(日経 2009-06-15)
家庭で利用できる再生可能エネルギーの最も身近なものは、
やはり太陽のエネルギーだろう。
家庭でガスや灯油が使われていなかった時代には、
厨房の煮炊きには薪や炭が使われ、お風呂を沸かす
(この言葉も現代では死語になったようだ、「お湯を張る」と
いった方が一般的)のも、芝や薪が使われていた。
この時代は、バイオマスという名の再生可能エネルギーが
家庭の主役だった。
毎秒、地球に降り注ぐ太陽エネルギーの総量は、
われわれが地球全体で消費する全エネルギーの18000倍と推計。
見方を変えると、われわれが1年かけて地球上で消費する
全エネルギー量を、わずか30分間で供給できる計算。
地球のすべての生命の源は、すべてこの太陽に依存している。
水力や風力も、太陽による水循環・風循環の結果だし、
石油や石炭といった化石燃料も、元をたどれば
太陽エネルギーが作り出したもの。
太陽エネルギーの利用の基本は、熱と光を利用すること。
光としての利用は、日中の明るさが第一だが、
近年、この光エネルギーを電気として取り出す太陽光発電システムが
世界中で爆発的な普及段階を迎えている。
一方、熱としての利用例は発電よりはるかに歴史が古く、
農業用水をあらかじめため池にためておき、
水温が太陽によって温められてから田畑に供給する例や、
温室としての利用などがある。
何より温水器としての利用は、住宅でも早くから普及していた技術。
太陽熱温水器は最もポピュラーな設備で、
古くから使われてきたものに、「くみ置き式」と呼ばれるもの。
1950年頃、すでに実用化され、農村部での普及は高かった。
汲み置き式は、保温性が良くなかったため、さめやすいという欠点。
「自然循環式」と呼ばれ、集熱部と貯湯部に分かれ、
温められたお湯が貯湯タンクに貯められる方式が登場。
温水温度は、夏ではセ氏60~65度、冬でも同30~35度。
1980年頃、この方式が主流となり現在に至っている。
太陽エネルギーの有効活用という点から考え、
太陽光発電の転換効率に比べて、
太陽熱利用の熱利用効率の方が、実は数倍も大きい。
太陽のエネルギーの大きさは、条件の良いところでは、
1平方メートルあたり1キロワット。
年間の日照時間が約2000時間の東京では、
1平方メートルあたり年間2000キロワット。
これを太陽光発電に利用すると、発電効率は15~20%だが、
太陽熱として利用すると30~70%の効率で利用可能。
家庭での暖房・給湯用の熱利用量は、
石油換算で1世帯あたり年間740リットル、
太陽熱利用効率を50%とすると、面積8平方メートル程度の
太陽熱温水器を屋根に載せれば、太陽熱ですべてをまかなえる。
太陽エネルギーの熱利用が、もっともっと注目されても良いのでは。
◆なかがみ・ひでとし
1973年(昭48年)東大大学院工学系研究科修了、
住環境計画研究所を創設し所長。
慶大システムデザイン・マネジメント研究科教授のほか、
経済産業省の総合資源エネルギー調査会委員なども務める。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090611.html
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