2009年7月1日水曜日

安値案件にひた走る人材派遣の事情

(日経 2009-06-10)

4月の有効求人倍率(季節調整値)0.46倍。
求職者2人につき、仕事が1つしかない雇用環境のもと、
人材派遣市場も需要が急減。
派遣先企業から受け取る料金と派遣スタッフに支払う時給との差額、
「粗利」の拡大を追求するだけでは、事態打開は望めない。

派遣各社は、低料金の新規案件の獲得と、有力な派遣先からの
受注件数拡大に向けて動きを加速。

今年3月末、派遣契約の終了が相次いだ。
新年度スタートの需要がなく、仕事に就けない派遣スタッフが多数発生。
5月の大型連休明けの需要復活に期待したが、市場は凍り付いたまま。
パソナ、テンプスタッフ、リクルートスタッフィングなど、
大手派遣会社の受注は前年同期の5~6割減。

大手派遣会社が、事態打開のために乗り出したのが、
「従来は手を出さなかった安い仕事でもとる」営業。
派遣案件数の確保を優先する必要がある、との判断。

人材派遣の募集時時給は昨秋以降、急落。
3大都市圏の4月の平均時給は、前年同月比4.7%安の1459円。
10カ月連続で、前年同月を下回る。
事務系派遣は値下がりが目立ち、1412円と同5.8%下がった。

派遣会社は、安い時給の仕事を受注し、求人情報サイトに掲載。
好条件の仕事は掲載しなくても埋まるため、
募集時時給の下落に拍車をかける構図。

3月末でも契約が終了せず、更改された案件は、
「ほぼ横ばいを維持」(スタッフサービス)。
派遣先企業からも、経費削減を振りかざした
「強い値下げ要請は出なかった」(パソナ)。

その代わり、顧客企業による取引先派遣会社の集約。
これまでも顧客が派遣の発注窓口を、現場から購買担当に一本化、
変更した際、コスト削減に派遣会社数を減らす動きはあった。
今回、大手派遣会社が総合力を生かし、適正な人員配置なども含め
提案するなど、積極的に動いている点が異なる。

全国展開する企業が取引する派遣会社は、50~100社。
3社程度に絞り込むことが多く、
「2%程度のボリュームディスカウントが効く」(大手派遣会社)。

派遣市場では、新規受注の減少にブレーキがかかったが、
派遣の需要が反発するにはまだ時間がかかりそう。
華やかな宣伝広告で注目を集めた派遣業界に、
再び追い風が吹く日までは地歩固めの日々となりそう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/shikyou/shi090608.html

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