2009年2月3日火曜日

ピロリ菌の新たな胃がん発症メカニズム解明

(サイエンスポータル 2009年1月22日)

慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍や胃がんの原因と考えられているピロリ菌が、
がんを引き起こす新たなメカニズムを、東京大学医科学研究所の
研究者たちが見つけた。

胃粘膜に感染することで、病気の原因となるピロリ菌の危険因子としては、
CagAタンパクが知られている。
このタンパクが、胃上皮細胞内でリン酸化される結果、
細胞増殖にかかわる活性化補助因子であるβ-カテニンが
発がん関連遺伝子の転写を促進することは、これまでも分かっていた。

東京大学医科学研究所の笹川千尋・教授と鈴木仁・助教らは、
CagAタンパクがリン酸化されなくても、β-カテニンを活性化する
新たな発症メカニズムがあることを突き止め、
この新たな経路にかかわるCagAタンパクの部位を特定することに成功。

リン酸化されないCagAタンパクの感染役割が分かったことで、
日本人の胃がん原因の大半を占める慢性胃炎や胃潰瘍といった
ピロリ菌感染症に対する新たな治療薬やワクチン開発につなげることが期待。

科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)
研究領域「免疫難病・感染症等の先進医療技術」の一環。

ピロリ菌を発見し、胃炎や十二指腸潰瘍との関連を明らかにした
オーストラリアのロビン・ウォレン、バリー・マーシャル両博士は、
2005年のノーベル医学生理学賞を授賞。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0901/0901221.html

2009年2月2日月曜日

百度の失策、グーグルに好機到来?

(日経 2009-01-22)

中国ネット検索市場で、圧倒的首位を長らく維持してきた
百度(バイドゥー)の足元が揺らいでいる。
2008年11月、国営の中国中央テレビ(CCTV)が、百度の検索結果リストに
表示されるサイトには、無免許の医薬品販売業者が多く含まれ、
免許を持っているかのように偽っている業者もあると報道。
それをきっかけに、ネット利用者の反発を買っている。

米ナスダック市場で、同社の株価は報道前の180-230ドルから
報道後は110-140ドルに落ち込み、今も同水準で低迷。
百度は、不適切と思われるサイトを検索対象から除外したと発表、
信頼回復を目指した。

ところが、除外したサイトからの広告料収入が百度の売上高全体の
10-15%を占めていたと公表、同社に対する不信感がかえって強まった。
キーワードを買っている広告主のリンクほど、検索結果の上位に
表示されるように検索エンジンを調整し、利用者がクリックする確率を
上げることで、広告料収入を最大化。
百度は、検索で広告主と一般サイトを差別していないと否定するが、
なかなか批判が収まらない。

こんな疑念が生まれる素地は、広告リンクと一般サイトが検索結果本体に
同列に並んで表示される、百度の検索サービスの特徴そのものにある。
広告リンクは、検索結果本体の上位に並んでいれば、
利用者が重要なサイトだと判断して、クリックする確率が高くなる。
明示されてはいても、混然と並んでいれば利用者には区別しにくい。

米グーグルや日米ヤフーのように、広告リンクは「スポンサーサイト」などと
題した画面上部や右端のコーナーにまとめて並べる方式だと、
とたんにクリックされる確率が下がる。
無名企業の広いリンクだった場合、どの程度重要なサイトなのか
消費者は判断できないので、クリックへのハードルは高くなる。

グーグルやヤフーは、純粋な検索結果を表示することで
消費者の支持を獲得する戦略を採用し、その路線で検索事業は収益的にも成功。
だが、百度がこの分離モデルに切り替えると、
当然ながら広告リンクのクリック率が下がり、広告収入が落ち込む恐れ。

広告リンクと一般サイトを同列表示させる方式への批判が高まったのに応え、
百度は広告リンクを別枠で表示する方式の実験を始めた。
だが、検索結果本体内への広告リンクの表示も続けている。
完全に分離するかどうかは分からない。

北京在住のある中国人投資家は、「収益を考えると、百度が広告と本体の
完全分離を実行するのは容易でない。中国のネット検索市場には、
米グーグルをはじめ2番手集団が百度を追い上げるスキがある」

グーグルは、08年夏から音楽配信サービスをメニューに加えるなど、
中国市場への最適化戦略を加速。
それでも、百度のシェアはなかなか揺るがなかったが、
願ってもない敵失に恵まれた格好。
「東アジアで勝てないグーグル」という呪縛から逃れ、
世界最大のネット利用人口を擁する市場でトップをうかがうポジションを築けるか。

前出の投資家は、「中国政府は、絶対米企業をトップにはしないので、あり得ない」
しばらく中国のネット検索市場からは目が離せない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/ittrend/itt090121.html

現場再訪(12)民間校長 改革は続く

(読売 1月24日)

民間出身で公立学校長を経験した人材が、新たな道を歩んでいる。

「ひとはいざ こころもしらずふるさとは はなぞむかしの かににおいける」
三原徹校長(60)が、紀貫之の歌を読み上げると、
札を取る3年生の元気な声が教室に響いた。
私立東京女学館小学校(東京・広尾)で、
道徳の時間を使って行われた百人一首の授業。

同小には、日本人女性としての品性を身につけるため、茶道、華道、
着付け、日本舞踊、お箏など伝統文化を学ぶ時間がある。
百人一首は、以前から校長の担当。
ベネッセコーポレーションから転じて東京都足立区立五反野小の校長を4年務め、
昨春、女学館に招かれた三原さんも、その役割を引き継いだ。

歴史ある私立校への再度の転身。
「1年はまず様子見」と前任者の敷いたレールに乗ってきた。
まもなくその1年が終わる。
「伝統校でも、年ごとの課題は必ずあるはず」と、
新年度からの学校経営計画を作るため、
年明けから保護者に提案や意見を求めている。

「私学に通わせる保護者の期待は大きいはずだが、
口に出して言ってもらう機会が少ない。
私の役割は、学校と社会、教員と保護者の論理の落差を埋めていくこと」
その姿勢は、五反野小時代と変わらない。

同小の後任校長は、三原さんを副校長として2年間支えた土肥和久さん(49)。
民間出身ではないが、「後を託すならこの人」と三原さんが見込んだ逸材。
定年まで1年を残して三原さんが退職したのも、土肥さんの内部昇格を促すため。
地域住民らが学校運営に参画するコミュニティスクールの制度を
十分に生かした学校運営を続けている。

リクルート出身で、東京都杉並区立和田中学校長としての5年間に、
様々な改革を進めた藤原和博さん(53)は、
「公立学校を変えるためには、もっと民間出身校長を増やすべきだ」

昨年、大阪府特別顧問に招かれ、大阪の教育改革のために飛び回る。
藤原さんの提唱で、今春には、府内の義務教育学校では初めて、
寝屋川市内で民間出身の中学校長が誕生。
パナソニック出身の牧野一徳さん(57)。

東日本では、三原さんと同じベネッセ出身の水野次郎さん(51)が
千葉県立高校の教頭として修業中で、今春、校長に就く。
ベネッセ退職後、伊豆でプチホテルを経営、漁師の息子である高校生が
主人公の小説を書き、文学賞も受賞したユニークな人材。

教員免許を持たなくても、教育関連の仕事の経験がなくても、
公立学校の校長になれる制度が始まったのは2000年。
この制度で生まれた民間出身校長は、ピークの05年に92人を数えた。
その後はやや減少傾向に。
起用した自治体による効果の検証も十分ではない。

民間出身の校長起用が、「校長にふさわしい人材とは何か」を、
今も問い続けていることは間違いない。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090124-OYT8T00323.htm

スポーツ21世紀:新しい波/291 武道の必修化/9

(毎日 1月24日)

12年度から中学校の保健体育で武道が必修化されることに伴い、
文部科学省は新年度予算案に自治体が整備する公立中学校の
武道場の補助費として、40億2600万円を計上。
中学校に武道の環境をどう整備するかは、大きな課題。

全日本弓道連盟では、弓道を授業で採用している中学校を調査しているが、
現在把握しているのは東京都と山口県の2校のみ。
全国には、1300カ所余りの弓道場があるものの、
弓道場を持つ中学校は少ない。

弓矢は竹で作られ、10万円以上する弓もある。
初心者には、グラスファイバーの弓やジュラルミンの矢など
比較的安価な製品もあり、5万~6万円で一式をそろえることもできる。

しかし、中学生用に作られたものはなく、重さや長さから扱いも難しい。
大手スポーツ用品メーカーが大量生産する体制にないため、
数もそろえにくいのが現状。

全日本弓道連盟の担当者は、「今後は、弓具店を統括する全日本弓道具協会と
話し合い、中学生にも使いやすい弓具を研究したい」
初めて弓道に接する中学生の体力や技術に合った、
安価な用具の開発も求められている。

元中学校教員でもある栃木県弓道連盟の桑田秀子会長は、
「弓道場がなくても、体育館に仮設で道場をつくることはできる。
矢が飛んで行った時の危険防止は、バレーのネットに防矢布を張ればいい。
競技者に古い弓矢を提供してもらったり、弓道部のある中学校や高校で
使用していない用具を貸し借りしたり、工夫次第で何とかなる」

桑田会長は、「何より重要なのは指導者です」と強調。
全国には、錬士など指導資格のある登録者が6000人以上いる。
しかし、保健体育科の教員に弓道経験者は少ない。
地域にいる指導者の派遣は不可欠といえる。

文科省は、地域連携指導実践校に全国470校を指定し、
4億9400万円の予算を見込む。
「施設」、「用具」、「指導者」の三つの課題を克服するには、
武道の現場を知る指導者たちの知恵が必要だ。

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

カロリー制限で中高年の記憶力向上

(読売 2009年1月27日)

健康な中高年が摂取カロリーを制限すると、記憶力が向上するという
実験結果を、独ミュンスター大学の研究チームが、
米科学アカデミー紀要電子版に発表。

やせ過ぎていない50-79歳の男女49人を3グループに分け、
19人にはカロリー摂取量をふだんより30%減らしてもらった。
別の20人は、認知症の予防に役立つという説のある不飽和脂肪酸の摂取を
ふだんより20%増量し、残る10人は従来の食生活を続けた。

実験前と3か月後に言葉を覚えるテストを行った結果、
カロリーを抑えた19人の点数は約20%も上昇。
他の2グループは、成績に変化が見られなかった。
カロリー制限によって、体内の血糖値を調整するインスリンが
効きやすくなった人ほど、成績の伸びが著しかった。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/27/90466/

2009年2月1日日曜日

オバマ流スピーチ術 トップも学ぶ

(日経 1月27日)

バラク・オバマ氏(47)が米大統領に就任した。
大統領選中から演説上手で知られるオバマ氏。
日本でも、演説集がベストセラーになるなど注目。
人や組織を動かす言葉の力の秘訣は——。
オバマ流のスピーチのコツを、ビジネスの場で活用している
若き経営者たちに聞いた。

「この人間は信じられる、と思わせるのがオバマ氏の力」と、
グリーの田中良和社長(31)。
SNS(交流サイト)を運営し、昨年12月に東証マザーズに上場。
投資家や取引先などとの会合では、
「真剣に考えて、これが結論だと信じることを話す」のを信条。

一介の州議会議員から一躍、名を上げた2004年の党大会基調演説で
オバマ氏は、「父はケニアでヤギを世話して育ち……」と貧しい生い立ちを語り、
自由と機会の国米国が持つ希望を強調。
「単なるお金もうけではなく、いいサービスをしたいから
会社が始まったストーリーを話す」(田中さん)。
人間味のあるエピソードは、話の印象を強める効果がある。

田中さんは、繰り返すことの重要性も挙げる。
「繰り返しになるが」と前置きし、毎週月曜の全社会議で
「いいサービスをしよう」と社長メッセージを発信。
10回言って1回伝わるかどうか、と心得て決して軸をぶらさないことが、
信頼性につながる。

価格比較サイト運営のベンチャーリパブリックの柴田啓社長(43)は、
親世代の個人投資家を前に、「皆様からすれば息子のような者ですが」と
切り出した。会場から思わず笑みがこぼれる。
昨年11月の投資セミナー。
その3カ月前に大証ヘラクレスに上場し、知名度不足は否めなかったが、
笑顔とユーモアで場をなごませた。

起業前に留学した米ハーバード大学ビジネススクールでは、
人種の異なる級友に分かりやすく説明する訓練を積んだ。
要点は、「論理の流れ」。
準備段階で聞き手が誰かを考え、身近に感じてもらえるテーマを設定。
内容をトピックごとに紙にし、順番を入れ替えて起承転結を練る。
結論を言ってから裏付けを展開するのが米国流。

本番では、壇上を動き回ったりスライドをポインターで指すなどの
「動き」を取り入れている。
オバマ氏が見栄えする一因は、「まっすぐ立つ姿勢にある」、
情熱を表すためキビキビした動作を心がけている。

衣類や雑貨の電子商取引(EC)サイト運営のイメージング(東京・目黒)を
率いる池本克之社長(43)が、オバマ氏に着目したのは昨年春。
予備選で各州を制すると、体全体で喜びを表現するものの、
はしゃぎすぎることがない。
対立候補のヒラリー氏に、厳しい言葉で非難されても感情的にならない。
「感情コントロールのうまさ」は、ビジネスにも生かせる
学者と共著で「オバマ『勝つ話術、勝てる駆け引き』」(講談社)を出版。

共和党のマケイン候補を下した08年11月の勝利演説で、
オバマ氏は「この勝利が誰のものかを私は決して忘れない。
それはあなた方のものだ。あなた方のものなのだ」と畳みかけた。
簡潔な言葉でも熱く伝わるのは、聞き手を巻き込む
「連帯の言葉を大切にしているから」

選挙戦を通じて発し続けた「Yes we can」のメッセージが、
もし「Yes I can」だったら、国民の熱狂はなかったとも指摘。
会議では一方的に話さず、「一緒に考えたい」という姿勢を示すことも重要。

1月20日の就任演説で、オバマ氏は顔をできるだけ左右に振り、
200万人の観衆に視線を行き渡らせた。
これも応用可能で、部屋の四隅を順に見るのがお勧め。
「人民の人民による人民のための政治」(リンカーン)など
米大統領には名句が多い。
単なる語呂合わせや実力とかけ離れた空回りにならないよう注意。

ベストセラー「オバマ演説集」(朝日出版社)の解説を執筆した
鈴木健・津田塾大学准教授に聞いた。

就任演説で、オバマ氏は「60年前、地元のレストランで食事をさせて
もらえなかったかもしれない父を持つ男」と自身に触れた。
パーソナルな物語ではじめて、全米の物語で締める。
多民族国家の米国で、オバマ氏自身が融合の象徴。
話し手自身が、演説の中身を証明する技巧を使っている。

最初と最後が大事だ。
「変化」、「希望」と最初に分かりやすい概念を提示し、次に具体的に展開して、
最後に決めのクライマックスを作る構成がうまい。
ネット時代になり、人の注意が持続する時間はいっそう短くなった。
簡潔な言葉を繰り返すのは、的を得ている。

主語の使い分けも戦略的。
歴代大統領では、ニクソン氏が「私」を繰り返して独善的な印象を与え、
ブッシュ氏が「我彼」の2分法で世界を分断したのに対し、
オバマ氏は「あなた」や「我々」を勘所よく使った。

聴衆と同じ目線に立つ姿勢が、共感を得ている。
ヒラリー氏は、自らの優秀さを誇る上からの目線。
オバマ氏は「こう言います、願います、信じます」のように
3回繰り返すテクニックも多用。
リズムが生まれ、聴衆の注意を引きつける。
これらのレトリック(言語表現の技)は、小さいころから人前で話す
訓練を積む国語教育が土台に。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090127.html

現場再訪(11)山の生活 子供に自信

(読売 1月23日)

山村の小さな学校が、不登校の生徒の心の扉を開き始めた。

ヘルメットをかぶり、軍手をはめ、長靴をはいた何人かの生徒が、
初体験のチェーンソーと格闘。
硬い幹に刃を当てても、簡単にはね返される。
足場は急斜面で、ひっくり返る生徒が続出。

「油断すると大けがをするから、くれぐれも気を付けて」と声をかけるのが、
「どんぐり向方学園」の学園長、中野昌俊さん(65)(名古屋経済大教授)。
生徒が失敗を繰り返しながら木を切り倒すと、
「すっげえ」「びびった」といった声とともに、「次は自分が」と手が挙がった。

人口約1800人、長野県最南端の天竜村にある学園で、
昨年11月に行われた林業体験。
「ほかの学校ではこんなことはさせないだろうが、ここではあえてさせる。
危険は体験しなければわからない」と中野さん。
教員とともに林業を営む住民も立ち会い、安全には気遣いを欠かさない。

開校は2005年。NPO法人が母体。
不登校経験など様々な事情を持つ小学6年から中学3年までの15人が、
寮生活をしながら学んでいる。
教科学習は午前だけで、午後は体験学習中心。
イネを育てたり、山で植林をしたり、自然に直接触れる課題を取り入れてきた。

「自然は思い通りにいかない。失敗することで工夫を考える。
1人で無理なら仲間と協力する。社会性が身につき、自立する」
という中野さんの考えからだ。
ゲームや携帯電話に没入することを子供に許し、子供を危険から遠ざけている
社会に警鐘を鳴らす。
「自分はできるという自信を獲得する体験の場がない。
子供たちに今それが必要です」

大阪府出身で、入学して2年の森田廉平君(13)(中学2年)は
「外での体験学習が楽しい。自分のやりたいことも自分で計画さえすれば、
やらせてもらえる。来て良かった」と笑顔を見せた。

我が子を送り出すことに親側の抵抗感が大きい。
昨年4月~11月まで、1週間の「体験入学」には16人の子供が参加したが、
入学者は8人にとどまった。
途中で転校する子もいる。それでも、3年間で22人が卒業。

昨春の卒業生、竹居賢治さん(16)は、不登校経験者だが、
今は都内の高校に元気に通う。
「自然に触れたことは全くなかったので、毎日が刺激的だった。
体験しないとわからないことが世の中にたくさんある。
今では教室の勉強がすべてではないと、自分を切り替えられる」

校舎は、廃校になった小学校を村から無償で提供され、
寮も村の予算1億円で建設。
学校法人を作ったことで、県からは年間1000万~1500万円を受け、
寄付も年間約300万円。
「経営的に安定はしているが、施設補修やIT環境の整備など、
積極的な施設整備はできない。児童生徒数は30人程度が目標だ」
開校時から生徒数は横ばい。まずその増加が課題のようだ。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090123-OYT8T00235.htm

iPS細胞“100倍”作製…特殊たんぱく質で効率向上

(読売 2009年1月27日)

様々な細胞に変化できる新型万能細胞(iPS細胞)の作製効率を、
山中伸弥・京都大教授らによる従来の手法より、
最大で100倍以上高めることに、
バイオテクノロジー企業「タカラバイオ」の研究チームが成功。
日本再生医療学会で発表。

すでに特許を出願、3月にも「iPS細胞作製キット」として発売する予定で、
創薬や再生医療の研究を加速させそうだ。

2006年、4遺伝子からiPS細胞を作ったと発表した山中教授らは07年、
発がん性がある「c-ミック」を外した3遺伝子での作製に成功したが、
効率は大幅に低下。
ヒトの場合、1株のiPS細胞には元の皮膚細胞が2万-10万個必要で、
研究進展のため作製効率の向上が求められていた。

タカラバイオは、自社開発した遺伝子治療の技術を応用。
遺伝子を細胞へ運ぶ役目をするウイルスに、
人の細胞同士をくっつけているたんぱく質の一部を改良した
「レトロネクチン」という特殊なたんぱく質を加えて導入効率を高め、
2万個の皮膚細胞からiPS細胞が10-30株できた。

レトロネクチンは、がんなどの遺伝子治療で、必要な遺伝子をリンパ球に
効率よく導入する試薬としてすでに商品化。
同社は、iPS細胞作製に使う3遺伝子を組み込んだウイルスとセットで
発売する方針、京大が設立した特許管理会社「iPSアカデミアジャパン」と交渉中。

タカラバイオの加藤郁之進社長(理学博士)は、
「iPSを扱える研究者が一気に増え、難病の解明や新薬の開発が
大きく進むだろう」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/27/90455/

ポリオ撲滅に6億ドル超 ゲイツ財団などが投入

(共同通信 2009年1月23日)

国際ロータリー、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、英国とドイツの
両国政府は、ポリオの撲滅に必要な資金を新たに
6億3000万米ドル以上投入すると発表。

アフリカとアジアの一部の地域では、子供たちが、麻痺障害の後遺症を
もたらし、時には命をも奪うポリオ(小児麻痺)の危険に。
撲滅支援のリーダーは、資金投入の約束に加え、
ほかの団体や国にも寄付を呼びかけ、
ポリオ感染国の指導者に対しては撲滅活動を積極的に支援するよう働きかけた。

ゲイツ財団は、ポリオ撲滅のため、ロータリーに2億5500万ドルの補助金を授与。
ロータリーは、今後3年間に会員からの募金で1億ドルを調達し、
この補助金に上乗せしてポリオ撲滅に投入。
同時に、英国政府からも追加の1億5000万ドル(1億ポンド)、
ドイツ政府からもさらに1億3000万ドル(1億ユーロ)が、
いずれも世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)に寄せられた。

今後5年間の英国とドイツからの寄付は、ゲイツ財団補助金へのロータリーによる
上乗せ寄付には算入されない。

世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)の主導団体であるロータリーは、
主に資金の調達、政府や民間への支援の働きかけ、
ボランティアの動員といった役割を引き受けている。
人道的奉仕団体であるロータリーが、国際協議会において行われた。

ゲイツ財団共同理事長であるビル・ゲイツ氏は、
「ロータリアン、各国の指導者、保健専門家といった方々の
懸命な努力のおかげで、ポリオを患う子供の数は、
世界でもほんのわずかとなった。

しかし、ポリオウィルスの完全な根絶は難しく、今後も難を極めることだろう。
撲滅という目標に、私自身が深くかかわるようになったのは、
撲滅を目指して努力を傾けるロータリーのひたむきな姿に
深い感動を覚えたことが大きな理由である」

ジョナサン・マジィアベ・ロータリー財団管理委員長は、
今回のゲイツ財団との提携がポリオ撲滅のほかの協力者にとって刺激となり、
今後さらに支援が増えるだろう。
「ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団の支援の下、世界中で最も恐れられてきた
この病の撲滅まで、あと一歩。
ロータリーとゲイツ財団による共同の資金投入により、
各国政府や非政府団体も支援に前向きになり、
ポリオの根絶に必要なリソースがさらに寄せられることになるだろう」

英国のダグラス・アレクサンダー国際開発相は、
「英国政府からの1億ポンドの寄付誓約は、ほかの支援者から寄せられた
資金とともに、この病を世界から撲滅するための闘いを大きく後押し。
感染リスクの高い国では、予防接種の回数を増やすなどの対策を取っており、
新たな感染者数を減らす上で大きな進展を見せている。
ポリオ撲滅を完遂する大きなチャンスを迎えた今、今回の資金投入により、
麻痺障害をもたらすこの恐ろしい病で、これ以上、発展途上国の人々が
苦しむことはなくなるだろう」

ポリオ撲滅活動は、現在も資金不足の問題を抱えており、
撲滅を実現するにはこの不足を埋めなければならない。
今回の新たな資金提供、カナダ、ロシア、米国政府からの寄付を合わせても、
2009-2010年度の不足額は3億4000万ドル。

ドイツ政府からも新たな寄付が予定。
ドイツのハイデマリー・ヴィチョレク・ツォイル経済協力開発相は、
「先進主要8カ国は、ポリオ撲滅に必要なあらゆる手段を講じることを
これまでに何度も約束した。
ドイツは、この約束を守るために多額の寄付を行ってきた。
世界の子供たちをポリオから守るため、
現地の保健員が必要なサポートを得られるよう、
わが国は、資金不足の問題解決をほかの国にも呼びかけている」

ポリオは、アメリカ大陸、西太平洋地域とヨーロッパから完全になくなった。
野生型ポリオウィルスは、アフガニスタン、インド、ナイジェリア、パキスタンに
根強く残っているほか、これらの国から流入したウィルスによって、
ほかの発展途上国でも感染者が出ている。

最も深刻な課題を抱えているのはこれら4カ国であり、
こうした課題には、ワクチンの有効性の問題(インド)、
予防接種率の低さ(ナイジェリア)、
紛争により現地での活動が困難な状態(アフガニスタンとパキスタン)。

撲滅実現は、これらの各国の取り組み姿勢にかかっている。
国規模の全面的な取り組みがあれば、こうした課題は克服が十分に可能。
ロータリー、世界保健機関(WHO)、米国疾病対策センター、
ユニセフの主導の下、1988年に開始された世界ポリオ撲滅推進計画(GPEI)は、
過去20年間にポリオ感染数を99%減らすことに成功、
1988年の約35万人から、2008年の1600人(推定)にまで減少。

世界ポリオ撲滅推進計画は、今回の新たに提供された資金を、
幅広い撲滅活動へと充てていく予定。
WHOのマーガレット・チャン事務局長は、
「残る常在4カ国のあらゆるレベルからのさらなる協力の下、
今回の新たな資金投入は、残されたポリオ常在4カ国の政府が
全児童にポリオ予防接種を行う妨げを克服するために、
われわれがまさに必要とするものである」。

ポリオを完全に葬ることが、極めて重要。
この病によって、子供が麻痺障害を抱えなくて済むという理由に留まらない。
どこに住んでいようとも、どんなに困難で過酷な環境にあっても、
すべての子供たちの命を救う医療を行うことができるメッセージになる」

同事務局長は、2008年、ポリオ撲滅をWHOの最優先活動にすることを宣言。
ゲイツ財団からの補助金は、同財団からロータリーに贈られた2回目の補助金。
最初の補助金は2007年11月に授与、
ロータリーは同額を上乗せしてポリオ撲滅に寄付することに同意。

上乗せ資金を募金するための活動は、
「ロータリーの2億ドルのチャレンジ」と名づけられ、
既に世界中のロータリー・クラブが募金活動に全力をあげている。
最初のゲイツ財団補助金が発表されて以来、ロータリーはこの目標に向けて
6000万ドル近くを集めている。
献身的な活動を高く評価したゲイツ財団は、2回目の補助金を提供。
ロータリーは、rotary.org/endpolioでポリオ撲滅について学び、
「ロータリーの2億ドルのチャレンジ」に支援を寄せてもらうため、
一般の人々にも協力を呼びかけている。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/23/86993/

2009年1月31日土曜日

漢字力=企画力 一言の妙、仕事に応用

(日経 1月6日)

漢字を使いこなす能力が、ビジネスに必要な素養だとわかっていても、
日ごろから意識的に漢字力を磨くのは意外に難しい。

昨年、漢字の誤読を連発し、求心力が低下したといわれる
麻生太郎首相の姿は記憶に新しいが、
人のことを笑えなくなる場面はビジネスの世界にもありそう。
日本漢字能力検定(漢検)に合格したビジネスパーソンの経験をもとに、
漢字力を養うことでどんなスキル向上が可能かを探った。

博報堂のクリエイティブセンターに勤務するデザイナーの小塚泰彦氏(30)は
漢検2級の合格者。
最近、アパレルの顧客企業からCI(コーポレートアイデンティティー)戦略を
立案する依頼を受けて、「生活の補助線」というコンセプトを提案、即採用に。

「生活」と「補助線」。
簡単な漢字の組み合わせだが、小塚氏の漢字に対する感度の高さが
顧客企業を満足させた成功例。

補助線とは本来、幾何学の用語。
図形に線を書き加えることで、今まで見えていなかった解を導き出せる。
こんな意味合いを込めて、衣類から今まで見えていなかった
新しい生活スタイルを提示する企業の姿勢を一言で表現。
「生活の補助線」という言葉が決まると、企業のロゴマークや衣類を売る
店舗のインテリアも次々にイメージがわき、CI戦略の仕事は順調に進んだ。

どんな企業でも、事業の戦略をまとめる会議などで、
戦略の方向性を一言で表現できる能力が求められる場面は多い。
「軽・薄・短・小」は「軽い」、「薄い」といった商品が売れ筋になるという
消費の傾向を、端的に漢字四つで表現した経済誌の造語。
「新商品の特徴を一言で言えば○○です」などとプレゼンテーションするとき、
聞き手の心に届く言葉を使いこなすには、相当な漢字力も求められる。

人材紹介業務でも、漢字力を使って「企画力」を高めようとする人がいる。
人材紹介のジェイエイシージャパンで、人事部担当の
高井理香アシスタントマネージャー(32)。

人材紹介の業務では、人材の履歴書に添える推薦文などを書く機会が多く、
「この人物をなぜ紹介するのか。どんな魅力を持った人物なのかを
表現しなくてはならない」
漢字力を磨けば、質実剛健など、紹介する人物の特徴を
短く的確に表現する能力が高まるのが利点。

高井氏は自ら漢検二級を取得し、人材育成の一環として
漢検を社内に広げようとしている。
イントラネットで漢字問題を配信するなどの支援策が奏功し、
2級合格者は全社員の1割を超え102人に。
新入社員は、合格水準に達しないことも少なくないが、
準2級を1年以内に取得するように指導。

三井住友海上火災保険の船橋南保険金お支払いセンターに勤める
照屋博之主任(30)も、漢検2級の合格者。
自動車事故に関連した保険金支払いについて説明するのが仕事で、
事故にあった人には対人賠償保険と搭乗者傷害保険の違いなどを
説明する文書を週に2—3本は作成。
「受け取れる保険金の趣旨がそれぞれ違うことなどの要点を整理し、
分かりやすく書く表現力の幅が広がった

3人のような合格者は、どのように漢検をクリアしたのだろうか。
照屋氏が2級に合格したのは、2007年夏。
通勤や昼食の時間を活用して、漢検用の参考書を使って1カ月程度、
集中的に勉強した。
合格後は、「言葉に対する注意力が増して、こまめに辞書を引く習慣がついた」

小塚氏は、「言葉の感性を磨くには、詩を読むとよい
西脇順三郎や瀧口修造といった詩人の作品を愛読していると、
漢字を使った表現力も向上した。

高井氏は、実際に漢字を書いてみることが重要。
相談にくる社員には、「自分は電車の中でメモ帳に漢字を書いて覚えた。
任天堂の携帯型ゲーム機で、漢検のソフトを使ってペン入力で書いてみてもよい」

「検定ブーム」が続くなかで、漢字検定は検定の横綱だ。
日本漢字能力検定協会によると、2007年度に漢検の志願者数は
過去最多の271万人に達し、受検者は国内の検定試験としては最大規模に。
中高生が中心、20代後半、30代の志願者も3割以上増加、
社会人にも浸透している。

社会人として養っておきたい漢字力は、漢検2級の水準。
2級の検定では、社会生活で一般的に使われる漢字の目安である
「常用漢字表」の1945字のほか、戸籍に記載できる人名用漢字についての
知識が問われる。
出題数は120で、試験時間は60分。8割程度の正答率が合格圏。

出題傾向をみると、漢字の読み書きは全体の半分近くで、
同訓異字や同音異義語についての問題のほか、
誤字の訂正、四字熟語の能力なども幅広く問われる。
「言葉の運用力が試される」
(日本漢字能力検定協会の多和泰美・東京事務局次長)と覚悟して、
試験に臨む必要がありそう。

公開会場での検定は年3回。
日曜に実施するが、平日に同協会などの準会場に出向いて、
パソコン画面に回答を入力する「漢検CBT」でも受検は可能。
自信がついてきたところで、手軽に腕試しすることもできそう。

年初めに一段のスキルアップを狙う気構えができたら、
ビジネスの基礎体力を養成するスタンスで、
漢検を活用してみるのも手かもしれない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090106.html

グリーンITの本命「超電導送電」

(日経 2009-01-23)

ITが社会に浸透すれば、煩雑な仕事を効率化でき、
省エネにつながるという話は誤解を含んでいる。
パソコンが普及するにつれ、社会の中にまた新たに仕事が発生。
扱うデータも、文字から写真、動画へと大容量化し、
エネルギー消費量は増加の一途をたどる。

インターネット総合研究所(IRI)の藤原洋所長は、
「インターネットのデータを預かるデータセンターでは、
電気代の負担が最大の悩みだ。
電力会社からは大口顧客として表彰されたが、
電気使用量を減らす技術開発が急務だ」

そこに、救世主として登場したのが高温超電導直流送電
液体窒素で冷やすと、電気抵抗がゼロになるケーブルを使う。
データセンターの電気使用量を40%も減らしてくれる。
テレビが全面的に「地デジ」に変わる2011年7月より少し前に、
この送電システムが世界に先駆けて日本のあるデータセンターで使われる。

藤原所長は昨年7月、世界で唯一、高温超電導の直流送電を研究開発する
中部大学に、5年間で6億円の自己資金を出すことを決めた。
天体望遠鏡の部品を作る目的で、05年に設立したナノオプトニクス研究所の
新規事業として予算を投じた。

発電所で作る交流の電気は、交流で送るのが当たり前。
電力会社は、高温超電導ケーブルを使えば省エネになると期待するが、
金属ケーブルを高温超電導ケーブルに交換して交流を送ることを検討。
東京電力は、住友電気工業、前川製作所などと組んでこの技術を開発。

しかし、高温超電導送電を研究している中部大の山口作太郎教授は、
「直流にしないと、高温超電導の良さを最大限に生かせない」
電力会社にいくら直流の利用を勧めても、まったく受け入れてもらえない。

電力会社は、直流の良さは認めつつ、これまでの交流中心で敷かれた
インフラを、直流に変えるには周辺機器や技術もすべて見直す必要。
山口教授もその事情は理解し、いきなり数千キロメートルの長距離送電に
直流を勧めるのは時期尚早。

そこで、変電所とデータセンターを結ぶ300-400メートルの短距離送電。
データセンター内の主要な配線も併せて置き換えると、
データセンターの電気使用量を一気に40%も削減。
従来の送電による交流損失と、データセンター内で発生する
熱を冷ます空調を、大幅に削減できるため。

藤原所長は、高温超電導直流送電の事業化に賭けた。
実用的なシステムが完成すれば、自分の会社も助かる上、
システムを国内と海外で販売できる。

山口教授は07年、20メートルの設備を作って送電実験に成功。
住友電工が開発した高温超電導ケーブルを使い、
ケーブルを液体窒素温度に保つ断熱鋼管はJFEスチール、
冷却システムは前川製作所が開発に協力。

中部大は、ナノオプト研からの資金提供を受け、
学内に200メートルの送電システムを作って実験に着手。
データセンターと変電所の間に400メートルのシステムを設置し、
11年3月末までには利用開始を目指す。

データセンターに続く用途も、すでに考えている。
藤原所長と山口教授らは、太陽電池に高温超電導直流送電システムを
つなぐ構想を持っている。
タービンを回して交流を作る発電所と違い、太陽電池や太陽熱発電、
燃料電池は直流を発生する。
「直流は、直流のまま機器に流す方がよいに決まっている」(山口教授)。
発電所の無い山で、太陽電池と天体望遠鏡をつなぎたいとも考えている。

高温超電導物質は、1986年に発見されたが、
なかなか実用化に結び付かなかった。
直流送電が導火線になるかもしれない。
世界に誇る日本発の省エネ技術と言えるだろう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec090122.html

現場再訪(10)地域に愛着 自前教師

(読売 1月22日)

自治体が自前で教師を養成するには、工夫が必要になってきた。

スーツ姿の教師の“卵”たち23人が昨年12月、
現役教師の話に熱心に耳を傾けていた。
東京都杉並区が始めた「杉並師範館」。
修了すれば、区の小学校教師として採用。
3期生は、この日は「特別活動の指導」をテーマに約7時間かけ、
18人の教師から指導法を伝授。

教員の人事権は都教委にある。
優秀な教員もいずれ転出してしまう。
自前で手をかけた人を自前で採用したいと区が始めた師範館の卒塾生は、
この2年で46人が教壇に立つ。
学生より、現場を経験して入塾した人の方が多い。
富士通出身で、独立行政法人「メディア教育開発センター」特定特任教授の
山村弘塾長(62)は、「塾生はどこに出しても恥ずかしくない」

卒塾生の1人、川上真理子さん(24)は昨春、区立杉並第六小学校で
2年生の担任になった。
「師範館で学んだ子供への接し方を生かしている。
区の教師になることで、地域に愛着がわき、熱意を持って続けられる」と
地域密着の効果を語る。
鈴木清子校長(60)は、「教育を重視する区の願いから生まれた先生たち。
その思いを感じて頑張ってほしい」

自前で養成する分、教師の配置は手厚くなり、区教委は今年度から
都内では初めて、30人程度学級を始めた。
4期生まで巣立てば、その数は約100人に。

それ以降は未定。
区が全額負担する給与は、100人で年約5億円にもなり、負担は退職まで続く。
応募者も、最初2年は200人を超えたが、その後はやや減っている。

東京都教育委員会による大学生対象の「東京教師養成塾」は、
杉並区より2年早く始まった。
4年間で367人が修了し、都内の公立小で教師に。

都教委では2007年、卒塾生が勤める約100校の校長に、
他の同年代の教師と18項目で比較する調査を実施。
その結果、特に「熱意と使命感」、「授業づくりへの意欲」、
「初任者研修等での若手のリーダー役」などで卒塾生の評価が高かった。

今年度からは、募集枠を50人増の150人に増やした。
都内15校からの推薦に限っていた対象大学も、他県を含む19校に拡大。

「新人でも、いじめや不登校で、保護者や児童への実践的な対応が求められている」
(都教職員研修センターの古屋真宏主任指導主事)として、
選抜方法も、これまでの個人面接から集団面接と小論文に変え、
コミュニケーション能力や課題解決力の高い教師を増やそうとしている。

都の教員採用試験の競争倍率は、小学校ではピーク時の15・3倍(1996年度)
から今年度は2・2倍にまで下がった。
杉並区や横浜市など、近隣自治体でも同様の塾ができた。
効果をもたらす教師の囲い込みには、工夫や財源が必要に。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090122-OYT8T00263.htm

ガリレオのDNAを鑑定 失明の原因など解明へ

(共同通信 2009年1月23日)

イタリア中部フィレンツェの光学研究所は、同国出身の天文学の父、
ガリレオ・ガリレイ(1564-1642年)が、長年苦しみ最終的に失明に至った
眼病の原因などを探るため、埋葬地から遺体を取り出し
DNA鑑定を行うと発表。コリエレ・デラ・セラ紙が伝えた。
ガリレオの眼病は、若い時期に発病し徐々に進行、遺伝性を疑われている。

同研究所は、原因解明と病状特定により、望遠鏡を使った天体観測に
眼病がどの程度影響を与えていたかも知ることができる。

同研究所は、今年がガリレオの天文観測開始から
400年に当たることを記念し、調査を決定。
英ケンブリッジ大の眼科医やDNAの研究者らも参加、
フィレンツェのサンタクローチェ聖堂に埋葬されている
遺体の組織の一部からDNAを採取する。
調査費は、30万ユーロ(約3500万円)の予定。

ガリレオは望遠鏡を製作し、木星の衛星や月の海を発見。
その後、観測を基に地動説を唱えたことから、
ローマ法王庁(バチカン)の宗教裁判で有罪とされ軟禁生活となり、晩年に失明。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/23/86962/

人の細胞で立体ミニ人形 再生医療に役立つ可能性

(共同通信 2009年1月23日)

培養した人の細胞を立体的に組み上げ、
身長約5ミリのミニ人形を作ることに、
東京大生産技術研究所のチームが成功。

この技術を応用すれば、複雑な構造の人体器官や組織をつくれる
可能性があり、将来の再生医療に役立つ成果。

チームは、ゼリー状のコラーゲンを直径約0.1ミリのボール状にし、
外側を特定の種類の細胞で包んだカプセルを約10万個作製。
これを微細加工技術で作った鋳型に流し込んで、
身長約5ミリ、厚さ約1ミリの人形にした。
人形の内部の細胞が生きていることも確認。

培養した細胞は通常、ある程度の大きさ以上の塊にすると、
栄養が内部まで届かずに死んでしまうが、カプセル構造にすることで、
生きたまま立体構造にできた。

チームはカプセルに、人の肝臓の細胞を閉じ込め、細胞が働くことも確認。
竹内昌治・同研究所准教授は、「何種類もの細胞を組み合わせて、
生体のように機能する組織をつくりたい」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/23/86967/

2009年1月30日金曜日

国際オリンピック委員会(IOC)~スポーツ関連宣言文Vol.2 『スポーツ・フォー・オール ― フォー・ライフ最終宣言』

(09.01.28 SSF)

世界スポーツ・フォー・オールコングレスは、開催国オリンピック委員会主催、
IOC、IOCスポーツ・フォー・オール委員会の後援により開催。
1986年より2年に1度開催、各国スポーツ・フォー・オール関係者が
集まる最大の会議。
笹川スポーツ財団は、1998年の第7回バルセロナ大会より毎回出席。

日本からは、ポスター発表が2題。
1題は、佐賀大学文化教育学部の木村靖夫教授による
「運動習慣が女性高齢者の骨と精神状態へ与える影響」。
もう1題は、笹川スポーツ財団「日本における青少年のスポーツ参加状況」

2010年ユースオリンピックの広報活動、
2016オリンピック・パラリンピック招致活動も行なわれていた。
東京オリンピック・パラリンピック招致委員会が出席、PR活動を行っていた。

【テーマ】スポーツ・フォー・オール―フォー・ライフ
【サブテーマ】
1. 青少年のための身体活動
2. IT界におけるスポーツ・フォー・オールの役割
3. 高齢化社会とスポーツ・フォー・オール
4. スポーツ・フォー・オールと社会主義
5. オリンピックとスポーツムーブメントに対するスポーツ・フォー・オールの主導権
【開催期間】2008年11月3日~7日
【参加者数】95カ国から505名、各国オリンピック委員会(NOC)、
教育・文化機関、政府・非政府組織等
【日本からの参加者数】18名、JOC、東京オリンピック・パラリンピック招致委員会、
日本オリンピック・アカデミー(JOA)、笹川スポーツ財団他
【内容】全体会議、分科会、一般発表、ポスター発表
一般発表件数:61件「健康促進のためのスポーツプログラム」、
「発展途上国におけるスポーツ・フォー・オールの供給」、
「都会と田舎における、性別による小学生の身体能力の差」等
ポスター発表件数:33件
「イタリアにおけるスポーツ・フォー・オールの現状」、
「駅伝による社会的融合の振興」、
「SUDOKU:精神的スポーツ・フォー・オール―フォー・ライフ」等

本コングレスは、世界保健機構(WHO)が協力、
身体活動が与える健康面への影響に関する発表が目立った。
特に肥満との関係を重要視。

◆第12回世界スポーツ・フォー・オールコングレス
「スポーツ・フォー・オール ―― フォー・ライフ」最終宣言

本会議は、各国政府、公共団体に対し、以下のことを求めた。

1)運動・スポーツの重要性を健康政策の主要な要素として重視
2)政策立案の際、運動・スポーツへの参加促進が公衆衛生、社会経済に
与える利益を考慮。
3)コミュニティスポーツおよび運動の重要性を認識。
4)スポーツ・フォー・オールを、経費負担や労力的負荷ではなく、投資と考える。

1. 運動・スポーツの促進には以下のような利点がある。
1)健康の増進(精神的および肉体的)
2)地域社会における社会文化的統合、公平、調和、団結。
特に民族グループ、障害のある人々、移民の融合の促進
3)社会交流、社会的一体性、社会参加能力の強化、
運動・スポーツの精神と価値観がもたらす恩恵
4)運動・スポーツの教育的役割
5)政府、地域社会が負担する健康・福祉費用の減少

2. 「食と運動と健康に関するWHO世界戦略」、2008年アクションプラン、
非伝染性疾患の予防と管理に関する提言の実施を全面的に支持。

3. 本会議は以下について確認。
1)運動不足は世界的に非伝染性疾患(NCD)―心臓血管疾患、糖尿病、
肥満、一部のガン―の独立危険因子となり、毎年200万人近くの死亡原因。
NCDによる死亡は、毎年全世界の死亡のおよそ6割を占め、
3,500万人の死亡者のうち66%は途上国の国民。
運動不足の傾向が最も強いのは、都市部の貧困地域。
2)子供の肥満は深刻化。
5歳未満の約2,200万人、学齢期(5~17歳)の1億5,500万人(10人に1人)は
過体重で、およそ3,000万~4,500万人が肥満。
3)貧困など、社会経済的事情が肥満の重要な要因。
4)食習慣や都市化のほか、自然環境、テクノロジーの利用、交通、職場環境の
変化など様々な生活要因が、座りがちな生活スタイルの増加や運動量の低下に。

4. 国内オリンピック委員会、国際競技連盟、その他のスポーツ団体が、
各国の保健、教育、スポーツを管轄する政府機関とともに、
運動・スポーツ・教育プログラムの策定、普及、調整を図り、
その重要性とメリットを考慮するよう強く推奨。

1)スポーツを通じた教育―文化と環境―に対するIOCの重視。
スポーツ・フォー・オールの価値観を広め、オリンピックやユースオリンピックを
通じて、青少年を運動・スポーツに引き寄せる上で独自の基盤を提供。
2)すべての年齢層、運動能力に対応した、開放的、低コストで、
利用しやすい地域密着型のプログラム
運動・スポーツ施設(空き地を含む)、適切な近隣環境条件
3)課外プログラムなど、学校や青少年を対象にしたプログラム。
質の高い時間、包括的なカリキュラム、楽しさの要素を多く取り込んだ
「保健体育」プログラム。
勉強と運動のバランスを重視し、十分に保つことができる教育システム
4)コミュニティクラブ、スポーツクラブ、その他地域組織の全体の参加
5)障害のある人々に固有のニーズへの対応
6)情報技術など最新の技術を利用し、スポーツの価値や利点に関して、
地域社会、特に青少年を教育、啓発、支援。
あらゆる層からの参画を促進、奨励。
運動・スポーツ指導者・専門家を対象にした訓練・指導・組織化
その他の支援に最新の技術を導入。
7)スタート基準を低く設定した、軽度で適度な運動・スポーツプログラムの
普及や確立。
青少年のスポーツへの関心を引き寄せ、維持するための、
必要に応じたスポーツプログラムの普及
8)運動・スポーツプログラムの優良モデル、ケーススタディの普及・導入に
向けた団体間での最大限の知識移転
9)優秀なアスリートの力を借り、地域社会での運動・スポーツに
刺激、励ましを与え、模範を示すこと

5. 第12回世界スポーツ・フォー・オールコングレスでの推奨、
「生き生きとした社会(Moving towards an active society)」に焦点をあてた
取り組みや研究について、2009年IOCコングレス委員会が検討するよう提案。

6. 地域社会でのスポーツ・体育プログラム、フォローアップ活動
(特に優良モデルとケーススタディの導入と調整)の進捗報告を、
フィンランドのユヴァスキュラで2010年6月14日~17日に開催、
次回の世界スポーツ・フォー・オールコングレスに盛り込むよう提言。

http://www.sfen.jp/column/ioc/02.html

井戸水汚染が原因か 中国淮河「死の川」に 環境NGO霍氏が告発

(共同通信 2009年1月21日)

汚染で白く泡立ち、死んだ魚が大量に打ち上げられた川を見ながら、
霍岱珊(かく・たいさん)(55)は怒りにふるえた。

中国の黄河と長江の間を流れる主要河川、淮河。
少年時代、水は澄みきり、フナやコイがたくさんとれた。
きらめく川面を真っ赤な衣装の花嫁を乗せた小舟が静かに渡っていく。
そんな面影は既になく、「死の川」に変わり果ててしまった。

10年前、霍は中国河南省の地元紙写真記者の職を辞し、
同省内の淮河支流の汚染調査を始めた。
「みんなのため、わしらが生まれ育ったこの地の汚染を調べてほしい」。
胃がんで死んだ幼なじみの町長、倪安民が残した言葉がきっかけ。

中国は、30年間の改革開放政策の下、経済高成長を果たしたが、
公害は全国各地で深刻化し、淮河も工場排水や家庭の下水で汚れきっていた。
霍は流域をくまなく巡り、汚染状況を1万5000枚の写真に撮った。

川沿いの農村地帯で、がん患者が多発する「がん村」の存在。
がん村は、河南省沈丘県内で二十数カ所も見つかった。
胃、食道、大腸など消化器がんが多く、乳幼児の死亡や
先天的な障害も少なくない。
同県杜営村の人口は約1700人だが、187人ががんで死んでいた。
どの村も貧しく、十分な治療はできなかった。

がんの多発は、淮河からの灌漑で、飲用の井戸水が汚染されたためと推定。
井戸水には、がんを引き起こす硝酸性窒素や大脳に影響するマンガンなどの
有害物質が多く含まれていた。

霍は2003年、淮河の汚染対策と被害者救済を目指す非政府組織(NGO)
「淮河衛士」を設立、妻や息子2人と家族ぐるみでボランティア活動を始めた。
汚染企業の排水口を監視し、汚染実態を映した写真を展示する
キャンペーンを全国各地で開いて、がん村の存在を知らせた。

地元政府や汚染企業はうろたえた。
汚染のひどさは、公害対策が不十分な結果。
利潤を追求する企業は、対策に金をかけたくない。
地元政府にとって、企業は税収源であり、住民の雇用先。
両者は癒着し、公害取り締まりは手ぬるかった。

霍は度々、匿名の脅迫電話を受けた。
汚染企業を調査した帰り、後をつけてきた数人の男たちに殴られ、
カメラを壊されたことも。一時は精神的にかなり追い込まれたが、踏ん張った。

寄付金を募り、汚染の少ない深層水をくみ上げる井戸を掘り、浄水器を設置。
農民、李豊泉(57)は、「以前の井戸水は濁って臭かったが、
とてもおいしい水になった」

やがて政府も予算を組み、すべてのがん村に深層水井戸か浄水器が設置。
国の汚水排出規制も罰則が強化され、
主な汚染企業もようやく対策に本腰を入れ始めた。
霍は、「私たちNGOが先に立ち、政府を動かしたのだ」と胸を張った。

霍は07年末、国家環境保護総局(現環境保護省)などが主催し、
その年環境保護に貢献した人物を表彰する「年の人」に選ばれた。
地元政府を飛び越し、中央政府の支持を得たのだ。
「あれ以来、圧力や妨害は少なくなった」。

霍は08年10月、初めて外遊し、日中韓の環境NGOが新潟で開いた
シンポジウムに中国NGO20人で参加。
かつて工場排水の有機水銀で汚染され、新潟水俣病が発生した
阿賀野川を見学し、患者や支援者と交流した。
「私たちも、患者の人権を守るため同様に活動している。
日本の経験に学びたい」

水俣病患者を37年間も支援してきた旗野秀人(58)は、
先鋭化し仲間割れも起きた運動の苦い経験から
「明るく元気に楽しく、息の長い運動を続けてほしい。裁判が最善ではない。
新潟では患者への差別が生まれ、地域のきずながずたずたになった

霍の次の目標は、被害者のために補償を勝ち取ることだが、
一党支配の中国では司法の独立や執行力は不十分。

霍も企業と対決する裁判は避け、和解を目指す。
「旗野さんの言葉はとても温かい励ましになった」。
寄付金は足りず、生活は楽ではないが、粘り強く運動を続けていく。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/21/86822/

細胞の働き利用するPET検査 Dr.中川のがんを知る 実践編63

(毎日 2009年1月20日)

PET検査(ペット、陽電子放射断層撮影)をご存じでしょうか。
放射性物質を含む薬剤を注射し、がんに集まる放射性物質から出る
放射線を検出する装置。

がんの診療では、ブドウ糖に放射性物質を化合させた薬を注射。
がん細胞は、ブドウ糖をエネルギーにして増殖、
放射線を出す薬剤はがん細胞に集まる。
体から出てくる放射線を検出すれば、がんの有無をチェックできる。

このPETは、今やがん診療の現場には欠かせない存在。
CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像化装置)といった
最新の画像検査もあるが、これらは「病巣の形」にもとづく診断。
PETは、栄養を必要とするといった「細胞の働き」を利用して診断。

実際、腫瘍が疑われる場合の悪性か良性かの区別、治療の効果の判定、
治療後の再発の有無や転移の広がりの評価など、
がん診療の多くの場面でPETは役立つ。
放射線治療でも、放射線を照射する範囲を決めるためPETは欠かせない。

しかし問題も。
一番難しいのは、がんがすべてPETで検出できるとは限らないこと。
胃、腎臓、膀胱、肝臓、胆道、前立腺など多くのがんでは、
がん病巣が存在してもPETでは見つけられないことが多い。
同じ乳がんでも、患者さんによって陽性になったり陰性になったり。
PETだけでは、がんがあるかどうかの判断はできない。
特に、陰性になった場合、「がんがない」と言いきれない。

がんのPET診断が一時ブームになったが、
「PETで陰性だから安心」とは言えない。
実際、がんのPET診断は、欧米では、ほとんど行われていない。

一方、一度陽性と分かったがんについては、
治療の効果の判定や再発の有無の判断に、とても便利な道具。

がんと診断された場合は、治療前に一度PETを受け、
がんが陽性と検出されるかを確認しておくことをお勧め。
(中川恵一・東京大付属病院准教授、緩和ケア診療部長)

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/20/86590/

ニコチン蓄積の仕組み解明 禁煙用たばこも可能?

(共同通信 2009年1月20日)

タバコの根で合成されたニコチンが、葉に運ばれて蓄積される仕組みを、
京都大の矢崎一史教授らのチームが解明し、
米科学アカデミー紀要電子版に発表。

ニコチンは、導管を流れる水と一緒に根から葉に向けて移動。
NtJATというタンパク質がニコチンを取り込み、
葉の細胞内にある液胞という袋にため込んでいた。
この働きを邪魔すれば、ニコチンを含まない品種のタバコが開発できそう。

矢崎教授は、「吸った気分はそのままに、ニコチン中毒からの脱却を助ける
禁煙用たばこができるかもしれない」

チームは、タバコの葉で活性化している遺伝子を調べ、
このタンパク質を見つけた。
ニコチン以外の有機化合物を運ばせるのも可能とみられ、
矢崎教授は「植物を使って、抗がん剤などを効率良くつくる手法が期待できそう」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/20/86615/

2009年1月29日木曜日

国際オリンピック委員会(IOC)~スポーツ関連宣言文Vol.1 『釜山宣言』

(08.12.25 sfen)

第6回IOCフォーラムが、第4回釜山TAFISA World Sport For All Gamesの
日程に合わせ、韓国の釜山市内コンベンションセンター(BEXCO)で開催。

TAFISAとは、1991年に設立した世界的なスポーツ・フォー・オールの
推進を目的として活動する組織。
国際トリム・フィットネス生涯スポーツ協議会(TAFISA=タフィサ)。

【テーマ】現世代のためのスポーツと教育
【開催期間】2008年9月25日~27日
【参加者数】約600名、各国オリンピック委員会(NOC)、
各競技の国際スポーツ連盟(IF)、オリンピック実行委員会、教育・文化機関、
政府・非政府組織等
【日本からの参加者数】日本オリンピック委員会(JOC)、
東京オリンピック・パラリンピック招致委員会、
日本オリンピック・アカデミー(JOA)、笹川スポーツ財団他
【内容】全体会議、分科会、パネルディスカッション、一般発表。
一般発表件数:52件 「オリンピズムの継承」、
「アフリカ等でのオリンピック教育実践紹介」、「2010年ユースオリンピック」、
「オリンピック招致国の取り組み」等

『釜山宣言』がなされ、“釜山アクション”が採択。
“釜山アクション”の実施には、全関係者の支援と積極的な参加が必須。
IOCが、今後のスポーツ振興に対して、どの様なスタンスなのかを
把握するには一番の資料。

韓国の釜山市で国際会議等が行われたことについて、
2020年のオリンピック招致を見据えている。
一方で、セキュリティー問題やアクセスの問題等、
オリンピック招致に向けての問題点も浮き彫りに。

◆釜山アクションプラン

青少年をスポーツの未来と位置づけ、あらゆる機会・手段を活用して
スポーツ、文化、オリンピック教育の融合を進める必要がある。
この目的のため、以下の7つの機会が確認。

1. 青少年
世界各地から集った若者らによるセッションが行われ、
教育・スポーツ面での彼らのニーズ、勉学かスポーツかの葛藤、
勉学とスポーツの両立、いずれかの選択のため、
時に厳しい決断を迫られる状況について語られた。

a. 国際オリンピック委員会(IOC)、オリンピック・ムーブメント、
国連教育科学文化機関(ユネスコ)が協力し、体育を通常のカリキュラムの
一部として義務付けるよう、政府に働きかけることを決議。
b. 青少年に関わる分野、活動に関する意思決定に青少年自身を参加させる、
という考え方を会議にも拡大することを決議。
c. 青少年がさらに発言力を得、自らの考えや体験談を語ることができるよう、
IOCに対し、青少年を継続して招待するよう求める。

d. 優れた青少年を模範として見いだし、活躍する機会を高めるよう求める。
e. スポーツへの関心が薄れているのは、「現代の若者文化」のためと、
批判することに警告。真の原因は、スポーツをする機会の減少。
運動場、予算、コーチの不足、地域社会・学校・クラブのプログラムの減少が
世界の多くの都市で危機的状況に。

2. ユースオリンピック
IOC、オリンピック・ムーブメントが組織的な形で世界の青少年の生活に
直接影響を与えることができる絶好の機会。
ユースオリンピックの教育・文化プログラムの発展に、ユネスコなどが参画。

a. IOC会長、オリンピック・ムーブメントがユースオリンピック創設を歓迎。
b. プログラムの内容が、オリンピックの価値観を表し、
参加者にとっては教育上の経験となるよう留意。
c. ユースオリンピックのプログラムに、スポーツ、異文化、価値に関する教育が
スポーツ競技と同等の重要性を与えられる。

d. IOC、国際競技連盟他すべての関係者に対し、プログラムによる恩恵が
大会に直接参加した者だけにとどまらない。
e. ユースオリンピックの教育プログラムの内容を、大会間で継続させる。
f. ユースオリンピックが活気ある華やかな雰囲気の維持に努め、
他のスポーツ団体もこれに追随するよう奨励する。

3. 普遍性(ユニバーサリティ)
「普遍性(ユニバーサリティ)」の意味を、広義に解釈することの必要性を認識し、
先進国・途上国間の格差は、男女格差による問題と同程度に
オリンピック教育の共有にとって障害となる。

a. スポーツに関わる教育・異文化機会が、文化的アイデンティティと多様性、
真のジェンダー平等、障害のある人々への機会提供を尊重。
b. IOC、パートナー団体に対し、オリンピック教育が途上国の青少年の
唯一の教育機会であり、プログラムから最大限の恩恵を得られるよう、
各国のオリンピック委員会や当局と緊密な協力関係を築く。

4. 競技引退後の生活
競技生活引退後も、充実した生活が保障されるために、
スポーツ界全体で対策を取るよう求めた元競技者からの訴えを聞き、
多くの競技者が競技生活を終えた後に厳しい状況に直面。

a. IOC、IOCアスリート委員会が職業訓練や資格取得を目的とした
特別プログラムを創設。
b. 国内オリンピック委員会、国内競技連盟、国際競技連盟に対し、
学位取得を目指す競技者のための新たな支援プログラムの設置を検討。
c. このような機会が、参加国すべてに広く告知。

5. オリンピック組織委員会、国内オリンピック委員会の教育・文化プログラム
オリンピック組織委員会で、大規模な教育プログラム(北京大会で若者4億人が参加)
を企画、この分野に対する投資が国内オリンピック委員会間で格差がある。
すべてのオリンピック開催都市で「文化オリンピック」も開催されるが、
宣伝や資金の不足が多いことから注目されない。

a. プログラムがすべての国、独自に企画する力を持ち合わせていない国に普及
b. プログラムが、特定の大会に関連するイベントにならず、
継続的なプロセスになるよう強く提案。

c. 「文化オリンピック」の認知度を高め、多くの宣伝を行い、
大会参加者に出席を促す。
d. 教育プログラム、文化オリンピックがともにレガシー(財産)、
知識移転システムの一部となるよう提案。

6. パートナーシップ
オリンピック・ムーブメントは、特にスポーツを介した社会の発展、
青少年および地域社会教育、平和の実現を目指す上で、
志を同じくする団体と協力することを常に誇りとしてきた。
IOC会長による非スポーツ団体の招聘、
スポーツ・ムーブメントとユネスコとの連携は、
「スポーツにおけるアンチ・ドーピングに関する国際条約」を世界各国が批准。

a. スポーツを介した発展、若者の動員、教育の実現に国連、政府が協力
b. 世界アンチ・ドーピング機関、提携機関が、労働安全衛生の他の分野で
すでに実施されている周知活動を精査、教育と防止活動を拡大。

7. オリンピック・コングレス
2009年コペンハーゲンで開催されるオリンピック・コングレスは、
スポーツ界全体にとって、今後のスポーツ・異文化教育の方向性に影響。

a. 教育者、研究者、青少年、一般市民に対し、この機会を利用して
コングレスに議題を提案。
b. IOCが、開設しているバーチャル・オリンピック・コングレスに参加。
c. 若者たちが青少年とオリンピズムに関する討議に参加できるよう、
IOCに対し、コングレスに若者も招く。

大韓民国・釜山2008年9月27日

http://www.sfen.jp/column/ioc/01.html

科学立国の明日(2)原石の発掘 「目利き」次第

(読売 1月18日)

京都大の山中伸弥教授が作製したiPS細胞は、ノーベル賞級の成果とされ、
2006年の発表以来、世界中で研究競争が続いている。
山中教授がいち早く実現できた背景には、
将来性を鋭く「評価」した「目利き」の存在がある。

6年前、科学技術振興機構(JST)の「戦略的創造研究推進事業(CREST)」で、
採択の審査をしていた大阪大の岸本忠三・元学長は、
ある申請書の題名に目を留めた。

「真に臨床応用できる多能性幹細胞の樹立」。
「真に」とは、今までの研究はまるで役に立たないと言わんばかりの
大胆で挑戦的な表現。
名前倒れにもなりかねないが、幹細胞研究の重要性を意識していた
岸本元学長は、内容に「キラリと光るもの」を感じた。

面接で本人の能力と熱意を確認し、「百に三つも当たれば」と採択、
年間約5000万円を5年間支給。
研究は一気に進展、「千に三つ」の成果に大化けした。

当時、まだ目立つ業績をあげていない山中教授は、
年間1000万円の研究公募にも落選していた。
山中教授は、「面接の最後に『言い残したことはないか』と聞かれ、
採用は無理だと思った。研究は一生をかける覚悟だった」と振り返る。

岸本元学長は、今年のクラフォード賞を受賞する免疫学者だが、
同じCRESTで、ウイルス研究で著名な東大の河岡義裕教授も見いだした。
「名伯楽」とも呼ばれる。

研究費の審査の多くは合議制で、無難な結果になりがち。
研究者本人の情報があって、一定の成果が見込める有名大学や
著名な研究室の出身者が有利に。
大化けの可能性のあるダイヤの原石は埋もれかねない。
神戸大を卒業し、大阪市立大、奈良先端科学技術大学院大と
地方大学を歩んだ山中教授も、研究費の面では恵まれてはいなかった。

CRESTは、原石を拾い上げるため、一人が責任をもって選び、
「良いと思ったら少々強引でも採用できる」(北沢宏一・JST理事長)のが特徴。

目利きは、いま“ブーム”だ。
最先端の基礎研究から、技術の製品への応用まで、活躍の場は幅広い。
政府は新年度、先端技術の開発動向や進展を常に把握し、
意見を聞くために、60~70人程度の目利きを配置。
経済界も、企業の研究所長といったエース級の人材を推薦するなど、期待は大きい。

野球に10割打者がいないように、絶対確実な目利きもいない。
米国は、目利き先進国と言われるが、インターネットの巨人「グーグル」でさえ、
創業前はいくつもの企業に売り込んだが相手にされず、結局独立した経緯を持つ。

目利き養成に王道はない。
「よく勉強し、人に話を聞くこと」と岸本元学長は語る。
将来性を見抜く人材を育て、権限と待遇を与え、敬意も払う「目利き文化」を、
日本でも根付かせたい。

http://www.yomiuri.co.jp/science/tomorrow/tr20090118.htm