2009年7月2日木曜日

東芝メディカルシステムズの小松社長「新興国の市場開拓に注力」

(日経 6月19日)

体内の様子を撮影し、病気を発見・診断する画像診断装置。
ITの発展で撮れる画像が高度化し、
先進国をはじめ世界各地で導入が進んでいる。
国内最大手、東芝メディカルシステムズは、
コンピューター断層撮影装置(CT)を軸に、海外市場の強化を進める。
小松研一社長に、今後の見通しと戦略を聞いた。

——世界的不況は、医療機器業界にどのような影響を及ぼしているか?

「これまで、医療分野は景気の波とは関係ないとされ、
売り上げが影響を被ることはほとんどなかった。
金融危機は、医療業界にも大きな影。
最大市場の米国では、金融機関が病院への融資を引き締め、
病院が新規の設備投資を控え始めている。
資金繰りに行き詰まる病院もある」

「当社の主力製品であるCTも、この影響を受ける。
1台数千万~数億円する装置のため、契約交渉が長引いたり、
納入時期が延期になったりするなど、影響が出始めている。
米国市場の2009年1~3月の出荷額は、前年比3割減。
欧州市場も2割減」

「当社は健闘した。
08年度の売上高は米国、欧州ともに対前年プラス。
最上位機種で、撮影機構が1回転する間に320枚の断層画像を撮れる
CT『アクイリオン・ワン』、造影剤なしで脳内を撮影できる
磁気共鳴画像装置(MRI)や画質を高めたエックス線画像装置など、
07年以降発売した新製品が好調」

価格引き下げ圧力は高まっている。
利益率は悪化し、今後は原価低減や販売効率の改善などで
収益確保策を講じる必要。
海外売上高が全社の3分の2を占め、利益率の改善は重要な課題」

——不況は新興国にも及んでいる。

「ロシアは、影響が大きい。
原油などエネルギー価格の下落などで、医療向け投資が停滞。
医療は、どの国家にとっても必要不可欠なインフラ。
中国は、景気対策の1つとして、地方に医療体制整備用の予算。
他の新興国でも、医療インフラ整備の手を緩めようとはしていない」

「ブラジルで開催された放射線医学会の付設展示会。
現地では、医療機器の需要が旺盛で、CTや超音波診断装置の
引き合いが非常に強く、前年の展示会に比べ1割程度受注額が伸びた」

新興国で、先進の医療機器を使った診断ができる医師は限られている。
今後、先進国で先端医療を手掛ける医師が、
新興国の医師に技術を伝授する人的ネットワークを、
メーカーとして支えることも必要。
現地の販売代理店にも、適切な保守サービスを提供し、
医師の多様な要望に応えられる技術者を育成する必要」

「今年3月、全世界の技術者を育成する拠点を、
栃木県大田原市の本社工場に新設。
CTやMRIの実機を使い、取り付け作業や保守管理の手法、
ソフトウエアの内容を教える。
本社から情報をきめ細かく伝え、営業の質を高めたい」

——世界市場では、米GEなど欧米大手が強い。

米GEや独シーメンス、オランダのフィリップスといった欧米3強は、
医療事業売上高が1兆円規模、当社の3600億円規模をしのぐ。
今後、装置そのものだけではなく、装置に搭載する
画像ソフトウエアやサービスなど、新しい領域で技術を磨き、
他社よりも事業効率を高めて対抗していく必要。
昨年秋、ベルギーのバルコの画像処理システム事業を買収。
こうした投資の効果を出していきたい」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090618.html

0 件のコメント: