2009年6月28日日曜日

小学館ネット・メディア・センターの小室GM「スマートフォン向けに注力」

(日経 6月16日)

若者の活字離れやインターネットの普及で、
出版の落ち込みに歯止めがかからない。
雑誌や書籍の販売収入や広告収入が減る中、
各社はデジタル事業に活路を探る。
小学館が、電子雑誌などの実験場とする「ネット・メディア・センター」
トップを務める小室登志和ゼネラルマネジャーに今後の戦略を聞いた。

——電子雑誌「SooK」などを試みてきた。現在の方向性は?

「2008年7月に就任し、小学館のコンテンツをどう生かすかという
試みを進めている。
一歩先行しているのは、携帯電話向けの電子コミック。
デジタルコンテンツで売り上げが好調なのは、
辞書などのレファレンス系。
朝日新聞社やECナビなどのネット百科事典『kotobank』にも、
コンテンツを提供」

「カシオなど電子辞書や携帯電話、iPhoneなど、
色々な端末で国語辞典や英和、和英の辞書を活用。
それらに次いで、実用系雑誌のコンテンツを活用したい。
週刊誌は、1週間で世の中から消えていってしまい、
ムックや単行本にまとめない限り、2度と手に入らない。
紙で再活用する以外に、デジタルで活用できないかと考えている」

——デジタル雑誌の収益モデルの現状は?

「まだ小学館はやっていないが、講談社は雑誌『クーリエ・ジャポン』を
iPhoneで展開し、主婦の友社や、マガジンハウスも販促に利用。
紙の雑誌をどう売るかという販促と、デジタルコンテンツとして
どうマルチユースできるか、を模索しているところ」

「メディアの特性として、パソコン上だとユーザーはお金を払ってくれない。
やはり携帯電話だろう。
これからスマートフォンが増えてくる。
携帯電話や、携帯型ゲーム機など向けに、どうコンテンツを
利用できるかに力点を置いて戦略を立てている」

——iPhone向けソフト販売の動向は?

「大辞泉を08年11月に発売し、今年4月にバージョン2に更新。
すしネタ図鑑や、キノコ図鑑もアップ。
英語トレーニングのソフトが、教育ジャンルで売り上げ2位になるなど好調。
アップルストアなら、流通コストもかからない。
ロングテールで、減っていくとはいえ1日十数本と売れ続ける。
これからアプリのリリースが増えていけば、『チリも積もれば……』で、
置いておくだけで売り上げが立つ」

「出版社の強みは、iPhoneでこんなアプリあったらいいな、と
小学館の出版目録を見ると、大抵あること。
80数年の歴史の中で、ネタ本としての出版物はある。
そのままアプリにはできない。
例えば、すしネタ図鑑で分かったのだが、書籍をそのままアプリにしても
ユーザーは満足してくれない。
iPhoneなりのデジタルの面白さがないとダメ」

——具体的にどう進化させるのか?

「四季のガイドブックなら、紙の書籍ならめくるだけだが、
デジタル機器なら、今いる場所から近くの店を探したり、
ガイド機能を付けたりしないと用を足さない。
ここ数年、紙の出版物の制作がデジタル化。
デジタルデータがあるため、転用が容易に」

ネット・メディア・センターは、出版局や編集局と一緒に
デジタルコンテンツを制作。
窓口であり、サポート役。
部員数は12人だが、業務が増えており、増員したい。
外部とコラボしないと、小学館だけでデジタル化をすべてやるのは難しい。
協業相手を探したり、契約を含めた営業をするスタッフも必要だし、
コンテンツが増えれば開発要員も必要。
携帯サイト運営会社と組むなど、我々にないものを持っているところと
協業していきたい」

——紙の書籍の販売不振に、デジタル書籍はどう影響を及ぼすか?

紙かデジタルか、という時代ではない。
今後は同時発売や、電子コミックのように、
紙にフィードバックする例が増えてくる。
雑誌コンテンツをどう生かすかは、どの出版社にとっても緊急の課題。
機器の特性をいかした電子雑誌の形を模索」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090615.html

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