2009年6月30日火曜日

クリニクラウン 活動広げる「病院の道化師」。子どもたちに

(2009年6月16日 毎日新聞社)

赤い鼻を付けた医師が小児病棟に入り、
笑いを振りまいて子どもたちを元気にする--。
米映画「パッチ・アダムス」(98年制作)に登場した
「病院の道化師」が日本でも活躍。

5年目を迎える日本クリニクラウン協会(本部・大阪市)の活動は、
国内14病院(08年度)に広がっている。

クリニクラウンは、病院を意味する「クリニック」と道化師を指す
「クラウン」を合わせた英語の造語。
優れた演じ手であると同時に、子どもとの接し方や児童心理、
保健衛生や病院の規則にも詳しいスペシャリスト。
日本語では「臨床道化師」と訳され、同協会は13人を認定。

闘病生活が長くなると、病室を訪れるのは白衣の医師や看護師、
親など大人ばかりで、子どもは自然に、
治療を受ける受け身の姿勢になりやすい。

クリニクラウンは、病室を定期的に訪問し、遊びなどを通して
子どもたちの成長を支えている。

同協会の塚原成幸事務局長は、「入院中、治療のための
さまざまな制限を受けている子どもたちが思い切り笑い、
主体的に遊ぶことができる環境作りが大切な役割」

大ちゃんとTOMO(トモ)さんの男女1組のクリニクラウンが、
水戸市の茨城県立こども病院を訪れた。
同協会は、2年前から月1回定期的に派遣。

病院スタッフと一人一人の病状や付き添いの親の状況などを
打ち合わせた後、長期入院している子どもたちの病棟に入った。
突然、近くの部屋の扉が開いて、「ピエロが来たー」という歓声が。
クリニクラウンは、4-5人の幼児からお尻にパンチを浴び、逃げ惑った。

病室から男の子が、窓ガラス越しにその様子を見つめていた。
恥ずかしがりやで病室から出たがらない子。
トモさんが注意深く病室に入ると、男の子は大喜び。
「外に出る」と言って病室を出ると、大ちゃんや他の子どもたちと
廊下でパレードを始めた。
祖母が、「さっきまで暗い顔をしていたのに、すごいですね」と感激。

病棟訪問後、クリニクラウンから一人一人の子どもの様子などが
病院側に報告。

病院スタッフで子どもたちの精神的負担を軽減し、発育を手助けする
専門職、チャイルド・ライフ・スペシャリストの松井基子さんは、
「お姉さんらしく振る舞っている子が、普段とは違う子どもらしい表情を
見せたり、日ごろはおとなしい子どもが自分から積極的に
行動を起こすこともある」とその効果に期待。

クリニクラウンの先進地オランダでは、国民的な理解が深い。
同国のクリニクラウン財団は、年間の寄付だけで10億円以上の予算、
約9割の小児医療施設を訪れている。

日本でも、クリニクラウンへの期待は広がっているが、
個人的寄付が集まりにくい。
自分の仕事を持ちながら活動をしているのが実態で、
継続して活動できる方法を模索している。

◇1年かけ養成、試験経て認定

クリニクラウンになるには、募集から認定まで約1年の養成期間が必要。
養成トレーニングでは、相手に恐怖感を与えないコミュニケーションや
適切な距離の取り方、即興的な動きなど病室での身体表現方法を学ぶ。

0-18歳と、幅広い年齢に即した子どもたちとのかかわり方や
子どもを取り巻く環境、保健衛生の基礎知識、残された家族のケアなど、
臨床現場に入るための講義を受ける。
病院での臨床研修を受けて経験を積み、最後に認定試験を受ける。

現在認定されている13人は、演劇やダンスなどの経験者や
医療・福祉関係者など。
問い合わせは、日本クリニクラウン協会(06・6575・5592)。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/6/16/102108/

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