(読売 6月11日)
高校生に学会発表の機会を与え、学習意欲を引き出す。
地球惑星科学分野では、国内最大級の学術組織
「日本地球惑星科学連合」の年次大会が開かれた。
約4000人の研究者が集結した会場の一画に、
約160人の高校生が研究をまとめたポスターを張り出し、
訪れた研究者を相手に発表する特別会場があった。
発表者の一人、大阪教育大学付属高校天王寺校舎の2年生、
山下真弓さん(17)の周りにも、研究者の人だかり。
「航空機事故と月齢の関係」を検証した珍しい研究が、
研究者の目にとまったようだが、次々と鋭い質問が。
「着眼点は良いが、データの統計処理はもっと工夫が必要」、
「事故数のデータに根拠があるの?」
はきはき答える山下さんだが、途中言葉に詰まる場面も。
それでも「研究者の方々が甘い部分を指摘してくれて、
ドキドキしたけどとてもためになった」と満足そうな表情。
同連合が、「高校生のポスター発表」を開催したのは
4年前の年次大会から。
同連合の担当者によると、レベルの高い専門学会で発表の場を提供し、
学習の強い動機付けにしてもらうのが狙い。
初回は22件の参加だったが年々応募が増え、
今回は48件とほぼ倍増。
研究のテーマも、太陽や流星、オーロラなどの天体観測から、
気象現象の観測、鉱物分析など多岐にわたる。
個人の研究から、大学や研究機関と共同で長期にわたって行った
「超高校級」の研究まで。
レベルの高さや幅の広さもさることながら、
山下さんを指導する岡本義雄・地学教諭(57)は、
「プロの研究者から生で意見を聞くことは、高校生の意欲を
さらに高める貴重な経験になる」と、高校側も高く評価。
日本天文学会も、2000年の大会から、
高校生のほか中学生も対象とする「ジュニアセッション」を催している。
「天体観測は、中高校生でも望遠鏡さえあればできるので、
参加しやすいという特徴。
他の科学分野の学会には、なかなかできない取り組み」、
ジュニアセッション実行委員長の
吉田真・宇宙航空研究開発機構准教授(47)。
背後には、宇宙天文を「入り口」にすれば、
中高生に科学の面白さを感じてもらえるとの考え。
思惑通り、ジュニアセッションには毎回約300人もの生徒が参加、
大会でも最も大きい会場を用意。
生徒たちの自由な発想と、「楽しさ」を重視し、
発表内容の事前審査はしないことも、参加者が増える背景。
ただ、学会の本来の目的は、研究者に発表の場を提供すること。
日程を決める際、中高校生に十分に配慮できず、
試験や運動会が多い季節に開催されることも少なくない。
旅費も生徒持ちのことが多い。
関係者が調整して、研究者の卵たちを上手に育てたい。
◆日本地球惑星科学連合
太陽系や太陽系外の天体から、地球の大気・海洋・環境を研究する
国内35の関連学会が加盟。
2005年、各学会による任意団体として発足、
昨年12月に一般社団法人に衣替え。
研究者同士の研究交流の場としてだけでなく、
文部科学省の新学習指導要領や小中高の地学教育の在り方に対する
提言も積極的に行っている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090611-OYT8T00214.htm
0 件のコメント:
コメントを投稿