(東海新報 1月27日)
日本外航客船協会(会長・松平誠郵船クルーズ(株)会長)内に
設置している客船事業振興委員会による「クルーズ・オブ・ザ・イヤー」で、
大船渡市が特別賞を受賞。
これまで市一丸となった形で展開している客船誘致活動が評価。
この表彰制度は、同協会の創立20周年に向けたイベントの一環で、
同委員会が今年度の新規事業として行った。
旅行業界の健全な発展に寄与した旅行商品や、日本のクルーズ市場への
拡大に貢献した企業・団体などを顕彰することで、
さらなるクルーズの充実を図ろうと企画。
同協会や後援した日本旅行業協会の会員企業が、
昨年実施したクルーズ商品を対象に募集を行ったところ、
23点の旅行商品などの応募、推薦があった。
その中からグランプリ1点、優秀賞2点、特別賞3点が決定、
「ベスト・クルーズカップル・オブ・ザ・イヤー」も選出。
特別賞を受賞した大船渡市は、郵船クルーズから客船誘致に
積極的な市として推薦。
毎年の『飛鳥2』寄港をはじめとしたクルーズの周知、歓迎行事など、
市を挙げての取り組みが高く評価。
グランプリは、『にっぽん丸』による「飛んでクルーズ北海道」。
優秀賞には、JALチャーター直行便を利用した「『サファイア・プリンセス号』
で行く、ゆったり優雅な夏のアラスカクルーズ10日間」と、
『ぱしふぃっくびいなす』のチャータークルーズ
「春の瀬戸内海と九州一周クルーズ8日間」が受賞。
大船渡市と並ぶ特別賞には、「せとうち・感動体験クルーズ」と
「阪神タイガース応援謝恩スペシャル!エバー航空直行便で行く陽光の
メキシカン・リビエラクルーズ11日間」が選ばれた。
ベスト・クルーズカップルには、俳優の高橋英樹・美恵子夫妻が選出。
授賞式は2月2日(月)に東京都で行われる。
http://www.tohkaishimpo.com/
2009年1月29日木曜日
見つめ合いでホルモン上昇 人と犬、きずな強める
(共同通信 2009年1月26日)
愛犬に見つめられると、相手への信頼感やきずなを強める働きのある
ホルモン「オキシトシン」が飼い主の体内で増加することを、
麻布大と自治医大の研究グループが確認。
オキシトシンは、哺乳類の母子関係や夫婦のきずな形成に
関係しているとされるが、異種間での作用が確かめられたのは初めて。
「見つめる」という行為が、オキシトシン増加を招くことについて、
永沢美保・麻布大助教(比較認知科学)は、
「『目は口ほどに物を言う』と言われるが、
人間と犬の間でも視線が重要なのだろう」
研究グループは、55組の飼い犬と飼い主で実験。
室内で1組ずつ、30分間触れ合ってもらい、実験前後の飼い主の尿に含まれる
オキシトシンの濃度を測定。
事前アンケートで、犬との関係が「良好」と判断された飼い主13人では
実験後に濃度が大きく上昇したが、「普通」の42人では変化が無かった。
良好群の実験後の濃度は、普通群の約1.5倍と高かった。
良好群の実験を撮影した映像を分析すると、
犬が「遊ぼうよ」と飼い主を見つめたのをきっかけに交流した回数が多いほど、
実験後の濃度が高くなっていた。
一方、犬に顔を見せないよう飼い主が壁を向いたまま触れ合う実験では、
55組すべてで濃度変化は表れなかった。
◆菊水健史・麻布大准教授(行動神経科学)の話
オキシトシンを利用すれば、なかなか飼い主に懐かない犬を懐かせる
薬の開発につながる可能性がある。
しかし、オキシトシンは人間だけでなく、散歩や餌やりなどを通じて
犬の体内でも少しずつ分泌されるようになると推測。
薬を使って懐かせるより、犬を思いやって大事に面倒を見てやることが大切。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/26/90433/
愛犬に見つめられると、相手への信頼感やきずなを強める働きのある
ホルモン「オキシトシン」が飼い主の体内で増加することを、
麻布大と自治医大の研究グループが確認。
オキシトシンは、哺乳類の母子関係や夫婦のきずな形成に
関係しているとされるが、異種間での作用が確かめられたのは初めて。
「見つめる」という行為が、オキシトシン増加を招くことについて、
永沢美保・麻布大助教(比較認知科学)は、
「『目は口ほどに物を言う』と言われるが、
人間と犬の間でも視線が重要なのだろう」
研究グループは、55組の飼い犬と飼い主で実験。
室内で1組ずつ、30分間触れ合ってもらい、実験前後の飼い主の尿に含まれる
オキシトシンの濃度を測定。
事前アンケートで、犬との関係が「良好」と判断された飼い主13人では
実験後に濃度が大きく上昇したが、「普通」の42人では変化が無かった。
良好群の実験後の濃度は、普通群の約1.5倍と高かった。
良好群の実験を撮影した映像を分析すると、
犬が「遊ぼうよ」と飼い主を見つめたのをきっかけに交流した回数が多いほど、
実験後の濃度が高くなっていた。
一方、犬に顔を見せないよう飼い主が壁を向いたまま触れ合う実験では、
55組すべてで濃度変化は表れなかった。
◆菊水健史・麻布大准教授(行動神経科学)の話
オキシトシンを利用すれば、なかなか飼い主に懐かない犬を懐かせる
薬の開発につながる可能性がある。
しかし、オキシトシンは人間だけでなく、散歩や餌やりなどを通じて
犬の体内でも少しずつ分泌されるようになると推測。
薬を使って懐かせるより、犬を思いやって大事に面倒を見てやることが大切。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/26/90433/
2009年1月28日水曜日
科学立国の明日(1)ILC「ノーベル賞」で急加速
(読売 1月11日)
ノーベル賞の「日の丸」4本は、久しぶりの明るいニュース。
未曽有の経済危機の中、未来を切り開く科学技術への期待は高い。
科学技術創造立国・日本の抱える課題を、科学研究の「評価」という視点で
とらえ、明日を展望することから、連載を始めたい。
長さ40キロもある直線の地下トンネルで、光速近くまで加速した
電子と陽電子を衝突させ、宇宙誕生の「ビッグバン」を再現する――。
国際リニアコライダー(ILC)は、世界の素粒子物理学者が構想する
次世代の大型加速器。
質量の起源となるヒッグス粒子の性質を突き止め、宇宙の進化の謎を解くと期待。
ILCの建設費は、現在の見積もりで8000億円。
米国は一時期、誘致に前向きだったが、巨費に二の足を踏む。
文部科学省もILCには消極的。
日本の素粒子分野の3氏が、物理学賞を独占した昨年のノーベル賞は、
ILCを巡る状況を大きく変えた。
「物質の起源を探るILC建設に、日本政府として本格的に取り組む時が来た」。
ノーベル賞の興奮がさめやらぬ、発表翌日の10月8日。
河村建夫官房長官は、唐突にILCの国内誘致に前向きな姿勢を表明。
与謝野馨経済財政相は、「日本の得意分野を強化するため、
総理にもぜひ理解いただきたい」
ILCは、2020年頃の稼働を目指し、誘致の決定はまだ数年先。
文部科学省に、事前の話はなく寝耳に水。
政府中枢の政治家が、一つの科学計画に立て続けに言及するのは異例で、
影響力は大きい。
ILCが一躍脚光を集めたことは、皮肉なことに、
科学の大型計画をどう「評価」し「選択」するのか、システムの不在を浮き彫りに。
与謝野経財相や、河村官房長官、鳩山由紀夫民主党幹事長らは昨年7月、
国の動きに先駆けて、ILC誘致を推進する超党派の議員連盟を結成。
素粒子物理学者たちは、議員側と接触を重ねていた。
議員を加速器施設の見学に招いたり、若手研究者と議員秘書らが、
誘致についてひざをつきあわせ、議論を重ねたりしていた。
働きかけは功を奏しつつあった。
素粒子分野のノーベル賞は、河村官房長官がILC誘致を提起して、
議論を巻き起こす絶好の機会。
駒宮幸男・東京大素粒子物理国際研究センター長は、
「若い人に夢を与え、派生技術が日本に残る。
何より、世界の頭脳が日本に集まる。
実現には、政治家のイニシアチブが必要」
昨年6月、三菱重工業、東芝、日立製作所などが参加した
先端加速器科学技術推進協議会も発足。
産業界にも期待が広がる。
大型計画は、科学研究の大義とは別に、巨大な公共事業という側面も持つ。
だが、未曽有の経済危機で、研究費全体の伸びが期待できない中、
科学者たちも「他人の財布」に無関心ではいられない。
「一部の研究者が政治家を頼って、公共工事のようにILCを進めたら、
素粒子以外の予算が削られ、影響は避けられない。日本の科学は崩壊する」
一方、文科省でも、研究者が政治家に頭越しに働きかけたことへ反発が残る。
政官学の思惑がバラバラな中、大型計画を幅広い視野から評価し、
より公平に選ぶための模索も始まった。
「学者同士が、学術的な必要性を本気で議論してこなかった。
分野を超えて大型計画を比較し、メッセージを発していくことが大切」
日本学術会議の金沢一郎会長は、過去の反省を込めてこう語る。
同会議は昨年10月、「大型研究計画検討分科会」を設けた。
メンバーの大垣真一郎・東京大教授(都市工学)は、
「巨額な税金を投入する大型研究の推進には、社会の理解が欠かせない。
透明で中立的な立場で全体を見据え、国民や政治家が、
正しく判断できる材料を提供したい」
だが、早くも「批判合戦では科学全体がダメになる」と懸念の声も。
社会への説明責任がこれまで以上に問われる中、
科学者の世界を代表する機関の意義も問われている。
http://www.yomiuri.co.jp/science/tomorrow/tr20090111.htm
ノーベル賞の「日の丸」4本は、久しぶりの明るいニュース。
未曽有の経済危機の中、未来を切り開く科学技術への期待は高い。
科学技術創造立国・日本の抱える課題を、科学研究の「評価」という視点で
とらえ、明日を展望することから、連載を始めたい。
長さ40キロもある直線の地下トンネルで、光速近くまで加速した
電子と陽電子を衝突させ、宇宙誕生の「ビッグバン」を再現する――。
国際リニアコライダー(ILC)は、世界の素粒子物理学者が構想する
次世代の大型加速器。
質量の起源となるヒッグス粒子の性質を突き止め、宇宙の進化の謎を解くと期待。
ILCの建設費は、現在の見積もりで8000億円。
米国は一時期、誘致に前向きだったが、巨費に二の足を踏む。
文部科学省もILCには消極的。
日本の素粒子分野の3氏が、物理学賞を独占した昨年のノーベル賞は、
ILCを巡る状況を大きく変えた。
「物質の起源を探るILC建設に、日本政府として本格的に取り組む時が来た」。
ノーベル賞の興奮がさめやらぬ、発表翌日の10月8日。
河村建夫官房長官は、唐突にILCの国内誘致に前向きな姿勢を表明。
与謝野馨経済財政相は、「日本の得意分野を強化するため、
総理にもぜひ理解いただきたい」
ILCは、2020年頃の稼働を目指し、誘致の決定はまだ数年先。
文部科学省に、事前の話はなく寝耳に水。
政府中枢の政治家が、一つの科学計画に立て続けに言及するのは異例で、
影響力は大きい。
ILCが一躍脚光を集めたことは、皮肉なことに、
科学の大型計画をどう「評価」し「選択」するのか、システムの不在を浮き彫りに。
与謝野経財相や、河村官房長官、鳩山由紀夫民主党幹事長らは昨年7月、
国の動きに先駆けて、ILC誘致を推進する超党派の議員連盟を結成。
素粒子物理学者たちは、議員側と接触を重ねていた。
議員を加速器施設の見学に招いたり、若手研究者と議員秘書らが、
誘致についてひざをつきあわせ、議論を重ねたりしていた。
働きかけは功を奏しつつあった。
素粒子分野のノーベル賞は、河村官房長官がILC誘致を提起して、
議論を巻き起こす絶好の機会。
駒宮幸男・東京大素粒子物理国際研究センター長は、
「若い人に夢を与え、派生技術が日本に残る。
何より、世界の頭脳が日本に集まる。
実現には、政治家のイニシアチブが必要」
昨年6月、三菱重工業、東芝、日立製作所などが参加した
先端加速器科学技術推進協議会も発足。
産業界にも期待が広がる。
大型計画は、科学研究の大義とは別に、巨大な公共事業という側面も持つ。
だが、未曽有の経済危機で、研究費全体の伸びが期待できない中、
科学者たちも「他人の財布」に無関心ではいられない。
「一部の研究者が政治家を頼って、公共工事のようにILCを進めたら、
素粒子以外の予算が削られ、影響は避けられない。日本の科学は崩壊する」
一方、文科省でも、研究者が政治家に頭越しに働きかけたことへ反発が残る。
政官学の思惑がバラバラな中、大型計画を幅広い視野から評価し、
より公平に選ぶための模索も始まった。
「学者同士が、学術的な必要性を本気で議論してこなかった。
分野を超えて大型計画を比較し、メッセージを発していくことが大切」
日本学術会議の金沢一郎会長は、過去の反省を込めてこう語る。
同会議は昨年10月、「大型研究計画検討分科会」を設けた。
メンバーの大垣真一郎・東京大教授(都市工学)は、
「巨額な税金を投入する大型研究の推進には、社会の理解が欠かせない。
透明で中立的な立場で全体を見据え、国民や政治家が、
正しく判断できる材料を提供したい」
だが、早くも「批判合戦では科学全体がダメになる」と懸念の声も。
社会への説明責任がこれまで以上に問われる中、
科学者の世界を代表する機関の意義も問われている。
http://www.yomiuri.co.jp/science/tomorrow/tr20090111.htm
理系白書’09:挑戦のとき/2 高エネルギー加速器研究機構助教・多田将さん
(毎日 1月18日)
茨城県東海村のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)で
4月から稼働する巨大な実験装置「ニュートリノビームライン」
の設計を任された。
素粒子ニュートリノを毎秒1000兆個、約295キロ離れた
岐阜県の観測装置「スーパーカミオカンデ」に打ち込み、
その変化をとらえようという壮大な実験(T2K実験)に使われる。
稼働すれば、装置は強力な放射能を帯び、
一部の部品は取り換えがきかなくなる。
設計・建設に間違いは許されない。
米軍がイラクで使ったという薄茶の迷彩服姿に肩まである金髪。
物理学者のイメージとは程遠いいでたち。
迷彩服とおそろいのヘルメットをかぶり、無数のパイプが走る
全長約100メートル、高さ約10メートルの実験装置の建設現場を飛び回る。
実験の目的は、他の物質とほとんど反応せず、物体を通り抜けてしまうなど
謎の多いニュートリノの性質を調べること。
装置の案内役も買って出る。
見学者に、難解な物理学の理論を振りかざすのは大嫌いだ。
「納税者である皆さんはスポンサー。お金の使い道を知りたいと思って当たり前」
装置責任者として、公用車や作業服の手配も多田さんの仕事。
04年4月、J-PARCに赴任して最初の仕事は、
ゼネコンの現場監督との工事に関する交渉。
「細かいこともやらないと、結局は一番大事な仕事がうまくいかなくなる。
嫌いなことから逃げてはダメ。
好き嫌いではなく、その仕事が全体の中で必要かで判断するのが
プロフェッショナルでしょう。ぼくはプロの学者になりたい」
4人きょうだいの末っ子。
一家の中で、4年制大学を卒業したのは多田さんだけ。
両親に勉強のことを言われた記憶はない。
自動車整備士だった父親は、
どんなことでも徹底する大切さを背中で教えてくれた。
「やるからにはトップを目指す」
多田さんの目標は、T2K実験のような素粒子物理学の巨大プロジェクトを
率いるチームリーダーになること。
「T2Kで働く400人の研究者の中で、物理の勉強では
ぼくは400番目かもしれない。
でも細かい仕事でもきちんとやることで、全体を見渡せる人間になりたい」。
目前に迫った実験の成功こそが、大きな目標の達成につながると信じ、
今日も地道な仕事に励む。
==============
◇ただ・しょう
大阪府摂津市出身。01年、京都大大学院理学研究科物理学・
宇宙物理学専攻博士課程修了。
同大大学院非常勤講師を経て、04年4月から現職。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/01/18/20090118ddm016040018000c.html
茨城県東海村のJ-PARC(大強度陽子加速器施設)で
4月から稼働する巨大な実験装置「ニュートリノビームライン」
の設計を任された。
素粒子ニュートリノを毎秒1000兆個、約295キロ離れた
岐阜県の観測装置「スーパーカミオカンデ」に打ち込み、
その変化をとらえようという壮大な実験(T2K実験)に使われる。
稼働すれば、装置は強力な放射能を帯び、
一部の部品は取り換えがきかなくなる。
設計・建設に間違いは許されない。
米軍がイラクで使ったという薄茶の迷彩服姿に肩まである金髪。
物理学者のイメージとは程遠いいでたち。
迷彩服とおそろいのヘルメットをかぶり、無数のパイプが走る
全長約100メートル、高さ約10メートルの実験装置の建設現場を飛び回る。
実験の目的は、他の物質とほとんど反応せず、物体を通り抜けてしまうなど
謎の多いニュートリノの性質を調べること。
装置の案内役も買って出る。
見学者に、難解な物理学の理論を振りかざすのは大嫌いだ。
「納税者である皆さんはスポンサー。お金の使い道を知りたいと思って当たり前」
装置責任者として、公用車や作業服の手配も多田さんの仕事。
04年4月、J-PARCに赴任して最初の仕事は、
ゼネコンの現場監督との工事に関する交渉。
「細かいこともやらないと、結局は一番大事な仕事がうまくいかなくなる。
嫌いなことから逃げてはダメ。
好き嫌いではなく、その仕事が全体の中で必要かで判断するのが
プロフェッショナルでしょう。ぼくはプロの学者になりたい」
4人きょうだいの末っ子。
一家の中で、4年制大学を卒業したのは多田さんだけ。
両親に勉強のことを言われた記憶はない。
自動車整備士だった父親は、
どんなことでも徹底する大切さを背中で教えてくれた。
「やるからにはトップを目指す」
多田さんの目標は、T2K実験のような素粒子物理学の巨大プロジェクトを
率いるチームリーダーになること。
「T2Kで働く400人の研究者の中で、物理の勉強では
ぼくは400番目かもしれない。
でも細かい仕事でもきちんとやることで、全体を見渡せる人間になりたい」。
目前に迫った実験の成功こそが、大きな目標の達成につながると信じ、
今日も地道な仕事に励む。
==============
◇ただ・しょう
大阪府摂津市出身。01年、京都大大学院理学研究科物理学・
宇宙物理学専攻博士課程修了。
同大大学院非常勤講師を経て、04年4月から現職。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/01/18/20090118ddm016040018000c.html
朝食食べれば元気アップ 体力向上との相関を強調
(共同通信 2009年1月22日)
「朝食を食べ、よく眠れば元気アップ」、「運動部に入ると体力向上」。
文部科学省は、全国体力テストの結果分析で運動、生活習慣と
体力向上との相関関係を強調、子どもの健全育成に向けて啓発を進める
「早寝・早起き・朝ごはん」の流れに沿う内容が目立った。
テスト結果で、朝食の摂取状況と体力合計点(80点満点)の関連をみると、
「毎日食べる」とした小学生男子の平均が54.4に対し、
「毎日食べない」児童は50.8にとどまった。
女子も毎日食べる児童は55で、3.4ポイント上回った。
小中学校の男女とも、朝食を毎日食べる子どもが食べない子に比べ、
肥満の割合が少ないことも指摘。
運動部やスポーツクラブに所属している中学生女子の体力合計点平均は52.1、
未所属の女子を10.6ポイント上回った。
男子も、未所属の生徒より9.7ポイント高い42.5。
学校単位でみても、小中学校とも加入率が男子で80%以上、
女子で70%以上になると、平均点が大幅に上昇。
一方、睡眠時間が1日に「8時間以上」とする小学生の平均は
男子が54.7、女子は55.1。
「6時間未満」とした男子は51.8、女子は52.5で、
文科省は「睡眠時間の差が体力にも反映している」と分析。
ただ、中学生では男女ともに「6時間以上8時間未満」の平均が最も高くなった。
▽全国体力テスト
正式名称は「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」。
小5と中2のすべての児童生徒を対象に実施。
小学校は、全体の71%約1万5600校の計約78万人、
中学校は、70%約7600校の計約77万人が受けた。
実技は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、50メートル走、
立ち幅跳びのほか、小学生はソフトボール投げと20メートルシャトルラン、
中学生はハンドボール投げとシャトルランか持久走
(男子1500メートル、女子1000メートル)を選択。
児童生徒の生活・運動習慣や学校への調査も行った。
事業費は約1億9000万円。
▽従来の調査で十分
正木健雄・日本体育大名誉教授(体育学)の話
日本は1964年以降、子どもから大人を対象に体力と運動能力を抽出調査、
この分野では世界でも例がないほど統計資料が充実。
だが、その調査で判明した背筋力と柔軟性の低下、という問題には
何ら有効な対策を講じておらず、膨大なデータを活用できていない。
新たに全国一斉・全員対象の調査をしても、
同じようなデータが増えるだけで底上げには役立たない。
やるべきことは従来の調査で分かっているのだから、
大切な予算は指導の充実に使うべきだ。
▽体力向上の手掛かりに
西嶋尚彦・筑波大大学院准教授(健康体力学)の話
体を動かす習慣が身についている子どもや、体力づくりに熱心な学校は
良い結果が出ており、小中学校や教育委員会が体力向上を
どうやったら実現できるかという手掛かりが見えた。
調査対象が学年全員なので、参加した子どもは自分の水準を知り、
運動や食事といった生活習慣を見つめ直すことができる。
大事なのは、各地域が結果を活動に反映させることだが、
今回は約3割の学校が参加していない。
足並みがそろうまで、あと数年は続けるべきだ。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/22/86919/
「朝食を食べ、よく眠れば元気アップ」、「運動部に入ると体力向上」。
文部科学省は、全国体力テストの結果分析で運動、生活習慣と
体力向上との相関関係を強調、子どもの健全育成に向けて啓発を進める
「早寝・早起き・朝ごはん」の流れに沿う内容が目立った。
テスト結果で、朝食の摂取状況と体力合計点(80点満点)の関連をみると、
「毎日食べる」とした小学生男子の平均が54.4に対し、
「毎日食べない」児童は50.8にとどまった。
女子も毎日食べる児童は55で、3.4ポイント上回った。
小中学校の男女とも、朝食を毎日食べる子どもが食べない子に比べ、
肥満の割合が少ないことも指摘。
運動部やスポーツクラブに所属している中学生女子の体力合計点平均は52.1、
未所属の女子を10.6ポイント上回った。
男子も、未所属の生徒より9.7ポイント高い42.5。
学校単位でみても、小中学校とも加入率が男子で80%以上、
女子で70%以上になると、平均点が大幅に上昇。
一方、睡眠時間が1日に「8時間以上」とする小学生の平均は
男子が54.7、女子は55.1。
「6時間未満」とした男子は51.8、女子は52.5で、
文科省は「睡眠時間の差が体力にも反映している」と分析。
ただ、中学生では男女ともに「6時間以上8時間未満」の平均が最も高くなった。
▽全国体力テスト
正式名称は「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」。
小5と中2のすべての児童生徒を対象に実施。
小学校は、全体の71%約1万5600校の計約78万人、
中学校は、70%約7600校の計約77万人が受けた。
実技は握力、上体起こし、長座体前屈、反復横跳び、50メートル走、
立ち幅跳びのほか、小学生はソフトボール投げと20メートルシャトルラン、
中学生はハンドボール投げとシャトルランか持久走
(男子1500メートル、女子1000メートル)を選択。
児童生徒の生活・運動習慣や学校への調査も行った。
事業費は約1億9000万円。
▽従来の調査で十分
正木健雄・日本体育大名誉教授(体育学)の話
日本は1964年以降、子どもから大人を対象に体力と運動能力を抽出調査、
この分野では世界でも例がないほど統計資料が充実。
だが、その調査で判明した背筋力と柔軟性の低下、という問題には
何ら有効な対策を講じておらず、膨大なデータを活用できていない。
新たに全国一斉・全員対象の調査をしても、
同じようなデータが増えるだけで底上げには役立たない。
やるべきことは従来の調査で分かっているのだから、
大切な予算は指導の充実に使うべきだ。
▽体力向上の手掛かりに
西嶋尚彦・筑波大大学院准教授(健康体力学)の話
体を動かす習慣が身についている子どもや、体力づくりに熱心な学校は
良い結果が出ており、小中学校や教育委員会が体力向上を
どうやったら実現できるかという手掛かりが見えた。
調査対象が学年全員なので、参加した子どもは自分の水準を知り、
運動や食事といった生活習慣を見つめ直すことができる。
大事なのは、各地域が結果を活動に反映させることだが、
今回は約3割の学校が参加していない。
足並みがそろうまで、あと数年は続けるべきだ。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/22/86919/
女性は空腹を抑えにくい? 米チームが脳解析
(共同通信 2009年1月20日)
女性は、男性に比べて空腹感を抑える能力が低いとの研究結果を、
米ブルックヘブン国立研究所などのチームが、
米科学アカデミー紀要電子版に発表。
空腹時に好きな食べ物を見てもらい、脳の活動状態を調べた。
研究チームは、「女性に食べ過ぎてしまう傾向が強いという過去の研究と
矛盾がなく、女性のダイエットが成功しにくいことの根拠になるかもしれない」
実験に参加したのは、20-40代の健康で標準的な体格の男女計23人。
実験前夜の食事から17時間以上たった空腹状態で、
サンドイッチやピザなど、それぞれの好物を見たりにおいを確かめたりした。
その直後に、陽電子放射断層撮影装置(PET)で脳の状態を調べると、
男女とも通常より脳は活性化していた。
しかし、食べ物を無視したり別のことを考えたりして
空腹感を抑えるよう求めると、男性は女性と比べて感情の働きなどに
関係する「扁桃体」などの領域の活動が大幅に低下。
実際に感じる空腹感も、男性の方が少なくなっていた。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/20/86616/
女性は、男性に比べて空腹感を抑える能力が低いとの研究結果を、
米ブルックヘブン国立研究所などのチームが、
米科学アカデミー紀要電子版に発表。
空腹時に好きな食べ物を見てもらい、脳の活動状態を調べた。
研究チームは、「女性に食べ過ぎてしまう傾向が強いという過去の研究と
矛盾がなく、女性のダイエットが成功しにくいことの根拠になるかもしれない」
実験に参加したのは、20-40代の健康で標準的な体格の男女計23人。
実験前夜の食事から17時間以上たった空腹状態で、
サンドイッチやピザなど、それぞれの好物を見たりにおいを確かめたりした。
その直後に、陽電子放射断層撮影装置(PET)で脳の状態を調べると、
男女とも通常より脳は活性化していた。
しかし、食べ物を無視したり別のことを考えたりして
空腹感を抑えるよう求めると、男性は女性と比べて感情の働きなどに
関係する「扁桃体」などの領域の活動が大幅に低下。
実際に感じる空腹感も、男性の方が少なくなっていた。
http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/1/20/86616/
2009年1月27日火曜日
現場再訪(9)「大都市圏で教師」続く
(読売 1月21日)
地方の大学から大都市圏の教員をめざす傾向が続いている。
「東北出身の先生たちは評判が良く、校長が欲しがります。
皆さんの先輩がいい実績を上げてくれている。
ぜひ続いて、埼玉の子供たちに力をつけてほしい」
津軽平野に初雪が降って間もない昨年11月下旬、
埼玉県教育委員会小中学校人事課管理主事の本荘真さん(44)が、
弘前大学教育学部の学生ら約40人を前に熱弁をふるっていた。
「埼玉も田舎。関東の子供も東北と違わない」と、先入観を取り払い、
「地元と併願で、第1志望でなくてもいいから」と必死。
同大には、相前後して、さいたま市、千葉県、栃木県の各教委が説明に。
今月には、神奈川県内の学校に勤務する卒業生との懇談会も開かれた。
弘前大では2005年から、教員採用試験を受ける学生に
チャーターバスを出すなど、学生の首都圏受験を積極的に後押し。
その結果、1都3県4政令市での大学院生を含む合格者は、
05年37人、06年36人、07年45人、08年55人と近年、急増。
採用者は、06年春33人、07年春25人、08年春32人で、
急増した分、辞退者も多い。
今春もこの傾向は続く見通し。
試験に合格しても、東北地方を中心にした地元の学校で臨時講師になったり、
民間企業に就職したりする学生が多い。
同学部就職対策委員会委員長の宮崎秀一教授(55)は、
「受験自体への抵抗感は薄れてきているようだが、
最後の決断への壁は依然厚い」と痛しかゆしの表情。
説明会に出席していた片方麻衣さん(21)(3年)も、
「先輩も多く就職しており、(試験日程がずれている)出身地の岩手と
併願を検討したい」と言いつつ、「関東への抵抗感はある」と認める。
青森県の08年度教員採用倍率は16・5倍で、全国で3番目に高い。
縁故採用汚職が発覚した大分県をわずかながら上回る。
地方での正規教員就職は夢のまた夢、という状況が続いている。
一方、大量退職時代を迎えている大都市圏の倍率は、
川崎市(3・5倍)、大阪市(3・7倍)、千葉県(4・5倍)、埼玉県(5・6倍)と低い。
今春、3000人規模の採用が予想される東京都教委。
来春に向けて来月、都内の小学校を見学するバスツアー
「東京の先生になろう」を初めて開く。
東北地方の教員志望者に向けた企画。
都教委では、「大量退職はあと5年くらいは続く」
しかし、売り手市場は期間限定的でもある。
大都市圏では、私大を中心に教員養成課程の定員を増やす動きが目立つ。
児童生徒数の減少もあり、一時的な教員不足は、やがて解消されると見られ、
大都市圏でも将来、パイの奪い合いになっていく可能性がある。
「都会に行けば先生になれる」――そんな夢も、いずれは、
揺らいでしまうことになるかもしれない。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090121-OYT8T00293.htm
地方の大学から大都市圏の教員をめざす傾向が続いている。
「東北出身の先生たちは評判が良く、校長が欲しがります。
皆さんの先輩がいい実績を上げてくれている。
ぜひ続いて、埼玉の子供たちに力をつけてほしい」
津軽平野に初雪が降って間もない昨年11月下旬、
埼玉県教育委員会小中学校人事課管理主事の本荘真さん(44)が、
弘前大学教育学部の学生ら約40人を前に熱弁をふるっていた。
「埼玉も田舎。関東の子供も東北と違わない」と、先入観を取り払い、
「地元と併願で、第1志望でなくてもいいから」と必死。
同大には、相前後して、さいたま市、千葉県、栃木県の各教委が説明に。
今月には、神奈川県内の学校に勤務する卒業生との懇談会も開かれた。
弘前大では2005年から、教員採用試験を受ける学生に
チャーターバスを出すなど、学生の首都圏受験を積極的に後押し。
その結果、1都3県4政令市での大学院生を含む合格者は、
05年37人、06年36人、07年45人、08年55人と近年、急増。
採用者は、06年春33人、07年春25人、08年春32人で、
急増した分、辞退者も多い。
今春もこの傾向は続く見通し。
試験に合格しても、東北地方を中心にした地元の学校で臨時講師になったり、
民間企業に就職したりする学生が多い。
同学部就職対策委員会委員長の宮崎秀一教授(55)は、
「受験自体への抵抗感は薄れてきているようだが、
最後の決断への壁は依然厚い」と痛しかゆしの表情。
説明会に出席していた片方麻衣さん(21)(3年)も、
「先輩も多く就職しており、(試験日程がずれている)出身地の岩手と
併願を検討したい」と言いつつ、「関東への抵抗感はある」と認める。
青森県の08年度教員採用倍率は16・5倍で、全国で3番目に高い。
縁故採用汚職が発覚した大分県をわずかながら上回る。
地方での正規教員就職は夢のまた夢、という状況が続いている。
一方、大量退職時代を迎えている大都市圏の倍率は、
川崎市(3・5倍)、大阪市(3・7倍)、千葉県(4・5倍)、埼玉県(5・6倍)と低い。
今春、3000人規模の採用が予想される東京都教委。
来春に向けて来月、都内の小学校を見学するバスツアー
「東京の先生になろう」を初めて開く。
東北地方の教員志望者に向けた企画。
都教委では、「大量退職はあと5年くらいは続く」
しかし、売り手市場は期間限定的でもある。
大都市圏では、私大を中心に教員養成課程の定員を増やす動きが目立つ。
児童生徒数の減少もあり、一時的な教員不足は、やがて解消されると見られ、
大都市圏でも将来、パイの奪い合いになっていく可能性がある。
「都会に行けば先生になれる」――そんな夢も、いずれは、
揺らいでしまうことになるかもしれない。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090121-OYT8T00293.htm
インタビュー・環境戦略を語る:サッポロビール・市川淳一取締役常務
(毎日 1月19日)
サッポロビールは、製品の生産から消費までの二酸化炭素(CO2)排出量を
「カーボンフットプリント」として缶に表示した定番商品
「サッポロ生ビール黒ラベル」を、2月から北海道で試験販売。
ビール業界では世界初となる見込み。
担当の市川淳一常務に環境問題への取り組みを聞いた。
-地球温暖化問題への対応はいつから?
◆94年に「環境行動指針」を定め、CO2排出量を2010年までに
90年比で12%減らす目標。
03年にはそれを達成し、更に04年には「06年までに25%削減」という
新目標を設定し、クリアした。
現在の目標は、05年に掲げた「10年までに総量で50%、
原単位(単位生産量あたりのCO2排出量)で40%削減」。
総量は既に達成したが、原単位で40%減らすのは相当高いハードル。
-どうやって減らしてきたか。
◆工場が中心。
コージェネレーション(発電で出る熱を有効利用する)システムの導入、
廃水を微生物で分解してメタンガスを発生させ、燃料として使うといった
取り組みで、エネルギー効率を高めてきた。
容器の製造段階で出るCO2排出が多いので、
従来より小さくて軽いアルミ缶への切り替えを進めている。
物流面では、昨年から北海道でキリンビールと共同配送を始めている。
-業界唯一の「協働契約栽培」も環境と関係が。
◆麦やホップを生産する国内外の農家約2100戸と契約し、
16人の社員が出向いて栽培方法などを取り決め。
あくまでも安全性と品質のためだが、農薬使用の削減など、
環境に優しい農法につながる面も。
カーボンフットプリントの前提となる「ライフサイクルアセスメント」
(原料生産から製品の消費・廃棄までの一貫したCO2排出量算出)が
可能なのも、100%の協働契約栽培を行っているから。
-フットプリントの本格導入は?
◆時期は未定だが、試験販売を通じてお客様の反応や
購買行動への影響を調べ、本番に備える。
カーボンフットプリントは国全体の流れですが、消費者の認知度はまだ高くない。
取り組みを通じて関心を高め、環境問題に貢献する姿勢をアピールしたい。
-ビール事業以外では?
◆タイで製糖工場から出るサトウキビの搾りカスなどから
バイオエタノールを作る共同事業に参加。
静岡市では、おからやジャガイモの廃棄物からエタノールを
生産する事業を昨年から始めた。
未来のエネルギー源として期待される水素を、パン工場の廃棄物から
作り出す技術も、広島大学と共同研究。
==============
◇いちかわ・じゅんいち
早大政経卒、70年サッポロビール入社。
経営本部長などを経て07年3月から現職。
経済産業相が認定する消費生活アドバイザーの資格も持つ。61歳。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/01/19/20090119ddm008020030000c.html
サッポロビールは、製品の生産から消費までの二酸化炭素(CO2)排出量を
「カーボンフットプリント」として缶に表示した定番商品
「サッポロ生ビール黒ラベル」を、2月から北海道で試験販売。
ビール業界では世界初となる見込み。
担当の市川淳一常務に環境問題への取り組みを聞いた。
-地球温暖化問題への対応はいつから?
◆94年に「環境行動指針」を定め、CO2排出量を2010年までに
90年比で12%減らす目標。
03年にはそれを達成し、更に04年には「06年までに25%削減」という
新目標を設定し、クリアした。
現在の目標は、05年に掲げた「10年までに総量で50%、
原単位(単位生産量あたりのCO2排出量)で40%削減」。
総量は既に達成したが、原単位で40%減らすのは相当高いハードル。
-どうやって減らしてきたか。
◆工場が中心。
コージェネレーション(発電で出る熱を有効利用する)システムの導入、
廃水を微生物で分解してメタンガスを発生させ、燃料として使うといった
取り組みで、エネルギー効率を高めてきた。
容器の製造段階で出るCO2排出が多いので、
従来より小さくて軽いアルミ缶への切り替えを進めている。
物流面では、昨年から北海道でキリンビールと共同配送を始めている。
-業界唯一の「協働契約栽培」も環境と関係が。
◆麦やホップを生産する国内外の農家約2100戸と契約し、
16人の社員が出向いて栽培方法などを取り決め。
あくまでも安全性と品質のためだが、農薬使用の削減など、
環境に優しい農法につながる面も。
カーボンフットプリントの前提となる「ライフサイクルアセスメント」
(原料生産から製品の消費・廃棄までの一貫したCO2排出量算出)が
可能なのも、100%の協働契約栽培を行っているから。
-フットプリントの本格導入は?
◆時期は未定だが、試験販売を通じてお客様の反応や
購買行動への影響を調べ、本番に備える。
カーボンフットプリントは国全体の流れですが、消費者の認知度はまだ高くない。
取り組みを通じて関心を高め、環境問題に貢献する姿勢をアピールしたい。
-ビール事業以外では?
◆タイで製糖工場から出るサトウキビの搾りカスなどから
バイオエタノールを作る共同事業に参加。
静岡市では、おからやジャガイモの廃棄物からエタノールを
生産する事業を昨年から始めた。
未来のエネルギー源として期待される水素を、パン工場の廃棄物から
作り出す技術も、広島大学と共同研究。
==============
◇いちかわ・じゅんいち
早大政経卒、70年サッポロビール入社。
経営本部長などを経て07年3月から現職。
経済産業相が認定する消費生活アドバイザーの資格も持つ。61歳。
http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/01/19/20090119ddm008020030000c.html
最大のたんぱく質の構造解明 感染症・がん新薬に期待
(朝日 2009年1月16日)
兵庫県立大、大阪大のグループは、生物の細胞内で最大のたんぱく質
「ボルト」の構造を、大型放射光施設スプリング8(兵庫県佐用町)で解明。
ボルトは、細菌に対する免疫や、抗がん剤が効かなくなる仕組みに関係、
治療薬の開発に応用が期待。米科学誌サイエンスで発表。
ボルトは、1986年にネズミの肝臓から発見されたラグビーボール形の
輪郭をもつたんぱく質。脊椎動物などの細胞内にある。
分子量は、一般的なたんぱく質の100~1千倍ほどにあたる約1千万で、
知られている細胞内のたんぱく質としては最大で、詳しい形はなぞ。
兵庫県立大の月原冨武特任教授らは、
スプリング8の非常に強いX線を1分間あてることで構造を解明。
ひも状の分子が上下39本ずつ計78本寄り集まり、
つるを編み込んだ籐籠のような形に。
ボルトは、人間が緑膿菌に感染したとき、体内の免疫が菌を殺すのを助ける。
複数の抗がん剤が効かない多剤耐性のがん細胞は、
ボルトの部品であるひも状分子を大量につくることが知られている。
今回、構造が特定されたことで、ボルトの機能の研究が進み、
感染症やがんの治療効果を高める薬の開発に結びつくと期待。
http://www.asahi.com/science/update/0115/OSK200901150083.html
兵庫県立大、大阪大のグループは、生物の細胞内で最大のたんぱく質
「ボルト」の構造を、大型放射光施設スプリング8(兵庫県佐用町)で解明。
ボルトは、細菌に対する免疫や、抗がん剤が効かなくなる仕組みに関係、
治療薬の開発に応用が期待。米科学誌サイエンスで発表。
ボルトは、1986年にネズミの肝臓から発見されたラグビーボール形の
輪郭をもつたんぱく質。脊椎動物などの細胞内にある。
分子量は、一般的なたんぱく質の100~1千倍ほどにあたる約1千万で、
知られている細胞内のたんぱく質としては最大で、詳しい形はなぞ。
兵庫県立大の月原冨武特任教授らは、
スプリング8の非常に強いX線を1分間あてることで構造を解明。
ひも状の分子が上下39本ずつ計78本寄り集まり、
つるを編み込んだ籐籠のような形に。
ボルトは、人間が緑膿菌に感染したとき、体内の免疫が菌を殺すのを助ける。
複数の抗がん剤が効かない多剤耐性のがん細胞は、
ボルトの部品であるひも状分子を大量につくることが知られている。
今回、構造が特定されたことで、ボルトの機能の研究が進み、
感染症やがんの治療効果を高める薬の開発に結びつくと期待。
http://www.asahi.com/science/update/0115/OSK200901150083.html
2009年1月26日月曜日
リンカーン大統領の功績
(サイエンスポータル 2009年1月21日)
オバマ米大統領就任をめぐるニュースの中で、
リンカーン大統領をいかに尊敬しているかを示す事例が何度も紹介。
フィラデルフィアから鉄道でワシントン入りしたのも、
リンカーン大統領にならい、宣誓の時に使った聖書も同じ、などなど。
奴隷解放をめぐり国内を二分する南北戦争で勝利し、
その後いち早く国内融和に努めたリンカーン大統領に、
新大統領が特段の敬意を払うのは、十分理解できる。
リンカーン大統領が、米国の科学者、工学者を代表する機関である
全米科学アカデミーを設立した業績についてはあまり報道されていない。
全米科学アカデミーのホームページには、
設立の経緯が次のように書かれている。
全米科学アカデミーは、南北戦争のさなかの1863年3月3日、
「Act of Incorporation」にリンカーン大統領が署名し、発足。
以来、科学(science or art)に関するいかなる政府機関からの要請に対し、
研究、調査、審議、実験をして報告する任務を果たしてきた。
全米科学アカデミーは、米政府の最大でかつ最も信頼される
シンクタンクの役割を担ってきた、と自認。
オバマ大統領が、既に打った手の中で政府機関要職への科学者の重用が
挙げられている。
全米科学アカデミー自身も、6人の科学アカデミー会員が
新政権の要職にオバマ大統領から指名されたことを誇らしげに伝えている。
6人とは次の人々(かっこ内は、指名時の職)。
スティーブン・チュー・エネルギー省長官
(ローレンス・バークレー国立研究所長、ノーベル物理学賞受賞者)
ジョン・ホールドレン大統領科学顧問・科学技術政策局長(ハーバード大学教授)
ジェーン・ラブチェンコ海洋大気局長(元・国際科学会議(ICSU)会長)
ローレンス・サマーズ国家経済会議(NEC)委員長(元・ハーバード大学長)
ハロルド・バーマス大統領科学技術諮問委員会共同議長
(元・米国立衛生研究所(NIH)長、ノーベル医学生理学賞受賞者)
エリク・ランダー大統領科学技術諮問委員会共同議長(ハーバード大学教授)
こうした全米科学アカデミーの実績、役割と比較して、
日本学術会議と政府との関係はどうだろうか。
首相、主要閣僚、日本学術会議会長を含む有識者から成る
総合科学技術会議が、科学技術政策の優先順位を決めるという
仕組みはできている。
しかし、議論のもとになる調査・審議データはだれがつくっているのか。
各省がそれぞれ一本釣りした研究者たちでつくる審議会などで
検討したものを参考に、それぞれの省が用意したものが
基礎資料になっているのが実情。
各省が、自分たちの都合で集めた人たちから成る審議会は、
真の第3者機関とは言えまい。
各省の意向に真っ向から反する審議結果は出しにくいはず、と
国民の多くが思うのは当然。
政府が政策決定に必要とする研究、調査、審議などは原則、
第3者的色合いがはっきりしている日本学術会議が引き受けるべき。
全米科学アカデミーと米政府との関係のように。
金澤一郎・日本学術会議会長の答えは、
「今さまざまな審議会が果たしている役割は、
学術会議が引き受けるのが本来の姿だとは思うが、
いま、すべて学術会議にやってほしい、そのための予算も付ける、
と言われたら対応できない。相当大変な作業になるから」
60年前に学術会議ができたときに、当時の文部省は
文教予算の配分を学術会議に任せた。
その後、文部省の下に学術審議会ができ、
学術会議と文部省も仲違いしてしまった。
いろいろな審議会ができてきたのも、予算の配分権が
学術会議から離れたころから―という過去の経緯について
説明があったうえで述べられた現状認識。
「鶏が先か卵が先かという話」(金澤会長)で、
一挙に現状を変えるのは困難。
現在の仕組みを一挙に変えるのは難しいが、
改善する必要があるものの一つに、大きな予算を必要とする研究課題。
宇宙開発や大型加速器を必要とする素粒子研究といった研究分野に、
どこまで国の予算をつぎ込むか、
具体的に提案された研究プロジェクトが
日本として本当にやる価値があるかどうか。
こうした問題について、その分野の研究者だけでなく、アカデミーとして
もっと意見を言うべきではないか。
金澤会長が認めるように、結局、大型プロジェクトをやりたい研究者は
直接政治家に直談判した方がよい結果を得る早道となっている現実がある。
この分野だけにそこまで国費を投入する必要はないのでは、
という声が他の分野の研究者からは出てこない、
出そうと思っても出す場がないということ。
一方、科学技術政策を立案、決定するうえで大きな役割を果たしてきた
官僚側には、現状の日本学術会議に対する期待は非常に小さいのが現実。
研究者主導で、科学技術政策の立案、調整、優先度付けなどできるわけがない、
と恐らく思っている。
例えば宇宙開発についてなら、宇宙開発委員会が自ら分科会を設けるなどして、
十分、審議、検討しているから問題ないと言うだろう。
しかし、分科会の構成などは、宇宙開発委員と事務局である官僚が決める。
真の第3者機関といえるか疑わしい。
アカデミーがもっと影響力を持つべきだと考える一般国民は多い。
日本学術会議の役割を大きくすることを、
学術会議自身は当然のこととして、皆がもっと考えてよいのではないか。
http://www.scienceportal.jp/news/review/0901/0901211.html
オバマ米大統領就任をめぐるニュースの中で、
リンカーン大統領をいかに尊敬しているかを示す事例が何度も紹介。
フィラデルフィアから鉄道でワシントン入りしたのも、
リンカーン大統領にならい、宣誓の時に使った聖書も同じ、などなど。
奴隷解放をめぐり国内を二分する南北戦争で勝利し、
その後いち早く国内融和に努めたリンカーン大統領に、
新大統領が特段の敬意を払うのは、十分理解できる。
リンカーン大統領が、米国の科学者、工学者を代表する機関である
全米科学アカデミーを設立した業績についてはあまり報道されていない。
全米科学アカデミーのホームページには、
設立の経緯が次のように書かれている。
全米科学アカデミーは、南北戦争のさなかの1863年3月3日、
「Act of Incorporation」にリンカーン大統領が署名し、発足。
以来、科学(science or art)に関するいかなる政府機関からの要請に対し、
研究、調査、審議、実験をして報告する任務を果たしてきた。
全米科学アカデミーは、米政府の最大でかつ最も信頼される
シンクタンクの役割を担ってきた、と自認。
オバマ大統領が、既に打った手の中で政府機関要職への科学者の重用が
挙げられている。
全米科学アカデミー自身も、6人の科学アカデミー会員が
新政権の要職にオバマ大統領から指名されたことを誇らしげに伝えている。
6人とは次の人々(かっこ内は、指名時の職)。
スティーブン・チュー・エネルギー省長官
(ローレンス・バークレー国立研究所長、ノーベル物理学賞受賞者)
ジョン・ホールドレン大統領科学顧問・科学技術政策局長(ハーバード大学教授)
ジェーン・ラブチェンコ海洋大気局長(元・国際科学会議(ICSU)会長)
ローレンス・サマーズ国家経済会議(NEC)委員長(元・ハーバード大学長)
ハロルド・バーマス大統領科学技術諮問委員会共同議長
(元・米国立衛生研究所(NIH)長、ノーベル医学生理学賞受賞者)
エリク・ランダー大統領科学技術諮問委員会共同議長(ハーバード大学教授)
こうした全米科学アカデミーの実績、役割と比較して、
日本学術会議と政府との関係はどうだろうか。
首相、主要閣僚、日本学術会議会長を含む有識者から成る
総合科学技術会議が、科学技術政策の優先順位を決めるという
仕組みはできている。
しかし、議論のもとになる調査・審議データはだれがつくっているのか。
各省がそれぞれ一本釣りした研究者たちでつくる審議会などで
検討したものを参考に、それぞれの省が用意したものが
基礎資料になっているのが実情。
各省が、自分たちの都合で集めた人たちから成る審議会は、
真の第3者機関とは言えまい。
各省の意向に真っ向から反する審議結果は出しにくいはず、と
国民の多くが思うのは当然。
政府が政策決定に必要とする研究、調査、審議などは原則、
第3者的色合いがはっきりしている日本学術会議が引き受けるべき。
全米科学アカデミーと米政府との関係のように。
金澤一郎・日本学術会議会長の答えは、
「今さまざまな審議会が果たしている役割は、
学術会議が引き受けるのが本来の姿だとは思うが、
いま、すべて学術会議にやってほしい、そのための予算も付ける、
と言われたら対応できない。相当大変な作業になるから」
60年前に学術会議ができたときに、当時の文部省は
文教予算の配分を学術会議に任せた。
その後、文部省の下に学術審議会ができ、
学術会議と文部省も仲違いしてしまった。
いろいろな審議会ができてきたのも、予算の配分権が
学術会議から離れたころから―という過去の経緯について
説明があったうえで述べられた現状認識。
「鶏が先か卵が先かという話」(金澤会長)で、
一挙に現状を変えるのは困難。
現在の仕組みを一挙に変えるのは難しいが、
改善する必要があるものの一つに、大きな予算を必要とする研究課題。
宇宙開発や大型加速器を必要とする素粒子研究といった研究分野に、
どこまで国の予算をつぎ込むか、
具体的に提案された研究プロジェクトが
日本として本当にやる価値があるかどうか。
こうした問題について、その分野の研究者だけでなく、アカデミーとして
もっと意見を言うべきではないか。
金澤会長が認めるように、結局、大型プロジェクトをやりたい研究者は
直接政治家に直談判した方がよい結果を得る早道となっている現実がある。
この分野だけにそこまで国費を投入する必要はないのでは、
という声が他の分野の研究者からは出てこない、
出そうと思っても出す場がないということ。
一方、科学技術政策を立案、決定するうえで大きな役割を果たしてきた
官僚側には、現状の日本学術会議に対する期待は非常に小さいのが現実。
研究者主導で、科学技術政策の立案、調整、優先度付けなどできるわけがない、
と恐らく思っている。
例えば宇宙開発についてなら、宇宙開発委員会が自ら分科会を設けるなどして、
十分、審議、検討しているから問題ないと言うだろう。
しかし、分科会の構成などは、宇宙開発委員と事務局である官僚が決める。
真の第3者機関といえるか疑わしい。
アカデミーがもっと影響力を持つべきだと考える一般国民は多い。
日本学術会議の役割を大きくすることを、
学術会議自身は当然のこととして、皆がもっと考えてよいのではないか。
http://www.scienceportal.jp/news/review/0901/0901211.html
現場再訪(8)児童獲得 一定の効果
(読売 1月17日)
学校選択制で新入生ゼロを経験した学校は、どう変わったのか。
緑豊かな山々に囲まれた大分県豊後高田市立臼野小学校で
昨年12月中旬、5、6年生25人が月1回のクラブ活動に取り組んでいた。
その輪の中に、地域サポーターと呼ばれる住民の姿が見える。
「創作活動」、「ダンス」、「野外活動」の3班に各1~2人ずつ、
忙しそうに動き回っている。
「創作活動」の班でビーズ作りを教えていた主婦瀬口亜紀さん(35)は、
「子供のために力になりたいと思って」と、趣味のビーズ作りで協力を申し出た。
作品を見せに来る児童に、「いまいちかな」、「上手上手」と声をかける。
野外活動担当の遠山小次郎さん(69)は、
「卒業生が道端で、『遠山のおじちゃん』と声をかけてくれるのがうれしくて」
と笑顔を見せる。
サポーターは30~70代の20人で、ほぼ全員が卒業生とあって、
「『自分の学校』という意識で支援してくれる。ありがたい」と大嶽由美子校長(59)。
図工や家庭科の授業にも参加する。
同小は、旧真玉町が2005年に豊後高田市と合併したことで、
学校選択制の波にのみ込まれた。
初年度の入学者はゼロ。
校区内にいた5人の対象者全員が、規模が大きい隣の市立真玉小を選んだ。
サポーター制は翌06年度から導入。
同年度以降は対象者6人中2人、5人中4人、7人中4人が臼野小に入学。
「迷う親に、地域サポーターが声かけをしている。
その一定の効果はあったのだろう」と大嶽校長は振り返る。
それでも、現児童数は35人。
もう少し大きい学校で学ばせたい、という保護者の希望は強い。
このため、規模の大きい学校に児童が出向く共同学習の時間を設け、
テレビ電話での他校との交流も企画する。
国立中や私立中が多い東京都文京区。
地元の区立小学校から区立中に進むのは、半数という土地柄。
区立第七中学校の生徒数33人は、島嶼部を除く都内で生徒が最少。
学校選択制の導入2年目の04年度には、新入生がゼロに。
当時、保護者による学校支援組織ができて、
学校紹介のミニコミ紙を作る活動もした。
だが、今春には生徒数111人の区立第五中学校と統合されて
音羽中学校になる。
七中の鶴見保憲校長(58)は、「学校がなくなるというより、
リニューアル(刷新)だから」と前向き。
新校では、数学、理科、英語での習熟度別の少人数授業の実施や、
お茶の水女子大学と連携した授業など、特色ある教育活動が計画。
生徒会は、ひと足早く合同で発足し、音羽中をPRするニュースの発行や、
近隣小学校への訪問活動も展開。
こうした活動も功を奏し、入学希望者は、予想の2倍を超える約230人。
最終的に何人が音羽中を選ぶかはわからないが、
「地域やPTAと協力して特色を出していくしかない」。
鶴見校長はそう強調した。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090117-OYT8T00233.htm
学校選択制で新入生ゼロを経験した学校は、どう変わったのか。
緑豊かな山々に囲まれた大分県豊後高田市立臼野小学校で
昨年12月中旬、5、6年生25人が月1回のクラブ活動に取り組んでいた。
その輪の中に、地域サポーターと呼ばれる住民の姿が見える。
「創作活動」、「ダンス」、「野外活動」の3班に各1~2人ずつ、
忙しそうに動き回っている。
「創作活動」の班でビーズ作りを教えていた主婦瀬口亜紀さん(35)は、
「子供のために力になりたいと思って」と、趣味のビーズ作りで協力を申し出た。
作品を見せに来る児童に、「いまいちかな」、「上手上手」と声をかける。
野外活動担当の遠山小次郎さん(69)は、
「卒業生が道端で、『遠山のおじちゃん』と声をかけてくれるのがうれしくて」
と笑顔を見せる。
サポーターは30~70代の20人で、ほぼ全員が卒業生とあって、
「『自分の学校』という意識で支援してくれる。ありがたい」と大嶽由美子校長(59)。
図工や家庭科の授業にも参加する。
同小は、旧真玉町が2005年に豊後高田市と合併したことで、
学校選択制の波にのみ込まれた。
初年度の入学者はゼロ。
校区内にいた5人の対象者全員が、規模が大きい隣の市立真玉小を選んだ。
サポーター制は翌06年度から導入。
同年度以降は対象者6人中2人、5人中4人、7人中4人が臼野小に入学。
「迷う親に、地域サポーターが声かけをしている。
その一定の効果はあったのだろう」と大嶽校長は振り返る。
それでも、現児童数は35人。
もう少し大きい学校で学ばせたい、という保護者の希望は強い。
このため、規模の大きい学校に児童が出向く共同学習の時間を設け、
テレビ電話での他校との交流も企画する。
国立中や私立中が多い東京都文京区。
地元の区立小学校から区立中に進むのは、半数という土地柄。
区立第七中学校の生徒数33人は、島嶼部を除く都内で生徒が最少。
学校選択制の導入2年目の04年度には、新入生がゼロに。
当時、保護者による学校支援組織ができて、
学校紹介のミニコミ紙を作る活動もした。
だが、今春には生徒数111人の区立第五中学校と統合されて
音羽中学校になる。
七中の鶴見保憲校長(58)は、「学校がなくなるというより、
リニューアル(刷新)だから」と前向き。
新校では、数学、理科、英語での習熟度別の少人数授業の実施や、
お茶の水女子大学と連携した授業など、特色ある教育活動が計画。
生徒会は、ひと足早く合同で発足し、音羽中をPRするニュースの発行や、
近隣小学校への訪問活動も展開。
こうした活動も功を奏し、入学希望者は、予想の2倍を超える約230人。
最終的に何人が音羽中を選ぶかはわからないが、
「地域やPTAと協力して特色を出していくしかない」。
鶴見校長はそう強調した。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090117-OYT8T00233.htm
ジストニア筋収縮症状の原因メカニズム解明
(サイエンスポータル 2009年1月20日)
体の筋肉が勝手に収縮を起こし、意思通りに体を動かすことが
できなくなってしまう神経難病「ジストニア」は、
大脳基底核から発する信号の異常によって起きることを、
自然科学機構・生理学研究所の研究者たちが突き止めた。
知見聡美・助教、南部篤・教授と米マウントサイナイ医科大の
プラニパリ・シャシドハラン博士らは、
ヒトのジストニアの原因遺伝子を組み込んで新たに開発したモデルマウスを使い、
脳の中の神経細胞の働きをマウスが覚醒した状態で調べた。
正常なマウスは、運動の司令塔である大脳皮質運動野から
適切なタイミングと強さの信号が出ることで、筋肉が正常な動きをする。
この運動野の働きを調節しているのが大脳基底核で、
運動野の活動を抑える信号の強さを変えることで、
運動野が出す運動の指令の強さやタイミングの調節を行っている。
モデルマウスによる研究の結果、大脳基底核からの信号に異常が見つかり、
不必要で意図しない筋肉の運動を抑える仕組みが弱まっていた。
研究チームは、これが本人の意図しない筋収縮を生じさせる
根本的なメカニズムとみている。
モデルマウスによる研究をさらに進めれば、
新たなジストニアの治療法開発につながる。
ジストニアは、国内で約2万人の患者がおり、薬物や手術による治療が
行われているが、根本的な治療法はまだ見つかっていない。
http://www.scienceportal.jp/news/daily/0901/0901201.html
体の筋肉が勝手に収縮を起こし、意思通りに体を動かすことが
できなくなってしまう神経難病「ジストニア」は、
大脳基底核から発する信号の異常によって起きることを、
自然科学機構・生理学研究所の研究者たちが突き止めた。
知見聡美・助教、南部篤・教授と米マウントサイナイ医科大の
プラニパリ・シャシドハラン博士らは、
ヒトのジストニアの原因遺伝子を組み込んで新たに開発したモデルマウスを使い、
脳の中の神経細胞の働きをマウスが覚醒した状態で調べた。
正常なマウスは、運動の司令塔である大脳皮質運動野から
適切なタイミングと強さの信号が出ることで、筋肉が正常な動きをする。
この運動野の働きを調節しているのが大脳基底核で、
運動野の活動を抑える信号の強さを変えることで、
運動野が出す運動の指令の強さやタイミングの調節を行っている。
モデルマウスによる研究の結果、大脳基底核からの信号に異常が見つかり、
不必要で意図しない筋肉の運動を抑える仕組みが弱まっていた。
研究チームは、これが本人の意図しない筋収縮を生じさせる
根本的なメカニズムとみている。
モデルマウスによる研究をさらに進めれば、
新たなジストニアの治療法開発につながる。
ジストニアは、国内で約2万人の患者がおり、薬物や手術による治療が
行われているが、根本的な治療法はまだ見つかっていない。
http://www.scienceportal.jp/news/daily/0901/0901201.html
2009年1月25日日曜日
現場再訪(7)いじめ 教委「変わった」
(読売 1月16日)
いじめ苦による自殺が起きた教育委員会は、どう変わったのか。
「きちんと受け止めて、対応していかなくてはならない」
北海道滝川市の教育委員会議で、若松重義委員長(68)が呼びかけた。
いじめを苦にした自殺で亡くなった小学6年生の女児(当時12歳)の母親が、
市と道を相手に提訴したという報告を受けた言葉。
女児は2005年9月9日、いじめを訴える遺書を残して自殺を図り、
06年1月に亡くなったが、市教委は同年10月の本紙報道まで
いじめの記述があったことを隠していた。
「当時は委員になったばかりで受け身だった。
深く追及できず、反省している」と篠島恵理子さん(58)。
当時から唯一残る委員で、地元の医院の事務長。
問題発覚後に、教育長と委員長が辞任するなど、他の委員4人は交代、
07年10月には「委員会を活性化したかった」(小田真人教育長)として、
中学生の生徒を持つ40歳代の保護者が加わった。
「委員会は変わった」と篠島さんは感じている。
年間で小中学校1校ずつだけだった委員の学校訪問は、全11校に拡大。
事務局の提案の追認になりがちな教育委員会議の後、
自由な意見交換ができる「協議会」も開く。
各校から毎月、いじめの報告も。
「いじめは、どこでも起こりうると考えないといけない。
今は、最善の努力をさせてもらっている」と若松委員長。
女児の祖母の兄、木幡幸雄さん(61)は
「形を整えただけで、本質的には変わっていない」と厳しい見方を崩さない。
訴訟では、市がいじめを防ぐ義務を怠った、真相解明が不十分などと訴えている。
06年10月11日には、福岡県筑前町立三輪中学校2年の
森啓祐君(当時13歳)が自殺した。
遺書の中でいじめを訴え、後に1年時の担任の言動が
生徒間のいじめに発展したことも判明。
「学校では、いじめ対策が漫然となされており、町教委にも努力が欠けていた」
町教委の調査委員会の最終報告書は、
学校の責任とともに町教委の責任について触れた。
中原敏隆教育長(69)は、「結果的に周りは誰も気付かなかった。
教育の充実した学校と評価していたが、対策が足らなかった」と戒める。
昨年12月、町は「子どもの権利条例」を制定した。
いじめなどの問題が起きた場合、弁護士らによる救済委員会を作り、
解決にあたる。指導主事1人が増員され、昨春には、いじめの相談窓口などを
設けた「こども未来センター」も開所。
町全体で、いじめをなくす姿勢を示している。
教育委員も、月1回程度は学校訪問するようになるなど、
「真剣に学校現場に向き合うようになってきた」と
内装業を営む柿原紀也委員長(47)。
父親の森順二さん(42)は、「真実を見ようとしないといじめはなくならない」とし、
具体的ないじめの内容が、今も分からないことに釈然としない思いを抱く。
教育委員会には、尊い命をなくしたことに
本気で向き合い続ける姿勢が求められている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090116-OYT8T00288.htm
いじめ苦による自殺が起きた教育委員会は、どう変わったのか。
「きちんと受け止めて、対応していかなくてはならない」
北海道滝川市の教育委員会議で、若松重義委員長(68)が呼びかけた。
いじめを苦にした自殺で亡くなった小学6年生の女児(当時12歳)の母親が、
市と道を相手に提訴したという報告を受けた言葉。
女児は2005年9月9日、いじめを訴える遺書を残して自殺を図り、
06年1月に亡くなったが、市教委は同年10月の本紙報道まで
いじめの記述があったことを隠していた。
「当時は委員になったばかりで受け身だった。
深く追及できず、反省している」と篠島恵理子さん(58)。
当時から唯一残る委員で、地元の医院の事務長。
問題発覚後に、教育長と委員長が辞任するなど、他の委員4人は交代、
07年10月には「委員会を活性化したかった」(小田真人教育長)として、
中学生の生徒を持つ40歳代の保護者が加わった。
「委員会は変わった」と篠島さんは感じている。
年間で小中学校1校ずつだけだった委員の学校訪問は、全11校に拡大。
事務局の提案の追認になりがちな教育委員会議の後、
自由な意見交換ができる「協議会」も開く。
各校から毎月、いじめの報告も。
「いじめは、どこでも起こりうると考えないといけない。
今は、最善の努力をさせてもらっている」と若松委員長。
女児の祖母の兄、木幡幸雄さん(61)は
「形を整えただけで、本質的には変わっていない」と厳しい見方を崩さない。
訴訟では、市がいじめを防ぐ義務を怠った、真相解明が不十分などと訴えている。
06年10月11日には、福岡県筑前町立三輪中学校2年の
森啓祐君(当時13歳)が自殺した。
遺書の中でいじめを訴え、後に1年時の担任の言動が
生徒間のいじめに発展したことも判明。
「学校では、いじめ対策が漫然となされており、町教委にも努力が欠けていた」
町教委の調査委員会の最終報告書は、
学校の責任とともに町教委の責任について触れた。
中原敏隆教育長(69)は、「結果的に周りは誰も気付かなかった。
教育の充実した学校と評価していたが、対策が足らなかった」と戒める。
昨年12月、町は「子どもの権利条例」を制定した。
いじめなどの問題が起きた場合、弁護士らによる救済委員会を作り、
解決にあたる。指導主事1人が増員され、昨春には、いじめの相談窓口などを
設けた「こども未来センター」も開所。
町全体で、いじめをなくす姿勢を示している。
教育委員も、月1回程度は学校訪問するようになるなど、
「真剣に学校現場に向き合うようになってきた」と
内装業を営む柿原紀也委員長(47)。
父親の森順二さん(42)は、「真実を見ようとしないといじめはなくならない」とし、
具体的ないじめの内容が、今も分からないことに釈然としない思いを抱く。
教育委員会には、尊い命をなくしたことに
本気で向き合い続ける姿勢が求められている。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090116-OYT8T00288.htm
スポーツ21世紀:新しい波/290 武道の必修化/8
(毎日 1月17日)
国体実施競技の再編で、なぎなたは13年の東京国体から
「隔年実施」に決まった。
日本体育協会が、各競技の競技者数など多くの要素を得点化し、
ランク付けをした結果、下位のなぎなた、銃剣道、軟式野球、
トライアスロンが隔年競技となった。
新競技のトライアスロンを除けば、3競技は事実上の「格下げ」。
「スポーツの祭典である国体は、競技を広く知ってもらう大切な場。
隔年実施となることを、私たちは深刻に受け止めている」
全日本なぎなた連盟で技術委員などを務める福田啓子さん(皇学館大非常勤講師)。
なぎなたは、女性の武道として発展してきたが、
近年、中高生の競技人口は漸減傾向に。
昨年7月に秋田県で開かれた全国中学生大会の参加者は、
前年より109人少ない229人で、過去16大会で最少。
全国高校体育連盟のなぎなた専門部に登録している人数も、
昨年は過去10年で最少となる1401人(175校)。
少子化が進む中、12年度から始まる中学校1、2年生の武道必修化は、
競技普及のきっかけになり、男性競技者の拡大にもつながると期待。
しかし、新学習指導要領は武道の授業は柔道、剣道、相撲の中から
選択すると定め、なぎなたなど他の武道は学校や地域の実態に応じて
選択することができる、と位置づける。
学校に選んでもらわなければ、授業では実施されない。
全日本なぎなた連盟では、武道必修化に向けたプロジェクトチームを組み、
競技団体としてどう取り組むかを話し合ってきた。
福田さんは、「なぎなたの指導者がいる中学校を連盟がチェックし、
その学校の校長に授業で採用してもらえるようアピールする必要がある。
男女別や年齢別での指導法の確立や、
連盟から学校への指導者派遣も求められる」
次代を担う若者への普及は、競技の将来を左右するだけに、
学校の正課になる意義は大きい。
学校教育の枠を超え、競技団体も本腰を入れ始めている。
http://mainichi.jp/enta/sports/21century/
国体実施競技の再編で、なぎなたは13年の東京国体から
「隔年実施」に決まった。
日本体育協会が、各競技の競技者数など多くの要素を得点化し、
ランク付けをした結果、下位のなぎなた、銃剣道、軟式野球、
トライアスロンが隔年競技となった。
新競技のトライアスロンを除けば、3競技は事実上の「格下げ」。
「スポーツの祭典である国体は、競技を広く知ってもらう大切な場。
隔年実施となることを、私たちは深刻に受け止めている」
全日本なぎなた連盟で技術委員などを務める福田啓子さん(皇学館大非常勤講師)。
なぎなたは、女性の武道として発展してきたが、
近年、中高生の競技人口は漸減傾向に。
昨年7月に秋田県で開かれた全国中学生大会の参加者は、
前年より109人少ない229人で、過去16大会で最少。
全国高校体育連盟のなぎなた専門部に登録している人数も、
昨年は過去10年で最少となる1401人(175校)。
少子化が進む中、12年度から始まる中学校1、2年生の武道必修化は、
競技普及のきっかけになり、男性競技者の拡大にもつながると期待。
しかし、新学習指導要領は武道の授業は柔道、剣道、相撲の中から
選択すると定め、なぎなたなど他の武道は学校や地域の実態に応じて
選択することができる、と位置づける。
学校に選んでもらわなければ、授業では実施されない。
全日本なぎなた連盟では、武道必修化に向けたプロジェクトチームを組み、
競技団体としてどう取り組むかを話し合ってきた。
福田さんは、「なぎなたの指導者がいる中学校を連盟がチェックし、
その学校の校長に授業で採用してもらえるようアピールする必要がある。
男女別や年齢別での指導法の確立や、
連盟から学校への指導者派遣も求められる」
次代を担う若者への普及は、競技の将来を左右するだけに、
学校の正課になる意義は大きい。
学校教育の枠を超え、競技団体も本腰を入れ始めている。
http://mainichi.jp/enta/sports/21century/
宇宙医学が骨粗しょう症患者を救う
(日経 2008-11-07)
若田光一さんは、日本人宇宙飛行士として初めて宇宙ステーションに長期滞在。
今回は3カ月以上となる見通し。
これは、“ 宇宙の骨粗しょう症”予防など宇宙医学の新たな挑戦。
宇宙飛行士たちの元気な笑顔を見ると、
厳しい訓練を経てようやく行ける世界であることを忘れがちだが、
宇宙空間は人体に様々な影響を及ぼす、やっかいな場所。
深刻なものの1つが、国内患者数1200万人ともいわれる骨粗しょう症の宇宙版。
骨からカルシウムが抜けて弱くなる骨量の減少。
カルシウム排出が増えて尿路結石になる恐れも。
長期滞在で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と米航空宇宙局(NASA)は
初めて薬による予防効果を調べる。
その最初の参加者が若田さん。
骨は、一部を壊し、新しく作り直すというスクラップ・アンド・ビルドを繰り返し。
壊す係は破骨細胞、作る係は骨芽細胞。
閉経後の女性に多い地上の骨粗しょう症は、女性ホルモンが減った影響で
破骨細胞が活発になるなどして、作るよりも壊す方が多くなって起きる。
宇宙の微小重力環境では、体の重みが骨にかかる力の刺激が
ほとんどなくなる影響で、作るよりも壊す方が多くなる。
骨に力をかけることは、カルシウムの沈着に必要な刺激。
地上の骨粗しょう症でも、予防には運動が大切。
宇宙では筋肉も弱くなるので、宇宙飛行士は自転車エルゴメーターや
トレッドミルなどによる運動が欠かせない。
それでも骨量の減少は激しい。
JAXA・宇宙医学生物学研究室の大島博主幹研究員によると、
地上の骨粗しょう症では骨量が年に1—1.5%ほど減るのに対し、
宇宙ではこれが毎月、12倍ものペースで進む。
宇宙に6カ月滞在した場合、地上に帰ってから骨が元の状態に
回復するまで3—4年かかる。
予防効果を調べるのは、「ビスフォスフォネート」という薬。
破骨細胞の働きを抑制する、地上の骨粗しょう症治療ではもっとも有力な薬。
今回は、週に1回服用する飲み薬の予定。
より長期間効果が続く注射薬も、将来試される可能性がある。
長期滞在ではもう1つ、心電図を24時間取り続ける携帯型の医療機器、
ホルター心電計を使う遠隔医療の実験にも取り組む。
将来は、生体リズムの研究につなげる計画。
宇宙ステーションは約90分で地球を1周しており、
地上のような太陽の強い光による昼と夜の24時間周期がない。
これが体調に影響している恐れがある。
薬にせよ、心電計にせよ、地上と同様に宇宙でもうまく働く保証はない。
薬の作用が違うかもしれないし、精密な医療機器は打ち上げ時の振動や
強い宇宙線に耐えなければならない。
宇宙医学の積み重ねの先には、一般的な医療への幅広い応用が見込み。
骨粗しょう症は、「宇宙では時間を加速してテストしているようなもの。
薬や運動による効果の知識を地上の予防医学に生かせる」と
大島主幹研究員は期待。
高齢者や長時間勤労者の健康管理、ストレス対策、医師不足に対応した
遠隔地医療や災害医療などへの応用も期待。
一般の人でも気軽に安全に宇宙旅行を楽しめるようになる—
というのは気が早いが、日本の宇宙実験棟「きぼう」では
医学・生物学的な実験も予定。
この分野がどのぐらいの可能性を秘めているのか、科学的な興味は尽きない。
宇宙は、医学でもフロンティアを開くだろうか。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec081105.html
若田光一さんは、日本人宇宙飛行士として初めて宇宙ステーションに長期滞在。
今回は3カ月以上となる見通し。
これは、“ 宇宙の骨粗しょう症”予防など宇宙医学の新たな挑戦。
宇宙飛行士たちの元気な笑顔を見ると、
厳しい訓練を経てようやく行ける世界であることを忘れがちだが、
宇宙空間は人体に様々な影響を及ぼす、やっかいな場所。
深刻なものの1つが、国内患者数1200万人ともいわれる骨粗しょう症の宇宙版。
骨からカルシウムが抜けて弱くなる骨量の減少。
カルシウム排出が増えて尿路結石になる恐れも。
長期滞在で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と米航空宇宙局(NASA)は
初めて薬による予防効果を調べる。
その最初の参加者が若田さん。
骨は、一部を壊し、新しく作り直すというスクラップ・アンド・ビルドを繰り返し。
壊す係は破骨細胞、作る係は骨芽細胞。
閉経後の女性に多い地上の骨粗しょう症は、女性ホルモンが減った影響で
破骨細胞が活発になるなどして、作るよりも壊す方が多くなって起きる。
宇宙の微小重力環境では、体の重みが骨にかかる力の刺激が
ほとんどなくなる影響で、作るよりも壊す方が多くなる。
骨に力をかけることは、カルシウムの沈着に必要な刺激。
地上の骨粗しょう症でも、予防には運動が大切。
宇宙では筋肉も弱くなるので、宇宙飛行士は自転車エルゴメーターや
トレッドミルなどによる運動が欠かせない。
それでも骨量の減少は激しい。
JAXA・宇宙医学生物学研究室の大島博主幹研究員によると、
地上の骨粗しょう症では骨量が年に1—1.5%ほど減るのに対し、
宇宙ではこれが毎月、12倍ものペースで進む。
宇宙に6カ月滞在した場合、地上に帰ってから骨が元の状態に
回復するまで3—4年かかる。
予防効果を調べるのは、「ビスフォスフォネート」という薬。
破骨細胞の働きを抑制する、地上の骨粗しょう症治療ではもっとも有力な薬。
今回は、週に1回服用する飲み薬の予定。
より長期間効果が続く注射薬も、将来試される可能性がある。
長期滞在ではもう1つ、心電図を24時間取り続ける携帯型の医療機器、
ホルター心電計を使う遠隔医療の実験にも取り組む。
将来は、生体リズムの研究につなげる計画。
宇宙ステーションは約90分で地球を1周しており、
地上のような太陽の強い光による昼と夜の24時間周期がない。
これが体調に影響している恐れがある。
薬にせよ、心電計にせよ、地上と同様に宇宙でもうまく働く保証はない。
薬の作用が違うかもしれないし、精密な医療機器は打ち上げ時の振動や
強い宇宙線に耐えなければならない。
宇宙医学の積み重ねの先には、一般的な医療への幅広い応用が見込み。
骨粗しょう症は、「宇宙では時間を加速してテストしているようなもの。
薬や運動による効果の知識を地上の予防医学に生かせる」と
大島主幹研究員は期待。
高齢者や長時間勤労者の健康管理、ストレス対策、医師不足に対応した
遠隔地医療や災害医療などへの応用も期待。
一般の人でも気軽に安全に宇宙旅行を楽しめるようになる—
というのは気が早いが、日本の宇宙実験棟「きぼう」では
医学・生物学的な実験も予定。
この分野がどのぐらいの可能性を秘めているのか、科学的な興味は尽きない。
宇宙は、医学でもフロンティアを開くだろうか。
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec081105.html
2009年1月24日土曜日
現場再訪(6)「地域枠」医学生 高い意欲
(読売 1月15日)
地元優先枠で入った医学生が、へき地医療に熱意を持ち始めた。
「将来は、医師になってこの島に戻ってきます」
島根大医学部3年の高梨俊洋さん(20)が力強く語ると、拍手が巻き起こった。
島根県隠岐の島町で、昨年10月に開かれた「地域医療教育シンポジウム」。
パネリストの一人、高梨さんは地元出身。
町で授産施設を運営する斎藤矗一さん(67)は、
「島に帰ってきてくれれば本当にうれしい。崩壊寸前の離島の医療を支えてほしい」
人口約1万6300人の町では、昨年4月から四つの診療所のうち
一つが医師不在になった。
町のテコ入れで半年後に確保したものの、
今春には別の診療所の医師がいなくなる。
中核病院・隠岐病院の産科医は一人で、危険を伴うお産はできない。
高梨さんは、そんな大変さをよく知るだけに、「一日でも早く貢献したい」と意欲。
県内唯一の医師養成機関である同大医学部が、2006年度から導入した
「地域枠」入試の1期生。
受験には、へき地の医療機関などでの研修と、出身地の首長の推薦が必要。
受験できるのは、松江市と出雲市の都市部などを除く県内出身者。
導入から3年がたち、学士入学を含めて32人が学んでいる。
地域枠の学生に将来、へき地の医療機関に勤務する義務はない。
だが「思いは伝わっている。受験段階で地域医療の実情の厳しさを見ており、
地元からの期待も感じている。地域に貢献したいという意欲はとても高い」
と木下芳一医学部長(53)。
授業内容は一般学生と変わらないが、春夏の長期休暇中に、
県内の医療機関で行う医療体験実習への参加を強く勧めている。
数日間、来院患者の案内や補助、診察の様子を観察し、
勤務医から話を聞く内容で、実際に地域枠の学生の参加率は高い。
県中央部、大田市出身の岡田祐介さん(20)(2年)は昨夏、
隠岐諸島・西ノ島の病院で実習。
「古里が好きだし、古里に貢献したいと改めて思った。
実習を通して、勉強の意欲も高まった」
ただ、地域にとどまらず、高度な医療を学んで能力を高めたいという
声があるのも事実。
「島根で働きたい気持ちは変わらないが、理想の医師像はまだ見えない。
他県の先進地域に行って、様々なことを身につけたい」と3年の山口祐貴さん(21)。
地域枠の学生を担当する地域医療教育学講座の熊倉俊一教授(48)は、
「医師が高度な医療技術を身につけることは、地域住民にも大切なことだ」
島根県では、県内のへき地に一定期間勤務した後、
大学病院や都市部の基幹病院に一時的に移り、
大学での研究に従事できる仕組み作りも始まっている。
全国的な問題になっている都市部とへき地の医療格差。
「医師不足の地域で働く医師を育てるモデルを作るには、
10年、20年先を見越す必要がある」(木下医学部長)。
息の長い取り組みが続く。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090115-OYT8T00225.htm
地元優先枠で入った医学生が、へき地医療に熱意を持ち始めた。
「将来は、医師になってこの島に戻ってきます」
島根大医学部3年の高梨俊洋さん(20)が力強く語ると、拍手が巻き起こった。
島根県隠岐の島町で、昨年10月に開かれた「地域医療教育シンポジウム」。
パネリストの一人、高梨さんは地元出身。
町で授産施設を運営する斎藤矗一さん(67)は、
「島に帰ってきてくれれば本当にうれしい。崩壊寸前の離島の医療を支えてほしい」
人口約1万6300人の町では、昨年4月から四つの診療所のうち
一つが医師不在になった。
町のテコ入れで半年後に確保したものの、
今春には別の診療所の医師がいなくなる。
中核病院・隠岐病院の産科医は一人で、危険を伴うお産はできない。
高梨さんは、そんな大変さをよく知るだけに、「一日でも早く貢献したい」と意欲。
県内唯一の医師養成機関である同大医学部が、2006年度から導入した
「地域枠」入試の1期生。
受験には、へき地の医療機関などでの研修と、出身地の首長の推薦が必要。
受験できるのは、松江市と出雲市の都市部などを除く県内出身者。
導入から3年がたち、学士入学を含めて32人が学んでいる。
地域枠の学生に将来、へき地の医療機関に勤務する義務はない。
だが「思いは伝わっている。受験段階で地域医療の実情の厳しさを見ており、
地元からの期待も感じている。地域に貢献したいという意欲はとても高い」
と木下芳一医学部長(53)。
授業内容は一般学生と変わらないが、春夏の長期休暇中に、
県内の医療機関で行う医療体験実習への参加を強く勧めている。
数日間、来院患者の案内や補助、診察の様子を観察し、
勤務医から話を聞く内容で、実際に地域枠の学生の参加率は高い。
県中央部、大田市出身の岡田祐介さん(20)(2年)は昨夏、
隠岐諸島・西ノ島の病院で実習。
「古里が好きだし、古里に貢献したいと改めて思った。
実習を通して、勉強の意欲も高まった」
ただ、地域にとどまらず、高度な医療を学んで能力を高めたいという
声があるのも事実。
「島根で働きたい気持ちは変わらないが、理想の医師像はまだ見えない。
他県の先進地域に行って、様々なことを身につけたい」と3年の山口祐貴さん(21)。
地域枠の学生を担当する地域医療教育学講座の熊倉俊一教授(48)は、
「医師が高度な医療技術を身につけることは、地域住民にも大切なことだ」
島根県では、県内のへき地に一定期間勤務した後、
大学病院や都市部の基幹病院に一時的に移り、
大学での研究に従事できる仕組み作りも始まっている。
全国的な問題になっている都市部とへき地の医療格差。
「医師不足の地域で働く医師を育てるモデルを作るには、
10年、20年先を見越す必要がある」(木下医学部長)。
息の長い取り組みが続く。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090115-OYT8T00225.htm
中小企業の技術流出を防げ
(日経 2009-01-13)
「世界的な経済危機で、大企業が中小企業との関係を断ち切る動きを
加速すれば、玉のような技術はどっと海外に流出してしまう」。
半導体や薄型パネルの技術コンサルティング、オムニ研究所の吉見武夫社長は、
日本の生命線、モノ作りを根っこから支えてきた中小の有望技術が、
今度こそ崩壊の危機を迎えるのでは、と危惧。
毎年12月、幕張メッセで開催される半導体製造装置展示会「セミコンジャパン」。
オムニ研究所は、東京エレクトロン、ニコンなど大企業のブースの真ん前に
展示コーナーを構える。
集客力が高いメーンストリートにこだわるのは、同社のブースに展示する
中小企業の独創技術を多くの人に知ってもらいたいから。
セミコンでのオムニ研究所のブースは、中小の独創技術をみようと大勢の来場。
景気悪化を反映、出展中止など会場の活気は盛り上がりを欠いたが、
オムニ研究所のブース来場者は、前年より1割多い1800人。
吉見氏は、「セミコンで、目からうろこが落ちる中小企業の一押し技術を
アピールする機会を無償提供する活動を、8年前から続けてきたことが認められた」
世界初の膜封止技術で、厚さ0.5ミリメートルの超薄型白色有機EL量産に
成功した東北デバイス(岩手県花巻市)が、注目の的で多くの人であふれた。
光の透過率を高めたガラス薄膜を開発して、太陽電池の省エネを進める
フューチャー・プロダクト(埼玉県毛呂山町)、
非接触で電気を伝えるワイヤレス空間送電システムのユー・ディ・テック(東京・大田)
など出展9社の試作品は、参加者から「驚いた」と称賛。
技術発掘の原動力は、吉見氏の幅広い人脈。
会費や規則もない異業種交流会を、吉見氏は30年前から開催、
メンバーは現在5800人(2300社)。
業種や企業の壁を超え、腹を割った議論をすることが会の趣旨で、
開発や製造の第一線で活躍する会員が、
「大手では思いもつかない中小の面白い技術を見つけた」と知らせてくれる。
昨年は、50社が支援候補になり、その中から9社が選ばれた。
吉見氏は、98年に日立製作所を退社、オムニ研究所を設立。
日立では半導体事業部副技師長を務め、工場の設備予算の配分権限。
当時の日立は、予算の2割は日立グループに最優先で割り振る決まり。
現場が中小の装置や材料購入を提案しても、入り込む余地はなかった。
吉見氏が中小企業の支援に奔走するのは、
「日立時代、モノ作りを支える中小企業に目を向けなかった反省の意味も」
米ゼネラル・エレクトリック(GE)は07年、
「ジャパン・テクノロジー・フォーラム」と称して、日本の中小企業33社を集めた
技術評価会議を開き、センサーなど3社を提携先に選定。
日本GEの藤森義明会長は、「日本の技術力を、
GEとしていかに吸収するかに焦点を当てている」
東京・大田や東大阪では、中国や韓国メーカーがトヨタ自動車や
パナソニックなどのモノ作りノウハウを入手できる好機と、
資金支援をちらつかせて技術力ある中小企業に買収や提携を
持ちかけているとの話をよく聞く。
技術流出の懸念は現実のものとなっているだけに、
吉見氏は、「日本の中小企業の有望技術の発掘と育成にもっと力を入れ、
大手に採用を呼びかける活動の輪を広げていきたい」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon090108.html
「世界的な経済危機で、大企業が中小企業との関係を断ち切る動きを
加速すれば、玉のような技術はどっと海外に流出してしまう」。
半導体や薄型パネルの技術コンサルティング、オムニ研究所の吉見武夫社長は、
日本の生命線、モノ作りを根っこから支えてきた中小の有望技術が、
今度こそ崩壊の危機を迎えるのでは、と危惧。
毎年12月、幕張メッセで開催される半導体製造装置展示会「セミコンジャパン」。
オムニ研究所は、東京エレクトロン、ニコンなど大企業のブースの真ん前に
展示コーナーを構える。
集客力が高いメーンストリートにこだわるのは、同社のブースに展示する
中小企業の独創技術を多くの人に知ってもらいたいから。
セミコンでのオムニ研究所のブースは、中小の独創技術をみようと大勢の来場。
景気悪化を反映、出展中止など会場の活気は盛り上がりを欠いたが、
オムニ研究所のブース来場者は、前年より1割多い1800人。
吉見氏は、「セミコンで、目からうろこが落ちる中小企業の一押し技術を
アピールする機会を無償提供する活動を、8年前から続けてきたことが認められた」
世界初の膜封止技術で、厚さ0.5ミリメートルの超薄型白色有機EL量産に
成功した東北デバイス(岩手県花巻市)が、注目の的で多くの人であふれた。
光の透過率を高めたガラス薄膜を開発して、太陽電池の省エネを進める
フューチャー・プロダクト(埼玉県毛呂山町)、
非接触で電気を伝えるワイヤレス空間送電システムのユー・ディ・テック(東京・大田)
など出展9社の試作品は、参加者から「驚いた」と称賛。
技術発掘の原動力は、吉見氏の幅広い人脈。
会費や規則もない異業種交流会を、吉見氏は30年前から開催、
メンバーは現在5800人(2300社)。
業種や企業の壁を超え、腹を割った議論をすることが会の趣旨で、
開発や製造の第一線で活躍する会員が、
「大手では思いもつかない中小の面白い技術を見つけた」と知らせてくれる。
昨年は、50社が支援候補になり、その中から9社が選ばれた。
吉見氏は、98年に日立製作所を退社、オムニ研究所を設立。
日立では半導体事業部副技師長を務め、工場の設備予算の配分権限。
当時の日立は、予算の2割は日立グループに最優先で割り振る決まり。
現場が中小の装置や材料購入を提案しても、入り込む余地はなかった。
吉見氏が中小企業の支援に奔走するのは、
「日立時代、モノ作りを支える中小企業に目を向けなかった反省の意味も」
米ゼネラル・エレクトリック(GE)は07年、
「ジャパン・テクノロジー・フォーラム」と称して、日本の中小企業33社を集めた
技術評価会議を開き、センサーなど3社を提携先に選定。
日本GEの藤森義明会長は、「日本の技術力を、
GEとしていかに吸収するかに焦点を当てている」
東京・大田や東大阪では、中国や韓国メーカーがトヨタ自動車や
パナソニックなどのモノ作りノウハウを入手できる好機と、
資金支援をちらつかせて技術力ある中小企業に買収や提携を
持ちかけているとの話をよく聞く。
技術流出の懸念は現実のものとなっているだけに、
吉見氏は、「日本の中小企業の有望技術の発掘と育成にもっと力を入れ、
大手に採用を呼びかける活動の輪を広げていきたい」
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/mono/mon090108.html
=慶応大医学部の挑戦=
(Japan Medicine 2008年12月22日)
慶応大医学部は、教育環境の充実に向けて情報通信技術(ICT)を
積極的に活用している。
教師側から医学生への一方通行だった従来型の教育体制を見直したのが契機。
特に力を入れるのは動画教材の充実で、
2007年度からは文部科学省の補助を受け、臨床実習を行う医学部5、6年生を
中心に医学生が自由に教材を入手し、活用できる環境整備を加速。
慶応大医学部が教育体制の変革に着手したのは、4年ほど前から。
07年度、文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に採択。
GPは“グッドプラクティス”の略で、優れた取り組みを選んで
金銭的な支援をするだけでなく、情報提供を通じて、
他大学にも教育改革を促すことを目的。
選考では、教師側からの一方向の従来型教育を見直し、
学生との双方向性を確保しやすい問題解決型学習への転換を図る趣旨が評価。
テーマは、「ICT(Information and Communication Technology)導入による
授業効果の向上」。
効果は認められているものの、膨大な教材が必要で、
授業でカバーできる学習範囲も少なくなるという問題解決型学習の課題をICTで解消。
学内のイントラネットに教材を蓄積し、図書館やラウンジなどの固定端末(PC)から
閲覧できる環境はすでに構築。
現代GPでは、アップルの携帯プレーヤーiPodなどを導入、
医学生がイントラネット上の専用サーバーから教材をダウンロードして、
いつでもどこでも学べる環境を整えた。
04年度から医学教育統轄センター長の天野隆弘氏は、
「特に動画は、言葉で説明するより内容を容易に伝えることができます」
“画像化”を掲げて教育体制を変革する背景には、
医学部教育や卒業後の医師養成の在り方が大きく変化したことがある。
04年度に必修化された新医師臨床研修制度の目的は、
幅広い臨床能力を持つ医師の育成。
天野氏は、「医学部教育とのつながりの中で、授業が従来のままでは
なかなか臨床ですぐに診療を、というわけにはいかない」と指摘。
慶応大では5、6年時の臨床実習の充実に向けて、
毎年20~30人の模擬患者(SP)を養成して診察の仕方を学ばせたり、
シミュレーターというヒト型模型で手技を体験させたりしている。
動画教材は、教育の実効性を高めるために役立てる。
天野氏は、「実際に教育をする前に、シミュレーターを使った手技などの
実際を見せておく必要があります」
自前の視覚教材は70種類超 学内に呼び掛けて制作した自前の動画教材は
70種類を超えた。
天野氏も、専門の神経内科で意識障害レベルの診察のポイントなどを
動画にした教材をSPと協力して制作。
編集方針は、医学生に考えさせること。
集中力が途切れず、何度でも繰り返して視聴できるように、
1教材当たりの時間は10分前後。
製品化された教材も積極的に導入。
知りたい症状や病名を入力すると、該当する情報が一覧表示される
電子臨床情報「Up To Date」を皮切りに、国内外で臨床医に活用され、
診断・治療の最新動向を学べる教材をそろえてきた。
導入を決めたのがクリニカル スーパーライブサーバー(CSL)。
天野氏は、「医学部の6年を中心に、初期研修医も学べるプログラムが
ありますという提案があり、役立ちそうなものを選んで導入」
CSLの動画コンテンツの企画・制作は、ケアネットが行った。
泌尿器科が専門で、週末は訪問診療もする同社・取締役の姜氏は、
「米国などで教育体制の素晴らしさを実体験した医師に、講師を依頼。
教育としてのエンターテインメント性も加味した」
システム開発は、フォルトゥーナが担当。
医学生同士で情報交換ができるソーシャルネットワークサービスの機能があり、
指導医も、学生の視聴状況を確認したり、質問や相談に応じたりもできる。
文科省予算のため、「iPod」は医学生のみに貸し出している。
天野氏は、いずれは初期研修医らにも貸し出すとともに、
CSLのコンテンツも「iPod」に移し、病棟で使えるようにしたいと考えている。
院内のPC端末も現在の15カ所から、最終的には45病棟に設置し、
動画を含めた種々の教材をダウンロードできるようにする。
「医師には、目の前の患者さんを何とかするために、あの本を読めばいい、
この検査をすればいいということを、積極的に行って
問題を解決する姿勢が求められる。
学生のうちからその積極性を身につけてもらうことが重要」(天野氏)。
問題解決型学習の課題を解消しつつ、教育環境を充実させるための
ICT導入は、ほぼ一段落した。
蓄積した教材は随時更新する方針。
医学生らから人気があり、繰り返し視聴されているかなどの指標をもとに
教材を評価して、継続的な質の底上げを図っていく。
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200812/trend1.html
慶応大医学部は、教育環境の充実に向けて情報通信技術(ICT)を
積極的に活用している。
教師側から医学生への一方通行だった従来型の教育体制を見直したのが契機。
特に力を入れるのは動画教材の充実で、
2007年度からは文部科学省の補助を受け、臨床実習を行う医学部5、6年生を
中心に医学生が自由に教材を入手し、活用できる環境整備を加速。
慶応大医学部が教育体制の変革に着手したのは、4年ほど前から。
07年度、文部科学省の現代的教育ニーズ取組支援プログラム(現代GP)に採択。
GPは“グッドプラクティス”の略で、優れた取り組みを選んで
金銭的な支援をするだけでなく、情報提供を通じて、
他大学にも教育改革を促すことを目的。
選考では、教師側からの一方向の従来型教育を見直し、
学生との双方向性を確保しやすい問題解決型学習への転換を図る趣旨が評価。
テーマは、「ICT(Information and Communication Technology)導入による
授業効果の向上」。
効果は認められているものの、膨大な教材が必要で、
授業でカバーできる学習範囲も少なくなるという問題解決型学習の課題をICTで解消。
学内のイントラネットに教材を蓄積し、図書館やラウンジなどの固定端末(PC)から
閲覧できる環境はすでに構築。
現代GPでは、アップルの携帯プレーヤーiPodなどを導入、
医学生がイントラネット上の専用サーバーから教材をダウンロードして、
いつでもどこでも学べる環境を整えた。
04年度から医学教育統轄センター長の天野隆弘氏は、
「特に動画は、言葉で説明するより内容を容易に伝えることができます」
“画像化”を掲げて教育体制を変革する背景には、
医学部教育や卒業後の医師養成の在り方が大きく変化したことがある。
04年度に必修化された新医師臨床研修制度の目的は、
幅広い臨床能力を持つ医師の育成。
天野氏は、「医学部教育とのつながりの中で、授業が従来のままでは
なかなか臨床ですぐに診療を、というわけにはいかない」と指摘。
慶応大では5、6年時の臨床実習の充実に向けて、
毎年20~30人の模擬患者(SP)を養成して診察の仕方を学ばせたり、
シミュレーターというヒト型模型で手技を体験させたりしている。
動画教材は、教育の実効性を高めるために役立てる。
天野氏は、「実際に教育をする前に、シミュレーターを使った手技などの
実際を見せておく必要があります」
自前の視覚教材は70種類超 学内に呼び掛けて制作した自前の動画教材は
70種類を超えた。
天野氏も、専門の神経内科で意識障害レベルの診察のポイントなどを
動画にした教材をSPと協力して制作。
編集方針は、医学生に考えさせること。
集中力が途切れず、何度でも繰り返して視聴できるように、
1教材当たりの時間は10分前後。
製品化された教材も積極的に導入。
知りたい症状や病名を入力すると、該当する情報が一覧表示される
電子臨床情報「Up To Date」を皮切りに、国内外で臨床医に活用され、
診断・治療の最新動向を学べる教材をそろえてきた。
導入を決めたのがクリニカル スーパーライブサーバー(CSL)。
天野氏は、「医学部の6年を中心に、初期研修医も学べるプログラムが
ありますという提案があり、役立ちそうなものを選んで導入」
CSLの動画コンテンツの企画・制作は、ケアネットが行った。
泌尿器科が専門で、週末は訪問診療もする同社・取締役の姜氏は、
「米国などで教育体制の素晴らしさを実体験した医師に、講師を依頼。
教育としてのエンターテインメント性も加味した」
システム開発は、フォルトゥーナが担当。
医学生同士で情報交換ができるソーシャルネットワークサービスの機能があり、
指導医も、学生の視聴状況を確認したり、質問や相談に応じたりもできる。
文科省予算のため、「iPod」は医学生のみに貸し出している。
天野氏は、いずれは初期研修医らにも貸し出すとともに、
CSLのコンテンツも「iPod」に移し、病棟で使えるようにしたいと考えている。
院内のPC端末も現在の15カ所から、最終的には45病棟に設置し、
動画を含めた種々の教材をダウンロードできるようにする。
「医師には、目の前の患者さんを何とかするために、あの本を読めばいい、
この検査をすればいいということを、積極的に行って
問題を解決する姿勢が求められる。
学生のうちからその積極性を身につけてもらうことが重要」(天野氏)。
問題解決型学習の課題を解消しつつ、教育環境を充実させるための
ICT導入は、ほぼ一段落した。
蓄積した教材は随時更新する方針。
医学生らから人気があり、繰り返し視聴されているかなどの指標をもとに
教材を評価して、継続的な質の底上げを図っていく。
http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/jiho/200812/trend1.html
夜間の良質な睡眠が風邪をおとなしくさせる
(WebMD 1月12日)
夜間の良質な睡眠が、風邪の予防のもっとも優れた方法のひとつ。
夜間の睡眠が7時間未満である者は、8時間以上の睡眠をとる者に比べて、
風邪原因ウイルスへの曝露後に風邪をひく傾向が3倍高い。
よく眠らないと風邪をひきやすいと一般的に考えられているが、
そのことを支持する科学的エビデンスはこれまでほとんどなかった。
『Archives of Internal Medicine』に掲載された今回の研究では、
健康な男女153名を調べた。
14日間の睡眠習慣を追跡し、前日の夜の睡眠の長さと質および
休息できたと本人が感じられたかどうかを記録。
14日後に被験者を検疫隔離して、風邪原因ウイルス(ライノウイルス)を含む
液を点鼻し、その後5日間にわたって風邪の徴候を監視。
その結果、実験日までの夜間の平均睡眠時間が7時間未満であった者は
夜間の睡眠時間が8時間以上だと答えた者に比べて、
風邪を発症する傾向が3倍近く高かった。
しかし、ベッドに入っていた時間数は関係がなかった。
研究者のSheldon Cohen(カーネギーメロン大学)らによれば、
実際に睡眠した時間の割合が特に重要。
例えば、ベッドに入っている時間のうち睡眠時間が92%であった者は、
ベッドに入っている時間の98%が睡眠時間であった者に比べて、
風邪になる傾向が5.5倍も大きかった。
ただし、休息したという自覚は、風邪をひくこととは関係なかった。
「今回の結果は、睡眠が風邪への感受性に対して因果的役割を果たしている
可能性を強く示唆するものである」
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=86522
夜間の良質な睡眠が、風邪の予防のもっとも優れた方法のひとつ。
夜間の睡眠が7時間未満である者は、8時間以上の睡眠をとる者に比べて、
風邪原因ウイルスへの曝露後に風邪をひく傾向が3倍高い。
よく眠らないと風邪をひきやすいと一般的に考えられているが、
そのことを支持する科学的エビデンスはこれまでほとんどなかった。
『Archives of Internal Medicine』に掲載された今回の研究では、
健康な男女153名を調べた。
14日間の睡眠習慣を追跡し、前日の夜の睡眠の長さと質および
休息できたと本人が感じられたかどうかを記録。
14日後に被験者を検疫隔離して、風邪原因ウイルス(ライノウイルス)を含む
液を点鼻し、その後5日間にわたって風邪の徴候を監視。
その結果、実験日までの夜間の平均睡眠時間が7時間未満であった者は
夜間の睡眠時間が8時間以上だと答えた者に比べて、
風邪を発症する傾向が3倍近く高かった。
しかし、ベッドに入っていた時間数は関係がなかった。
研究者のSheldon Cohen(カーネギーメロン大学)らによれば、
実際に睡眠した時間の割合が特に重要。
例えば、ベッドに入っている時間のうち睡眠時間が92%であった者は、
ベッドに入っている時間の98%が睡眠時間であった者に比べて、
風邪になる傾向が5.5倍も大きかった。
ただし、休息したという自覚は、風邪をひくこととは関係なかった。
「今回の結果は、睡眠が風邪への感受性に対して因果的役割を果たしている
可能性を強く示唆するものである」
http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=86522
2009年1月23日金曜日
現場再訪(5)統合せず「少人数」生かす
(読売 1月14日)
県教委の名物職員が、教育長として山間の町の教育を変え始めた。
宮崎県五ヶ瀬町立三ヶ所小学校で行われた3年生の音楽の授業は、
40人の児童に教師が5人がかりだった。
1人の伴奏で子供全員が輪唱をした後、個別に楽器を選ぶ時点からは、
教師がグループごとに付いて指導した。
昨年から始めたG授業(GはGOKASEのG)。
熊本県境に接する町の人口は約5000人だが、
小学校が4校、中学校が2校ある。
G授業は年20回ほど、他校の子供もスクールバスで集まって一緒に行う。
教師も集まれば、指導は当然手厚くなる。
小中学生は全町で400人足らず。普段は輪唱も難しい。
G授業では逆に、児童2人に教師1人が付いて算数を指導する場面や、
小学校の教師が中学校に出向く場面も。
どんな内容の時に、どういう規模が最適か探っている。
この取り組みを始めた日渡円町教育長(52)は県教委時代、
教員の評価制度や学校事務の共同実施を進め、文部科学省幹部も一目置いた。
「条文に照らして市町村にダメ出しをするのが、県教委の仕事だった。
でもダメが多過ぎれば、ルールがおかしいということになる」。
長年の経験や思いを今の仕事にぶつけている。
2年前の就任時、校長たちが示した学校の教育目標を、
「当たり前のお題目ならいらない」と突き返した。
「算数の力が弱い」、「コミュニケーション力が……」と低学力を訴える校長たちに
「教師の力量のせいでは」と問いかけた。
秋には、43年ぶりの全国学力テストの結果が出た。
町の成績は、全国平均よりも県平均よりも高かった。
「理由は少人数教育しかない。少人数は町の教育の強みだ」。
前任者の頭には学校の統廃合があったが、
発想を180度転換して町の教育ビジョンを作った。
統合すれば、教職員数が大幅に減る。現在は6校で計82人。
その力を生かしたいと考えた。
ビジョンの実行部隊となる3委員会14部会のすべてに教職員が入った。
教職員を核に、町を変えようとしている。
図書館の代わりに、学校の玄関、農協、バス停など、
至る所に方々から入手した図書を置き始めた。
それをネットワーク化し、借りたい人がいる所に本を運ぶ仕組みを作る。
校長らには議会の傍聴を義務づけ、学校に予算要求をさせる。
高齢者が役場に足を運ばなくても、学校で公的手続きができる形を作る。
住民が助けてほしい作業や学校が手伝ってほしい仕事の掲示板を学校に設け、
その仕事や作業の対価として地域通貨を使う。
地域通貨は、学校施設の利用時にも使ってもらう。
住民が学校に集まる仕組み作りだ。
わずか2年の間で教職員が主体的に動き始めた。
例えば、学校給食を、お年寄りのデイサービスでも使えるようにできないか
といった検討が、教職員の発案で始まっている。
教頭たちが、教育長の前で教育について夢を語る。
教職員の心に火をともすことが、過疎の町再興につながる道かもしれない。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090114-OYT8T00295.htm
県教委の名物職員が、教育長として山間の町の教育を変え始めた。
宮崎県五ヶ瀬町立三ヶ所小学校で行われた3年生の音楽の授業は、
40人の児童に教師が5人がかりだった。
1人の伴奏で子供全員が輪唱をした後、個別に楽器を選ぶ時点からは、
教師がグループごとに付いて指導した。
昨年から始めたG授業(GはGOKASEのG)。
熊本県境に接する町の人口は約5000人だが、
小学校が4校、中学校が2校ある。
G授業は年20回ほど、他校の子供もスクールバスで集まって一緒に行う。
教師も集まれば、指導は当然手厚くなる。
小中学生は全町で400人足らず。普段は輪唱も難しい。
G授業では逆に、児童2人に教師1人が付いて算数を指導する場面や、
小学校の教師が中学校に出向く場面も。
どんな内容の時に、どういう規模が最適か探っている。
この取り組みを始めた日渡円町教育長(52)は県教委時代、
教員の評価制度や学校事務の共同実施を進め、文部科学省幹部も一目置いた。
「条文に照らして市町村にダメ出しをするのが、県教委の仕事だった。
でもダメが多過ぎれば、ルールがおかしいということになる」。
長年の経験や思いを今の仕事にぶつけている。
2年前の就任時、校長たちが示した学校の教育目標を、
「当たり前のお題目ならいらない」と突き返した。
「算数の力が弱い」、「コミュニケーション力が……」と低学力を訴える校長たちに
「教師の力量のせいでは」と問いかけた。
秋には、43年ぶりの全国学力テストの結果が出た。
町の成績は、全国平均よりも県平均よりも高かった。
「理由は少人数教育しかない。少人数は町の教育の強みだ」。
前任者の頭には学校の統廃合があったが、
発想を180度転換して町の教育ビジョンを作った。
統合すれば、教職員数が大幅に減る。現在は6校で計82人。
その力を生かしたいと考えた。
ビジョンの実行部隊となる3委員会14部会のすべてに教職員が入った。
教職員を核に、町を変えようとしている。
図書館の代わりに、学校の玄関、農協、バス停など、
至る所に方々から入手した図書を置き始めた。
それをネットワーク化し、借りたい人がいる所に本を運ぶ仕組みを作る。
校長らには議会の傍聴を義務づけ、学校に予算要求をさせる。
高齢者が役場に足を運ばなくても、学校で公的手続きができる形を作る。
住民が助けてほしい作業や学校が手伝ってほしい仕事の掲示板を学校に設け、
その仕事や作業の対価として地域通貨を使う。
地域通貨は、学校施設の利用時にも使ってもらう。
住民が学校に集まる仕組み作りだ。
わずか2年の間で教職員が主体的に動き始めた。
例えば、学校給食を、お年寄りのデイサービスでも使えるようにできないか
といった検討が、教職員の発案で始まっている。
教頭たちが、教育長の前で教育について夢を語る。
教職員の心に火をともすことが、過疎の町再興につながる道かもしれない。
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090114-OYT8T00295.htm
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