにして9回対称形がつくられるのか」。
「正常なクラミドモナスの中心子ができるようすを電子顕微鏡でみると、
カートホイール(車輪の意味)という傘の骨のような放射状構造が現れ、
その後に各骨の先端に微小管ができる。
9本の骨からなるカートホイールが足場とるために、
9回対称になるのではないかと思われるが、
一方で、カートホイールよりも微小管の方が先にできるという報告も」。
廣野准教授は、中心子が全くできなくなってしまう変異体を単離し
「bld10変異体(bldは毛をもたない:bald)」。
変異の原因を追求した結果、カートホイールに局在するあるタンパク質
(Bld10タンパク質)がなくなっているためであることを突き止めた。
遺伝子導入により、「末端を削ったさまざまな長さのBld10タンパク質」を
bld10変異体に発現、末端の一方(C末端)を35%ほど削った場合に、
中心子ができてべん毛を生やす細胞と、中心子ができずべん毛を
生やさない細胞が混在。
カートホイールの骨が短く、微小管8本からなる「8回対称形」を示す中心子
が多くみられた。
「カートホイールの直径と円周が短くなったために、
円周上に9本の微小管が並べなくなったからではないか」。
廣野准教授は、カートホイールがなくなり、中心子の微小管が7〜11本までの
いずれかの本数になる(9回対称性を失った)変異体を単離し、
「bld12変異体」と名付けた。
「bld12変異体の原因遺伝子は、線虫のSAS-6遺伝子と同じ。
SAS-6遺伝子は中心子形成に必須と考えられていたが、そうではなく、
カートホイールの9本の骨が放射状に配置されるのに必要」。
ただし、bld12変異体には9回対称性を維持しているものも多く、
9回対称性に関与する因子はカートホイールのほかにもある。
カートホイールが、中心子の微小管形成の足場となっていたことが明らか。
第二の謎は解明されつつある。
残されたのは「なぜ9回対称なのか」という問題だが、
「カートホイールの軸に、9の起源がある。
カートホイールがどのようにして9本の骨をもつようになるのかを探れば、
答えがみつかるかもしれない」。
原核細胞にはない中心子は、生物進化の重要な鍵を握っている。
中心子の数の異常が細胞のがん化につながり、医学的にも注目。
「複雑な構造がどのようにして組み上がるのか」。
廣野准教授の謎解きが続く。
http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=84
東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻 廣野雅文准教授
膜のカプセル内に「おりたたまれたさらなる膜構造」をもつミトコンドリア、
鏡餅のようなかたちのリボソーム……。
私たちの細胞内には、実に不思議なかたちをした小器官がいくつもある。
「中心子」とよばれる小器官もまた興味深い。
「微小管」という細い管が、決まって9本、美しい円筒状に配置した構造。
なぜ「決まって9本」なのか?どうやって「円筒」ができるのか?
中心子の形成メカニズムを探ることで、謎の解明への糸口。
中心子は、被子植物や菌類以外の多くの真核細胞にみられる構造で、
光学顕微鏡では小さな顆粒として観察。
顆粒は、9本の微小管が並んでできる円筒形の構造(9回対称性構造)。
機能は、細胞骨格の形成に働く「中心体」を形づくることと、
べん毛や繊毛の基底部となること。
中心体は、細胞分裂の間期に糸のような微小管を放射状に伸ばし、
分裂期になると2つに分かれて紡錘体を形成。
基底部の中心子は、9本の微小管をさらに伸長し、べん毛や繊毛を作り出す。
中心子は、「微小管構造を形成するための司令塔」としてはたらく。
「べん毛をもつクラミドモナスという単細胞緑藻を使って
中心子の研究ができないか考えていたが、1997年に環境が整った」。
中心子形成の研究には、突然変異体を使った遺伝学解析が欠かせないが、
クラミドモナスはべん毛を使って接合するので、
べん毛がなくなる中心子変異体は次世代を残せなくなってしまう。
ところが、アメリカのあるチームがべん毛をもたないクラミドモナスを
接合させることに成功し、廣野准教授もその技術を伝授。
解明すべき謎は2つ。
第1に、「あらゆる生物の中心子がなぜ9回対称形なのか」、
第2に、「どのようにして9回対称形がつくられるのか」。
「正常なクラミドモナスの中心子ができるようすを電子顕微鏡でみると、
カートホイール(車輪の意味)という傘の骨のような放射状構造が現れ、
その後に各骨の先端に微小管ができる。
9本の骨からなるカートホイールが足場とるために、
9回対称になるのではないかと思われるが、
一方で、カートホイールよりも微小管の方が先にできるという報告も」。
廣野准教授は、中心子が全くできなくなってしまう変異体を単離し
「bld10変異体(bldは毛をもたない:bald)」。
変異の原因を追求した結果、カートホイールに局在するあるタンパク質
(Bld10タンパク質)がなくなっているためであることを突き止めた。
遺伝子導入により、「末端を削ったさまざまな長さのBld10タンパク質」を
bld10変異体に発現、末端の一方(C末端)を35%ほど削った場合に、
中心子ができてべん毛を生やす細胞と、中心子ができずべん毛を
生やさない細胞が混在。
カートホイールの骨が短く、微小管8本からなる「8回対称形」を示す中心子
が多くみられた。
「カートホイールの直径と円周が短くなったために、
円周上に9本の微小管が並べなくなったからではないか」。
廣野准教授は、カートホイールがなくなり、中心子の微小管が7〜11本までの
いずれかの本数になる(9回対称性を失った)変異体を単離し、
「bld12変異体」と名付けた。
「bld12変異体の原因遺伝子は、線虫のSAS-6遺伝子と同じ。
SAS-6遺伝子は中心子形成に必須と考えられていたが、そうではなく、
カートホイールの9本の骨が放射状に配置されるのに必要」。
ただし、bld12変異体には9回対称性を維持しているものも多く、
9回対称性に関与する因子はカートホイールのほかにもある。
カートホイールが、中心子の微小管形成の足場となっていたことが明らか。
第二の謎は解明されつつある。
残されたのは「なぜ9回対称なのか」という問題だが、
「カートホイールの軸に、9の起源がある。
カートホイールがどのようにして9本の骨をもつようになるのかを探れば、
答えがみつかるかもしれない」。
原核細胞にはない中心子は、生物進化の重要な鍵を握っている。
中心子の数の異常が細胞のがん化につながり、医学的にも注目。
「複雑な構造がどのようにして組み上がるのか」。
廣野准教授の謎解きが続く。
http://www.natureasia.com/japan/tokushu/detail.php?id=84
2008年3月24日月曜日
ヒトES細胞研究の規制緩和求め学会声明
(サイエンスポータル 2008年3月19日)
ヒト胚性幹細胞(ES細胞)研究の規制緩和を求める声明を、
日本再生医療学会(理事長・中内啓光東京大学教授)が発表。
日本が、マウスやサルを使用したES細胞研究で世界をリードする
研究実績を誇るものの、
ヒトES細胞はつくりだしたヒトES細胞の株数、発表論文数において
欧米諸国、アジア・オセアニアと比べて大きく遅れている現状を明らかに。
原因の一つとして、「既に樹立されているES細胞の使用研究にも
ES細胞樹立の際と同様の厳しい二重審査を要求するという、
世界に類をみないES細胞研究指針」の存在。
幹細胞研究分野では、受精卵を使わない人工多能性幹細胞(iPS細胞)が、
山中伸弥・京都大学教授によって作り出され、
再生医療などへの応用を目指す研究の国際競争が一層激しい。
日本再生医療学会の声明は、「わが国発の画期的なiPS細胞の研究を
進めていく上でも、ヒトES細胞の研究利用は必須。
世界でも有数の高齢者社会を迎えつつあるわが国において、
幹細胞研究を迅速に進め、再生医療を実現することは
国民の福祉と健康の増進のみならず、医療関連産業や知財といった
経済的な側面からも極めて重要」として、
ヒトES細胞研究指針の規制緩和を強く求めている。
http://www.scienceportal.jp/news/daily/0803/0803191.html
ヒト胚性幹細胞(ES細胞)研究の規制緩和を求める声明を、
日本再生医療学会(理事長・中内啓光東京大学教授)が発表。
日本が、マウスやサルを使用したES細胞研究で世界をリードする
研究実績を誇るものの、
ヒトES細胞はつくりだしたヒトES細胞の株数、発表論文数において
欧米諸国、アジア・オセアニアと比べて大きく遅れている現状を明らかに。
原因の一つとして、「既に樹立されているES細胞の使用研究にも
ES細胞樹立の際と同様の厳しい二重審査を要求するという、
世界に類をみないES細胞研究指針」の存在。
幹細胞研究分野では、受精卵を使わない人工多能性幹細胞(iPS細胞)が、
山中伸弥・京都大学教授によって作り出され、
再生医療などへの応用を目指す研究の国際競争が一層激しい。
日本再生医療学会の声明は、「わが国発の画期的なiPS細胞の研究を
進めていく上でも、ヒトES細胞の研究利用は必須。
世界でも有数の高齢者社会を迎えつつあるわが国において、
幹細胞研究を迅速に進め、再生医療を実現することは
国民の福祉と健康の増進のみならず、医療関連産業や知財といった
経済的な側面からも極めて重要」として、
ヒトES細胞研究指針の規制緩和を強く求めている。
http://www.scienceportal.jp/news/daily/0803/0803191.html
バチカン、「麻薬」「公害」「遺伝子操作」を罪に
(CNN 2008.03.11)
バチカン・ローマ法王庁のジャンフランコ・ジロッティ師は、
新たに「麻薬」と「公害」、「遺伝子操作」を「罪深い行為」として扱う。
これらは世界的な規模で、社会的な影響を与えている。
ジロッティ師は、バチカン内赦院の内赦執行官を務めるローマ法王庁の高官。
この3つの行為について、「実験と遺伝子操作によって、
人間の基本的な権利が脅かされる」。
麻薬は、人々の知性を覆い隠して心を弱らせ、
公害は、富める者と貧しい者の格差を社会的にも経済的にも拡大、
「社会的な不公平を生み出す」と非難。
カトリックには、神からの離反と見なされる「大罪(mortal sin)」と、
神に背く行為の「小罪(venial sin)」がある。
「大罪」は、ダンテ「神曲」で知られる
「淫欲」、「どん欲」、「強欲」、「怠惰」、「ねたみ」、「高慢」。
大罪を犯した者は、神の前で告白し、悔い改めなければ
地獄で火あぶりになる。
しかし、全世界的な社会問題などを見て、
新たに「罪」も現代化させる必要があると判断したという。
イタリア人のカトリック教徒のうち、教会へ懺悔に行かない人々、
約60%に増加したことも、「罪」の内容を見直すきっかけに。
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200803110023.html
バチカン・ローマ法王庁のジャンフランコ・ジロッティ師は、
新たに「麻薬」と「公害」、「遺伝子操作」を「罪深い行為」として扱う。
これらは世界的な規模で、社会的な影響を与えている。
ジロッティ師は、バチカン内赦院の内赦執行官を務めるローマ法王庁の高官。
この3つの行為について、「実験と遺伝子操作によって、
人間の基本的な権利が脅かされる」。
麻薬は、人々の知性を覆い隠して心を弱らせ、
公害は、富める者と貧しい者の格差を社会的にも経済的にも拡大、
「社会的な不公平を生み出す」と非難。
カトリックには、神からの離反と見なされる「大罪(mortal sin)」と、
神に背く行為の「小罪(venial sin)」がある。
「大罪」は、ダンテ「神曲」で知られる
「淫欲」、「どん欲」、「強欲」、「怠惰」、「ねたみ」、「高慢」。
大罪を犯した者は、神の前で告白し、悔い改めなければ
地獄で火あぶりになる。
しかし、全世界的な社会問題などを見て、
新たに「罪」も現代化させる必要があると判断したという。
イタリア人のカトリック教徒のうち、教会へ懺悔に行かない人々、
約60%に増加したことも、「罪」の内容を見直すきっかけに。
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200803110023.html
2008年3月23日日曜日
北京五輪:「マラソンなど、大気汚染リスク」 IOC医事委員長、大会中監視へ
(毎日 3月18日)
国際オリンピック委員会(IOC)のアルネ・リュンクビスト医事委員長は、
大気汚染が懸念される北京五輪ではマラソンや自転車ロードレースなど
競技時間が1時間を超す耐久種目は多少のリスクが残るとして、
五輪中は大気の状態を監視し、場合によって
日程を変更できる態勢も必要だとの認識。
IOCは、中国当局から昨年8月の大気データを入手。
同委員長は、データを基に「理想的ではないが良好な条件で競技できる。
健康上の問題はほとんどないだろう」。
同五輪では、ぜんそくの持病を抱える男子マラソン世界記録保持者の
ハイレ・ゲブレシラシエ選手(エチオピア)が健康不安を理由に
マラソンを欠場する意向。
「食の安全」について、同委員長は「大会中は、
北京当局が非常に高度な管理システムを導入する」と懸念を否定。
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080318ddm035050026000c.html
国際オリンピック委員会(IOC)のアルネ・リュンクビスト医事委員長は、
大気汚染が懸念される北京五輪ではマラソンや自転車ロードレースなど
競技時間が1時間を超す耐久種目は多少のリスクが残るとして、
五輪中は大気の状態を監視し、場合によって
日程を変更できる態勢も必要だとの認識。
IOCは、中国当局から昨年8月の大気データを入手。
同委員長は、データを基に「理想的ではないが良好な条件で競技できる。
健康上の問題はほとんどないだろう」。
同五輪では、ぜんそくの持病を抱える男子マラソン世界記録保持者の
ハイレ・ゲブレシラシエ選手(エチオピア)が健康不安を理由に
マラソンを欠場する意向。
「食の安全」について、同委員長は「大会中は、
北京当局が非常に高度な管理システムを導入する」と懸念を否定。
http://mainichi.jp/life/ecology/news/20080318ddm035050026000c.html
ボストン、レストランなどでトランス脂肪酸を禁止
(CNN 2008.03.14)
ボストンの公衆衛生当局は、ボストン市内のレストランや飲食店に
おけるトランス脂肪酸が含まれた油の使用禁止を、満場一致で可決。
違反した場合、罰金1000ドル(約10万円)。
レストランや飲食店のほか、学校や病院、企業の食堂も対象。
ただし、すでに袋詰めにされたポテトチップスやクッキーなどは、対象外。
米国では、トランス脂肪酸が心疾患のリスクを高める恐れがあるとして、
使用を規制する動きが強まっている。
ニューヨークとフィラデルフィアで禁止、
ボストン市内でも多くのレストランが、使用を自粛。
http://www.cnn.co.jp/business/CNN200803140010.html
ボストンの公衆衛生当局は、ボストン市内のレストランや飲食店に
おけるトランス脂肪酸が含まれた油の使用禁止を、満場一致で可決。
違反した場合、罰金1000ドル(約10万円)。
レストランや飲食店のほか、学校や病院、企業の食堂も対象。
ただし、すでに袋詰めにされたポテトチップスやクッキーなどは、対象外。
米国では、トランス脂肪酸が心疾患のリスクを高める恐れがあるとして、
使用を規制する動きが強まっている。
ニューヨークとフィラデルフィアで禁止、
ボストン市内でも多くのレストランが、使用を自粛。
http://www.cnn.co.jp/business/CNN200803140010.html
2008年3月22日土曜日
アルツハイマー病:老人斑なくても発症 大阪市大発見、治療法開発も
(毎日 3月16日)
アルツハイマー病の確定診断の指標の一つで、
患者の脳に必ず見られる老人斑(アミロイド斑)がなくても、
発病する場合があることを大阪市立大などの研究チームが発見。
知られていなかった遺伝子の変異が見つかり、
発症メカニズム解明や治療法開発につながる可能性。
老人斑は、アミロイドβというたんぱく質が数珠状につながってできる。
脳に蓄積すると、神経細胞が死んでしまい、記憶障害など
アルツハイマー病の症状が出る。
富山貴美・大阪市立大准教授(脳神経科学)らが、
若年性アルツハイマー病患者の遺伝子を調べたところ、
アミロイドβを作る遺伝子の一部が欠損している例を発見。
患者の脳に老人斑は見つからず、
アミロイドβ分子が数個結合した重合体だけ。
研究チームの森啓・同大教授によると、
多くのアルツハイマー病患者の脳には、老人斑とともに
アミロイドβの重合体が見られる。
ラットを使った研究では、この重合体が神経細胞同士の情報伝達を阻害し、
認知症のような症状を起こす例が報告。
森教授は、「アルツハイマー病は、アミロイドβの重合体があるだけで
発症する可能性がある。老人斑にターゲットを絞った現在の診断や
治療法を見直す必要性があるかもしれない」
http://mainichi.jp/select/science/news/20080316ddm003040047000c.html
アルツハイマー病の確定診断の指標の一つで、
患者の脳に必ず見られる老人斑(アミロイド斑)がなくても、
発病する場合があることを大阪市立大などの研究チームが発見。
知られていなかった遺伝子の変異が見つかり、
発症メカニズム解明や治療法開発につながる可能性。
老人斑は、アミロイドβというたんぱく質が数珠状につながってできる。
脳に蓄積すると、神経細胞が死んでしまい、記憶障害など
アルツハイマー病の症状が出る。
富山貴美・大阪市立大准教授(脳神経科学)らが、
若年性アルツハイマー病患者の遺伝子を調べたところ、
アミロイドβを作る遺伝子の一部が欠損している例を発見。
患者の脳に老人斑は見つからず、
アミロイドβ分子が数個結合した重合体だけ。
研究チームの森啓・同大教授によると、
多くのアルツハイマー病患者の脳には、老人斑とともに
アミロイドβの重合体が見られる。
ラットを使った研究では、この重合体が神経細胞同士の情報伝達を阻害し、
認知症のような症状を起こす例が報告。
森教授は、「アルツハイマー病は、アミロイドβの重合体があるだけで
発症する可能性がある。老人斑にターゲットを絞った現在の診断や
治療法を見直す必要性があるかもしれない」
http://mainichi.jp/select/science/news/20080316ddm003040047000c.html
スポーツ21世紀:新しい波/263 陸上・実業団選手登録/7止
(毎日 3月14日)
選手を取り巻く環境の変化に応じて、登録の規則を見直した競技団体も。
卓球では原則として、高校生・大学生は学校の選手として登録。
日本卓球協会は、ナショナル(日本代表)チームとジュニアナショナルチームに
入った選手に限り、高・大生にも契約企業名での登録を認めた。
早大の福原愛は、スポンサーであるANAの所属として大会に出場。
木村興治専務理事は、「選手や卓球の発展を支えてくれる
企業の立場を認めるのは当然」。
世界レベルで戦う選手は多額の経費がかかり、
スポンサーが不可欠な現状を反映。
対象を代表レベルに限ることで、学校の立場も尊重。
全国高等学校体育連盟は、企業との契約などで金銭を得る
プロ的な高校生選手も、高体連の事前承認を条件に、
高校総体に出場できる規定を設けた。
サッカーやテニスなどプロ登録がある競技では、
プロ選手の高体連登録自体を認めていない。
しかし、卓球やスケートなどプロとアマの区別がない競技に関しては、
規則では競技により金品を得ることを禁じていたが、
厳格に適用するとトップ選手が出場できず、扱いが議論。
福原が青森山田高に在学中は総体出場を認めたが、特例扱い。
このケースが、今後は正式に受け入れられる。
梅村和伸専務理事は、「トップの子供たちにダメとは言えない。
各競技でプロの定義を明確にしてほしいが、それができない競技の選手に
不利益が生じないよう実態を考慮した」。
日本陸上競技連盟では、中高生について、
学校とクラブの両方で登録することを認めた。
学校での登録が原則だったが、指導教諭や陸上部そのものがなく、
地域のクラブチームで活動する選手が増えている実情に配慮。
環境の変化は、競技の底辺でも起きている。
選手登録の制度は、競技の根底を支えるもの。
見直すにしても、全体の秩序や将来の競技のあり方も見通し、
慎重になされる必要がある。
http://mainichi.jp/enta/sports/21century/
選手を取り巻く環境の変化に応じて、登録の規則を見直した競技団体も。
卓球では原則として、高校生・大学生は学校の選手として登録。
日本卓球協会は、ナショナル(日本代表)チームとジュニアナショナルチームに
入った選手に限り、高・大生にも契約企業名での登録を認めた。
早大の福原愛は、スポンサーであるANAの所属として大会に出場。
木村興治専務理事は、「選手や卓球の発展を支えてくれる
企業の立場を認めるのは当然」。
世界レベルで戦う選手は多額の経費がかかり、
スポンサーが不可欠な現状を反映。
対象を代表レベルに限ることで、学校の立場も尊重。
全国高等学校体育連盟は、企業との契約などで金銭を得る
プロ的な高校生選手も、高体連の事前承認を条件に、
高校総体に出場できる規定を設けた。
サッカーやテニスなどプロ登録がある競技では、
プロ選手の高体連登録自体を認めていない。
しかし、卓球やスケートなどプロとアマの区別がない競技に関しては、
規則では競技により金品を得ることを禁じていたが、
厳格に適用するとトップ選手が出場できず、扱いが議論。
福原が青森山田高に在学中は総体出場を認めたが、特例扱い。
このケースが、今後は正式に受け入れられる。
梅村和伸専務理事は、「トップの子供たちにダメとは言えない。
各競技でプロの定義を明確にしてほしいが、それができない競技の選手に
不利益が生じないよう実態を考慮した」。
日本陸上競技連盟では、中高生について、
学校とクラブの両方で登録することを認めた。
学校での登録が原則だったが、指導教諭や陸上部そのものがなく、
地域のクラブチームで活動する選手が増えている実情に配慮。
環境の変化は、競技の底辺でも起きている。
選手登録の制度は、競技の根底を支えるもの。
見直すにしても、全体の秩序や将来の競技のあり方も見通し、
慎重になされる必要がある。
http://mainichi.jp/enta/sports/21century/
2008年3月21日金曜日
理系白書2008:番外編 政治と科学、相互理解目指す--英国
(毎日 3月16日)
食の安全や地球温暖化、先端医療など、
科学技術が政策に影響する事例は増えている。
しかし、政治家と科学者の連携不足のため政策を誤ることも少なくない。
英国では、政治家と科学者がペアを組んで、
相互理解を深めていく取り組みが、学術団体主導で進められている。
◇王立協会が01年から
この取り組みは、「社会の中の科学」をスローガンの一つに掲げる
学術団体「英王立協会」が、科学者出身の国会議員の支援を受けた。
政府や同協会の研究費を支給されている若手科学者と、
彼らの地元選出の国会議員とを組み合わせる。
初年度は6組のペアで試行し、現在は25組。延べ約140組が参加。
科学者、政治家とも関心は高い。
科学者側は07年、25人の枠に100人が志願、
議員側のアンケートでは回答者の3割が「やってみたい」と答えた。
科学者が国会を訪ねる5日間の研修後、
議員が科学者の大学や研究機関を訪ねるという仕組みで、
相手の生活をかいま見、理解を深めることが目的。
◇議員のイメージ変わる
生物学者のジョナサン・ブラントさん(エクセター大学、38)は、
鳥類の繁殖行動を進化と栄養学の視点から研究。
組んだ相手は、コーンワル地方選出の国会議員、
ジュリア・ゴールドワージーさん(29)。
野党の自由民主党で、人口減少に悩む同地方の振興に取り組んでいる。
国会での研修。
ブラントさんは科学技術政策の立案過程に関するセミナーに参加、
議員に密着する「シャドーイング」を経験。
党の打ち合わせ、委員会、首相へのクエスチョンタイムなど
分刻みの予定に加えて、地元や秘書からひっきりなしに連絡が入る。
食事の時間も惜しんで、迷路のような国会内を小走りで移動する
ゴールドワージー議員を、ブラントさんが追いかける。
「僕たちも忙しいが、議員も忙しいですね」とブラントさん。
国会に対するイメージも変わった。
今回の研修で、議員同士が議論を重ね、合意点を探っている様子を
間近に見ることができた。
「これからは地球温暖化のように、政治家と科学者が連携して取り組む
問題が増える。政策立案の仕組みを知っていることはとても重要」
◇科学の手続き体験
ゴールドワージー議員がブラントさんの研究室を訪れた。
研究室では、議員に研究内容を説明、大学の裏手にある森へも案内。
鳥を観察するため、巣箱とエサ場の管理が不可欠。
こうした地道な作業が研究を支えていることも説明。
学長を交えてのティータイムでは、学長がキャンパス拡充の計画を説明。
「当初の資金計画がそのまま実現するかどうか不安」との学長に、
議員は「コーンワル地方の全党派議員の会合で問題提起します」と約束。
大学の発展は、地域経済の活性化ともかかわる。
議員は、「科学がどういう手続きを踏むのか体験でき、有益だった。
議員として協力できることも分かった。
私たちのペアだけで終わらせず、他の議員にも広げたい」。
この取り組みは、欧州議会にも広がっている。
王立協会会長のマーティン・リーズ博士は、
「科学者は、研究の外の世界から自分を閉ざしがち。
参加者の中から、政治家との連携や社会への働きかけに
積極的な次の世代の科学者が育つだろう」。
==============
◇日本も取り組みを
昨年のノーベル平和賞は、地球温暖化への取り組みを呼びかけた
政治家のアル・ゴア前米副大統領と、温暖化問題に取り組む
科学者組織「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が共同受賞。
科学と政治の連携が重要視される時代に。
政策研究大学院大学の角南篤准教授(科学技術政策)は、
「日本では、経済・科学技術イノベーション戦略から環境、薬害問題まで、
科学者の専門知識が政治に生かされているとは言えない。
結果として、行政への信頼が問われている。
英国の取り組みは、政治と科学をつなげる一歩として機能している。
日本でもこうした取り組みを検討してはどうか」。
http://mainichi.jp/select/science/news/20080316ddm016040129000c.html
食の安全や地球温暖化、先端医療など、
科学技術が政策に影響する事例は増えている。
しかし、政治家と科学者の連携不足のため政策を誤ることも少なくない。
英国では、政治家と科学者がペアを組んで、
相互理解を深めていく取り組みが、学術団体主導で進められている。
◇王立協会が01年から
この取り組みは、「社会の中の科学」をスローガンの一つに掲げる
学術団体「英王立協会」が、科学者出身の国会議員の支援を受けた。
政府や同協会の研究費を支給されている若手科学者と、
彼らの地元選出の国会議員とを組み合わせる。
初年度は6組のペアで試行し、現在は25組。延べ約140組が参加。
科学者、政治家とも関心は高い。
科学者側は07年、25人の枠に100人が志願、
議員側のアンケートでは回答者の3割が「やってみたい」と答えた。
科学者が国会を訪ねる5日間の研修後、
議員が科学者の大学や研究機関を訪ねるという仕組みで、
相手の生活をかいま見、理解を深めることが目的。
◇議員のイメージ変わる
生物学者のジョナサン・ブラントさん(エクセター大学、38)は、
鳥類の繁殖行動を進化と栄養学の視点から研究。
組んだ相手は、コーンワル地方選出の国会議員、
ジュリア・ゴールドワージーさん(29)。
野党の自由民主党で、人口減少に悩む同地方の振興に取り組んでいる。
国会での研修。
ブラントさんは科学技術政策の立案過程に関するセミナーに参加、
議員に密着する「シャドーイング」を経験。
党の打ち合わせ、委員会、首相へのクエスチョンタイムなど
分刻みの予定に加えて、地元や秘書からひっきりなしに連絡が入る。
食事の時間も惜しんで、迷路のような国会内を小走りで移動する
ゴールドワージー議員を、ブラントさんが追いかける。
「僕たちも忙しいが、議員も忙しいですね」とブラントさん。
国会に対するイメージも変わった。
今回の研修で、議員同士が議論を重ね、合意点を探っている様子を
間近に見ることができた。
「これからは地球温暖化のように、政治家と科学者が連携して取り組む
問題が増える。政策立案の仕組みを知っていることはとても重要」
◇科学の手続き体験
ゴールドワージー議員がブラントさんの研究室を訪れた。
研究室では、議員に研究内容を説明、大学の裏手にある森へも案内。
鳥を観察するため、巣箱とエサ場の管理が不可欠。
こうした地道な作業が研究を支えていることも説明。
学長を交えてのティータイムでは、学長がキャンパス拡充の計画を説明。
「当初の資金計画がそのまま実現するかどうか不安」との学長に、
議員は「コーンワル地方の全党派議員の会合で問題提起します」と約束。
大学の発展は、地域経済の活性化ともかかわる。
議員は、「科学がどういう手続きを踏むのか体験でき、有益だった。
議員として協力できることも分かった。
私たちのペアだけで終わらせず、他の議員にも広げたい」。
この取り組みは、欧州議会にも広がっている。
王立協会会長のマーティン・リーズ博士は、
「科学者は、研究の外の世界から自分を閉ざしがち。
参加者の中から、政治家との連携や社会への働きかけに
積極的な次の世代の科学者が育つだろう」。
==============
◇日本も取り組みを
昨年のノーベル平和賞は、地球温暖化への取り組みを呼びかけた
政治家のアル・ゴア前米副大統領と、温暖化問題に取り組む
科学者組織「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が共同受賞。
科学と政治の連携が重要視される時代に。
政策研究大学院大学の角南篤准教授(科学技術政策)は、
「日本では、経済・科学技術イノベーション戦略から環境、薬害問題まで、
科学者の専門知識が政治に生かされているとは言えない。
結果として、行政への信頼が問われている。
英国の取り組みは、政治と科学をつなげる一歩として機能している。
日本でもこうした取り組みを検討してはどうか」。
http://mainichi.jp/select/science/news/20080316ddm016040129000c.html
「影響力ある論文」阪大・審良教授が4年連続ベストテン
(朝日 2008年03月19日)
米学術情報サービス会社トムソンサイエンティフィックは、
引用回数が多く影響力があった科学論文ランキング(06~07年度)を発表。
大阪大の審良静男教授(免疫学)が、4年連続でベストテン入り。
05年11月からの2年間に出した論文が、07年9月からの2カ月で
他の論文に引用された回数を分野ごとに分析。
審良教授は上位0.1%に入った論文が11本。
1位は米、インド、オランダの高エネルギー物理学研究チームの3人で12本。
審良教授は自然免疫研究の第一人者で、昨年と一昨年は1位。
http://www.asahi.com/science/update/0319/TKY200803190184.html
米学術情報サービス会社トムソンサイエンティフィックは、
引用回数が多く影響力があった科学論文ランキング(06~07年度)を発表。
大阪大の審良静男教授(免疫学)が、4年連続でベストテン入り。
05年11月からの2年間に出した論文が、07年9月からの2カ月で
他の論文に引用された回数を分野ごとに分析。
審良教授は上位0.1%に入った論文が11本。
1位は米、インド、オランダの高エネルギー物理学研究チームの3人で12本。
審良教授は自然免疫研究の第一人者で、昨年と一昨年は1位。
http://www.asahi.com/science/update/0319/TKY200803190184.html
2008年3月20日木曜日
室伏広治:博士の学位記授与される「五輪に向けて頑張る」
(毎日 3月19日)
陸上男子ハンマー投げのアテネ五輪金メダリスト、
室伏広治(33)=ミズノ=が中京大の卒業式に出席し、
博士(体育学)の学位記を授与。
室伏は、中京大卒業後ミズノに入社し、
同社の国内留学制度で大学院に進学。
昨年9月、博士の学位を取得。
学位論文は「ハンマー頭部の加速についてのバイオメカニクス的考察」。
今後も研究生として大学に残り、将来は指導者を目指す。
会見した室伏は、「周りのサポートもあり、一生懸命やったことが実になった。
北京五輪に向けて一層頑張りたい」。
五輪代表に内定している室伏は4月に渡米して練習を続け、
5月の国際グランプリ大阪大会に出場する予定。
http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20080320k0000m050013000c.html
陸上男子ハンマー投げのアテネ五輪金メダリスト、
室伏広治(33)=ミズノ=が中京大の卒業式に出席し、
博士(体育学)の学位記を授与。
室伏は、中京大卒業後ミズノに入社し、
同社の国内留学制度で大学院に進学。
昨年9月、博士の学位を取得。
学位論文は「ハンマー頭部の加速についてのバイオメカニクス的考察」。
今後も研究生として大学に残り、将来は指導者を目指す。
会見した室伏は、「周りのサポートもあり、一生懸命やったことが実になった。
北京五輪に向けて一層頑張りたい」。
五輪代表に内定している室伏は4月に渡米して練習を続け、
5月の国際グランプリ大阪大会に出場する予定。
http://mainichi.jp/enta/sports/general/news/20080320k0000m050013000c.html
乳がん転移助長のたんぱく質特定 「悪玉ボス」の役割
(毎日新聞 2008年3月13日)
乳がん細胞の中で、がんの増殖転移能力を制御するたんぱく質を、
米カリフォルニア大の厚井重松輝美・
ローレンス・バークレー国立研究所研究部長らが突き止めた。
転移を助ける遺伝子群を活性化し、抑制する遺伝子群を抑えるといった、
がん増殖転移の「悪玉ボス」の役割。
がんは、隣接する細胞に侵入し正常な細胞を壊したり、
離れた細胞に浸出してがん細胞を増やし腫瘍を作るなど、
さまざまな過程を経て転移するが、がん細胞の転移能力を
制御する仕組みはほとんど分かっていなかった。
厚井重松部長らは、リンパ球の一種T細胞の分化や活性化に
不可欠なたんぱく質「SATB1」が、他にも多くの遺伝子の働きを
制御していることに着目。
1318人の乳がん細胞を調べ、SATB1発現が多い人ほど死亡率が高い。
悪性度の高いヒトの乳がん細胞をマウスの尾から血管内に移植すると、
9週間後に肺に転移し増殖。
しかし、遺伝子レベルでSATB1を発現しないようにすると、
増殖転移が抑えられた。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&articleId=69360
乳がん細胞の中で、がんの増殖転移能力を制御するたんぱく質を、
米カリフォルニア大の厚井重松輝美・
ローレンス・バークレー国立研究所研究部長らが突き止めた。
転移を助ける遺伝子群を活性化し、抑制する遺伝子群を抑えるといった、
がん増殖転移の「悪玉ボス」の役割。
がんは、隣接する細胞に侵入し正常な細胞を壊したり、
離れた細胞に浸出してがん細胞を増やし腫瘍を作るなど、
さまざまな過程を経て転移するが、がん細胞の転移能力を
制御する仕組みはほとんど分かっていなかった。
厚井重松部長らは、リンパ球の一種T細胞の分化や活性化に
不可欠なたんぱく質「SATB1」が、他にも多くの遺伝子の働きを
制御していることに着目。
1318人の乳がん細胞を調べ、SATB1発現が多い人ほど死亡率が高い。
悪性度の高いヒトの乳がん細胞をマウスの尾から血管内に移植すると、
9週間後に肺に転移し増殖。
しかし、遺伝子レベルでSATB1を発現しないようにすると、
増殖転移が抑えられた。
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&articleId=69360
2008年3月19日水曜日
超高齢社会を生きる/シリーズ4 後期高齢者医療
(毎日 3月16日)
老人がニコニコしている国が、きっと幸福な国。
若者も、将来への不安を抱くことなく、毎日の生活を送ることができる。
わが国は、平均寿命が長足の伸びを示し、超高齢社会を迎える。
老人は、本当に幸せそうな顔つきをしているのだろうか?
◇74歳までは元気を維持
日本人の平均寿命は、男性79・00歳、女性85・81歳(06年)。
65歳以上の高齢者の割合は、20・6%に達し、
2055年には40・5%を超えると予測。
高齢者は、74歳までが前期高齢者、75歳以上が後期高齢者。
近年の前期高齢者は、心身ともに若々しく壮年とさほど変わらない
元気さを維持している人が目立つ。
年齢別の日常生活活動度(ADL)では、この10年でADLは10年若返った。
京都大学の松林公蔵教授の研究によって、
00年に75歳以上のADLは、92年には65歳以上と同じ。
杏林大学医学部高齢医学教授の鳥羽研二さんは、
「平均寿命を超えた人を、高齢者と考えたらよい」と提案。
尿失禁、難聴、認知症など老年症候群を2、3持つと、
生活の依存度は3~6倍高くなる。
ADLが損なわれた状態こそが高齢者であり、平均寿命を超えたころが顕著。
65歳を過ぎると、脱水、骨関節変形、視力低下、発熱などがあらわれ、
80歳を超えるとADL低下、骨粗しょう症、嚥下困難などを訴える。
◇大きな病気、老化を促進
高齢者の健康度には個人差が大きく、
カレンダー年齢をもとにした対策だけでは限界。
老化は、大きな病気、緊急入院によって、一気に加速される。
2回目の入院をすると拍車がかかり、筋萎縮、関節拘縮、褥瘡(床ずれ)、
骨粗しょう症、便秘・尿失禁などの廃用症候群があらわれる人が多い。
「病気が生活レベルを低下させ、次の病気の火種となる悪循環に。
肺炎でも高熱が下がれば、起きて、体を動かすことが重要。
寝たきりが続くと、筋肉の萎縮が進行、退院後のADLは極端に悪い」。
健康力の高まりに合わせ、高齢の入院患者であっても、
元気に在宅復帰を目指す医療が行われる。
加齢とともに患う病気が多く、飲まなければならない薬も増えるが、
高齢者は、腎臓の機能も衰え、薬の排せつ力が落ち、
服薬数が増えれば増えるほど、副作用の発生頻度が高くなる。
漢方からのアプローチは、複数の症状からなるある状態に対して処方され、
薬が少なくてすむというメリット。
また認知症、徘徊、幻覚、睡眠障害などに抑肝散が有効。
抑肝散は、赤ちゃんの夜泣きの治療に用い、
幻覚や興奮を穏やかにする働きがあり、認知症治療に応用。
超高齢社会の医療のあり方が、治療の現場でも、模索。
◇死見据えた初の仕組み
後期高齢者医療制度がスタートし、医療は超高齢時代へと大きくシフト。
ホームケアクリニック川越院長の川越厚さんは、
死を見据えた初めての医療システムと高く評価。
「着陸態勢に入った高齢者の生活を理解、最良の医療を提供する時代」。
川越さんは、実地医家として在宅ホスピス活動を、
看護師、ボランティアの人たちとチームを組む。
病院で亡くなる人が80%超だが、在宅で終末期を送りたいという
患者・家族の願いには、十分に応えられるだけの態勢。
ヘルパーに支援を頼むことは、特別なことではない。
痛みを管理するためのモルヒネ、高カロリー輸液による栄養補給、
呼吸困難に対する在宅酸素療法の利用など、
家庭でも病院と同じ条件での医療提供が可能。
家族だけの力で患者をみていた時を100とすれば、
40~50の力を出せば、在宅での医療ができる。
介護のために仕事をやめてしまう人が多かったが、
ヘルパーを頼むことで仕事を続けることができる。
1人住まいの高齢者であっても、充実した在宅医療を受けることが可能。
終末期の在宅医療をスムーズに行うため、
医療者側と患者側が情報を正しく共有することが不可欠。
患者側が望んでいることを、わだかまりなく、はっきりと伝えること。
医療者側にまかせっきりで、トラブルに一方的に医療者側を非難するだけでは、
満足できる終末期医療を望むすべはない。
「どのような終末期を送りたいかを明確にし、方法を探り、
希望を医療者側に伝える。患者側も主体性を持つこと」。
将来自分が受ける医療に希望を伝える「事前指示書」の必要性があり、
自分自身の問題として、終末期医療のあり方を考えなければならない。
==============
◇「生涯現役」を超えて--東京大学教授(老年学)・秋山弘子さん
日本は人口の3分の1を高齢者が占める時代が、目前に。
80歳代後半から、90歳代、100歳代の超高齢者が急増。
生涯現役を目標とするsuccessful agingの考え方が広く受けいれられ、
高齢になっても、健康で自立し、生産活動に従事して、社会に貢献。
高齢者が、生き生きとして働ける社会こそが理想。
背景には、キリスト教プロテスタントの教理の影響。
個人差はあるが、75歳くらいまでは、
医学の進歩や食生活の改善などが、それを可能に。
超高齢期を迎えると、完全なる自立を維持することは難しく、
老いを受け入れなければならない。
successful agingにとって、自立し、生産的でないことは、落伍を意味。
自立がイデオロギー化してしまった欧米先進国では、
人に支援を頼む、依存をすることを避け、結果的に高齢者を孤立させる。
画一的なsuccessful agingの理念が、高齢者を不幸にしていると指摘。
現在、老いを自然の摂理とする仏教に代表される東洋の死生観や、
人とのつながりを重視する共同体の視点からとらえ直す動き。
超高齢者研究はスタートしたばかりだが、
超高齢社会に対応する社会システムを作るための学際的な研究が、
今、強く待ち望まれている。
長寿社会のトップを走る日本から、積極的に発言をしていく時代が来た。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/03/16/20080316ddm010100155000c.html
老人がニコニコしている国が、きっと幸福な国。
若者も、将来への不安を抱くことなく、毎日の生活を送ることができる。
わが国は、平均寿命が長足の伸びを示し、超高齢社会を迎える。
老人は、本当に幸せそうな顔つきをしているのだろうか?
◇74歳までは元気を維持
日本人の平均寿命は、男性79・00歳、女性85・81歳(06年)。
65歳以上の高齢者の割合は、20・6%に達し、
2055年には40・5%を超えると予測。
高齢者は、74歳までが前期高齢者、75歳以上が後期高齢者。
近年の前期高齢者は、心身ともに若々しく壮年とさほど変わらない
元気さを維持している人が目立つ。
年齢別の日常生活活動度(ADL)では、この10年でADLは10年若返った。
京都大学の松林公蔵教授の研究によって、
00年に75歳以上のADLは、92年には65歳以上と同じ。
杏林大学医学部高齢医学教授の鳥羽研二さんは、
「平均寿命を超えた人を、高齢者と考えたらよい」と提案。
尿失禁、難聴、認知症など老年症候群を2、3持つと、
生活の依存度は3~6倍高くなる。
ADLが損なわれた状態こそが高齢者であり、平均寿命を超えたころが顕著。
65歳を過ぎると、脱水、骨関節変形、視力低下、発熱などがあらわれ、
80歳を超えるとADL低下、骨粗しょう症、嚥下困難などを訴える。
◇大きな病気、老化を促進
高齢者の健康度には個人差が大きく、
カレンダー年齢をもとにした対策だけでは限界。
老化は、大きな病気、緊急入院によって、一気に加速される。
2回目の入院をすると拍車がかかり、筋萎縮、関節拘縮、褥瘡(床ずれ)、
骨粗しょう症、便秘・尿失禁などの廃用症候群があらわれる人が多い。
「病気が生活レベルを低下させ、次の病気の火種となる悪循環に。
肺炎でも高熱が下がれば、起きて、体を動かすことが重要。
寝たきりが続くと、筋肉の萎縮が進行、退院後のADLは極端に悪い」。
健康力の高まりに合わせ、高齢の入院患者であっても、
元気に在宅復帰を目指す医療が行われる。
加齢とともに患う病気が多く、飲まなければならない薬も増えるが、
高齢者は、腎臓の機能も衰え、薬の排せつ力が落ち、
服薬数が増えれば増えるほど、副作用の発生頻度が高くなる。
漢方からのアプローチは、複数の症状からなるある状態に対して処方され、
薬が少なくてすむというメリット。
また認知症、徘徊、幻覚、睡眠障害などに抑肝散が有効。
抑肝散は、赤ちゃんの夜泣きの治療に用い、
幻覚や興奮を穏やかにする働きがあり、認知症治療に応用。
超高齢社会の医療のあり方が、治療の現場でも、模索。
◇死見据えた初の仕組み
後期高齢者医療制度がスタートし、医療は超高齢時代へと大きくシフト。
ホームケアクリニック川越院長の川越厚さんは、
死を見据えた初めての医療システムと高く評価。
「着陸態勢に入った高齢者の生活を理解、最良の医療を提供する時代」。
川越さんは、実地医家として在宅ホスピス活動を、
看護師、ボランティアの人たちとチームを組む。
病院で亡くなる人が80%超だが、在宅で終末期を送りたいという
患者・家族の願いには、十分に応えられるだけの態勢。
ヘルパーに支援を頼むことは、特別なことではない。
痛みを管理するためのモルヒネ、高カロリー輸液による栄養補給、
呼吸困難に対する在宅酸素療法の利用など、
家庭でも病院と同じ条件での医療提供が可能。
家族だけの力で患者をみていた時を100とすれば、
40~50の力を出せば、在宅での医療ができる。
介護のために仕事をやめてしまう人が多かったが、
ヘルパーを頼むことで仕事を続けることができる。
1人住まいの高齢者であっても、充実した在宅医療を受けることが可能。
終末期の在宅医療をスムーズに行うため、
医療者側と患者側が情報を正しく共有することが不可欠。
患者側が望んでいることを、わだかまりなく、はっきりと伝えること。
医療者側にまかせっきりで、トラブルに一方的に医療者側を非難するだけでは、
満足できる終末期医療を望むすべはない。
「どのような終末期を送りたいかを明確にし、方法を探り、
希望を医療者側に伝える。患者側も主体性を持つこと」。
将来自分が受ける医療に希望を伝える「事前指示書」の必要性があり、
自分自身の問題として、終末期医療のあり方を考えなければならない。
==============
◇「生涯現役」を超えて--東京大学教授(老年学)・秋山弘子さん
日本は人口の3分の1を高齢者が占める時代が、目前に。
80歳代後半から、90歳代、100歳代の超高齢者が急増。
生涯現役を目標とするsuccessful agingの考え方が広く受けいれられ、
高齢になっても、健康で自立し、生産活動に従事して、社会に貢献。
高齢者が、生き生きとして働ける社会こそが理想。
背景には、キリスト教プロテスタントの教理の影響。
個人差はあるが、75歳くらいまでは、
医学の進歩や食生活の改善などが、それを可能に。
超高齢期を迎えると、完全なる自立を維持することは難しく、
老いを受け入れなければならない。
successful agingにとって、自立し、生産的でないことは、落伍を意味。
自立がイデオロギー化してしまった欧米先進国では、
人に支援を頼む、依存をすることを避け、結果的に高齢者を孤立させる。
画一的なsuccessful agingの理念が、高齢者を不幸にしていると指摘。
現在、老いを自然の摂理とする仏教に代表される東洋の死生観や、
人とのつながりを重視する共同体の視点からとらえ直す動き。
超高齢者研究はスタートしたばかりだが、
超高齢社会に対応する社会システムを作るための学際的な研究が、
今、強く待ち望まれている。
長寿社会のトップを走る日本から、積極的に発言をしていく時代が来た。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/03/16/20080316ddm010100155000c.html
2008年3月17日月曜日
シンガポールがニュージーランドと糖尿病・肥満研究で提携
(JSTデイリーウォッチャー 3月7日)
シンガポール臨床科学研究所
(Singapore Institute for Clinical Science; SICS)は、
ニュージーランドのオークランド大学との間で覚書を締結し、
同大学のリギンズ研究所(Liggins Institute)と糖尿病や肥満などの
代謝性疾患研究で提携。
リギンズ研究所は、この分野で世界的な研究機関であり、
特に代謝性疾患につながる後生的(エピジェネティック)要因及び
発育上の要因の役割について取り組んでいる。
リギンズ研究所との提携で、SICSはシンガポールで
「成長・発育・代謝(GDM)」研究プログラムを立ち上げる。
このプログラムでは、動物とヒトのモデルの両方を使って、
胎児や幼児の発育環境が青年・成人期の2型糖尿病や肥満の発症に
どのような影響を与えるか調べる。
シンガポールでは、糖尿病や肥満が人の健康に影響を与え、
医療費増加につながることが危惧。
研究は、主に白人系グループに対して行われているものの、
代謝性疾患の診断・予防・治療法が白人系とアジア系では異なり、
アジア内の様々な人種間でも異なることがわかってきている。
GDMプログラムのプログラム・ディレクターには、
リギンズ研究所所長でSICS非常勤研究員のグラックマン教授が任命。
http://crds.jst.go.jp/watcher/data/377-005.html
シンガポール臨床科学研究所
(Singapore Institute for Clinical Science; SICS)は、
ニュージーランドのオークランド大学との間で覚書を締結し、
同大学のリギンズ研究所(Liggins Institute)と糖尿病や肥満などの
代謝性疾患研究で提携。
リギンズ研究所は、この分野で世界的な研究機関であり、
特に代謝性疾患につながる後生的(エピジェネティック)要因及び
発育上の要因の役割について取り組んでいる。
リギンズ研究所との提携で、SICSはシンガポールで
「成長・発育・代謝(GDM)」研究プログラムを立ち上げる。
このプログラムでは、動物とヒトのモデルの両方を使って、
胎児や幼児の発育環境が青年・成人期の2型糖尿病や肥満の発症に
どのような影響を与えるか調べる。
シンガポールでは、糖尿病や肥満が人の健康に影響を与え、
医療費増加につながることが危惧。
研究は、主に白人系グループに対して行われているものの、
代謝性疾患の診断・予防・治療法が白人系とアジア系では異なり、
アジア内の様々な人種間でも異なることがわかってきている。
GDMプログラムのプログラム・ディレクターには、
リギンズ研究所所長でSICS非常勤研究員のグラックマン教授が任命。
http://crds.jst.go.jp/watcher/data/377-005.html
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