(読売 6月13日)
宇宙で生活する宇宙飛行士と交信する試みが、
子どもたちの好奇心に火をつける。
「皆さん、こんにちはー」。
沖縄県うるま市の石川会館ホールに、国際宇宙ステーションで
生活する宇宙飛行士の若田光一さん(45)の声が響いた。
前方スクリーンには、ふわりと浮く若田さんの姿。
無重力の宇宙を目の当たりにした800人の親子連れから、
一斉に歓声がわいた。
待ちに待った若田さんとの交信イベント。
数百人の希望者から、「直接交信の切符」を手にした
5人の小中学生が登壇。
衛星通信でステーションにつながったマイクを通じて、
若田さんに話しかけた。
「宇宙に行って、これまでの考え方が変わりましたか」
――美しい地球を守ろうとの思いを新たにしました。
「宇宙飛行士になるには、勉強した方が良いですか」
――一生懸命勉強して一生懸命遊ぶことが大切だよ。
丁寧に答える若田さんは、ステーションから家族に電話ができること、
シャワーや風呂はないことなどを紹介。
そのたび、子どもたちから驚きの声が漏れた。
「たのしい宇宙授業」と題して、交信イベントを企画、
実施したのは県内15人の小中学校教師たちで作る有志組織
「沖縄宇宙プロジェクト(WAO)」。
日本の宇宙機関である宇宙航空研究開発機構が、
教育目的でステーションとの交信機会を提供。
WAOは、4年前の発足時からいち早く応募。
交信はわずか15分間だが、子どもたちは強い刺激を受けた。
舞台で質問をした読谷村の小学5年、下里楓さん(10)は、
「たくさん聞きたいことがあったけど…もっと宇宙のことを知りたい」
と興奮冷めやらない様子。
母親の直美さん(40)は、「これをきっかけに、
もっと頑張って勉強してくれれば」と期待。
WAO代表のうるま市立伊波小理科教諭の喜友名一さん(48)は、
「宇宙の楽しさだけでなく、科学そのものを好きになってくれたと思う」
「たのしい宇宙授業」は10回目。
県内各地で、趣向を凝らした授業を開いてきた。
サッカーボールやピンポン球を太陽や地球、月にたとえて、
天体の大きさや天体間の距離感を実感してもらう授業。
ロケットが飛ぶ仕組みを、ストローを使った吹き矢実験で解説する授業。
ほかにも多彩なプログラムを実践。
WAOのメンバーの那覇市立泊小理科教諭、槙田正法さん(48)は、
「謎に包まれた宇宙や天文は、好奇心を刺激し、
もっと知りたいと思わせる最適の手段であることがわかった」
忙しい教師たちが、勤務時間後の夜や休日に、企画の準備に取り組む。
「宇宙が好きだし、教師同士の出会いもあるから」と口をそろえる。
子どもたちがさらに元気に賢くなってほしいという願いを込めた活動は、
大人たちも元気にしている。
◆国際宇宙ステーション
地上400キロ・メートルの宇宙空間で、日米露など15か国で
建設が進められている有人施設。2010年に完成予定。
完成すると、縦72メートル、横108メートルのサッカー場ほどの広さ。
現在、若田光一さんら日米露など6人の飛行士が滞在、
無重力を利用した生物実験や材料開発を進めている。
若田さんは6月中に、約3か月間の滞在を終えて地球に帰る予定。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090613-OYT8T00271.htm
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