2008年12月20日土曜日

肺炎 国内の死因第4位で9割は高齢者。予防法は?

(毎日新聞社 2008年12月16日)

インフルエンザが流行する季節は、肺炎も多発。
肺炎が原因で亡くなる人はがん、心疾患、脳血管疾患に次ぎ、4番目に多い。
肺炎で死亡する人の9割以上は65歳以上。
高齢者をかかえる家族は、肺炎にならない予防策を取ることが大切。

◎耐性菌出現で注目

肺炎を起こしている主な原因菌は、緑膿菌や肺炎球菌など。
緑膿菌は、院内感染も起こす。
肺炎球菌は、鼻の奥にすむ「常在菌」で、体の免疫力が低下すると
発熱やせき、たんなどを伴う肺炎になり、死亡する場合も。

インフルエンザに感染していると、
肺炎球菌が気管支などに侵入しやすくなり、症状はより重くなる。
肺炎球菌による肺炎の治療では、ペニシリン系の抗生物質を使うが、
最近は薬が効きにくい耐性菌が現れてきた。

注目されているのが、ワクチン接種。
毒性をなくした肺炎球菌の一部を注射し、体に抗体をつくらせて重症化を防ぐ。
日本では、88年に承認。
米国では65歳以上の約6割が接種しているが、日本では5%程度と低い。
ワクチン接種した人はしない人に比べ、死亡率は約7割も下がる。
複十字病院の工藤翔二院長は、
「65歳以上の高齢者は、ワクチン接種をした方がよい」。
インフルエンザや肺炎治療に詳しい松本慶蔵・長崎大名誉教授は、
「ワクチン接種は、インフルエンザになったときの重症化を抑える効果もある」

肺炎球菌ワクチンの効果は、1回の接種で5年程度持続。
米国では2回の接種が認められているが、
日本では安全性や有効性を裏付けるデータが少ないとして、
厚生労働省は1回しか認めていない。
工藤さんは、「接種して5年以上たったら、2回目の接種をした方がより効果的」
国に2回目の接種の必要性を訴えている。

◎欧米では小児用も

肺炎球菌は、肺炎だけでなく、中耳炎や髄膜炎などの原因に。
免疫力の弱い4~5歳以下では、血液に入った肺炎球菌が脳や脊髄を
覆う髄膜に侵入して炎症を起こす髄膜炎の原因にも。
日本神経感染症学会によると、日本では年間約1000人の子どもが
髄膜炎にかかっていると推定。

欧米では、子ども専用ワクチンが認められている。
2歳未満の専用ワクチンを開発した米製薬企業「ワイス」は昨年9月、
厚労省に使用申請したが、まだ承認されていない。
普段から、うがいや運動、日光浴などで体の免疫を強くしておくことが必要。

◎自治体が助成の動き

ここ数年、全国の自治体が住民に接種を促す動き。
スイカの産地で知られる長野県波田町(人口約1万5000人)は、
04年から05年の冬、インフルエンザと肺炎を併発した高齢者が急増し、
町の病院に収容できないほどの事態に。

06年6月から、75歳以上を対象にワクチン接種への助成を始めた。
通常の接種料金は6000円だが、2000円を補助し、自己負担は4000円。
半分近い高齢者が接種を受けた。
その結果、06年6月以前は、全死亡者のうち肺炎死亡が11-17%、
助成後の07年は約6%、今年は約4%と、肺炎死亡率は大幅に減った。

清水幹夫・波田総合病院救急総合診療科長は、
「肺炎で入院すると、1カ月間の入院費用は1人あたり約86万円もかかる。
ワクチン接種で高齢者の入院患者は大きく減った」と経済的効果。

全国のワクチン接種の平均的な費用は、8000円前後。
東京都渋谷区のように、75歳以上は全額補助の例も。

万有製薬は、治療法やワクチン接種の病院紹介などを解説する
「肺炎球菌感染症コールセンター」(月~金曜9-17時、0120・66・8910)
を来年3月末まで開設。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=85024

延命遺伝子特定 老化疾患など応用にも期待 京大大学院グループ

(毎日新聞社 2008年12月15日)

断食の繰り返しなど、断続的な飢餓状態がもたらす動物の老化抑制や
延命作用について、京都大大学院の研究グループが
線虫を使った実験で原因となる遺伝子を見つけた。

この遺伝子は人間にもあり、延命のほか老化に伴う疾患の抑制へ
応用が期待。
英科学誌「ネイチャー」電子版に発表。

断食を繰り返すと寿命が延びることは、マウスでの実験で知られている。
生命科学研究科の西田栄介教授(細胞生物学)らは
研究に適した線虫を使い、どの遺伝子が作用しているか実験。

餌となる大腸菌を2日おきにしか与えない場合、
平均寿命(約25日)が1・5倍に延び、量を減らしただけでも
約1・15倍になることを確認。
エネルギーや栄養の状況を感知して細胞に伝える役割を持つ
遺伝子7、8個を調べ、「Rheb」(レブ)と呼ばれる遺伝子の働きを止めると、
断続的な飢餓による寿命延長が起こらないことを突き止めた。

長寿に関連する遺伝子としては、既に「DAF-16」の存在が知られている。
RhebはDAF-16を活性化する、寿命延長の鍵を握る遺伝子。
西田教授は、「飢餓を感知するメカニズムを解明できれば、
飢餓状態を引き起こさなくても、寿命を延ばすことができるのではないか」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=85010

2008年12月19日金曜日

麻痺した筋の皮質ニューロンによる直接制御

(nature 2008年12月4日号Vol.456 No7222 / P.639-642)

麻痺した筋の皮質ニューロンによる直接制御
脊髄損傷による麻痺の治療法として、
脳からの制御信号を人工的な接続によって、
損傷部周辺へ伝送する方法が考えられる。

こうした信号が、筋の電気的刺激の制御に使われれば、
麻痺した四肢の随意運動を復活させられる可能性がある。

従来の実験では、実際の運動または仮想的な運動に関連する
運動皮質の活動を用いて、コンピューター画面のカーソルや
ロボット腕を動かすことや、麻痺した筋を機能的な電気刺激で
動かすことに、それぞれ別個に成功。

本論文では、サル(ブタオザル;Macaca nemestrina)が、
運動皮質中のニューロンの活動を使って筋を直接刺激することができ、
一時的に麻痺させた腕に目標到達運動を復活させたことを報告。

重要なのは、ニューロンがどのような運動と関連していたのかには関係なく、
この機能的刺激の制御が可能だったことで、
この知見によって、脳-機械インターフェースの制御信号源の選択肢は
大きく広がることになる。

サルは、この皮質細胞から筋への人工的接続を使って
手首を両方向に回転させることを覚え、
ニューロン-筋の複数対を同時に制御できるようになった。
皮質活動から筋刺激へのこのような直接的変換は、
自律的な電子回路で行うことも可能であり、
かなり自然に近い神経プロテーゼができそうである。

今回の結果は、皮質細胞と筋との人工的な直接接続によって、
分断された生理的経路を補償し、麻痺した四肢の運動の随意制御に
成功した最初の実例となる。

[原文]Direct control of paralysed muscles by cortical neurons

Chet T. Moritz1, Steve I. Perlmutter1 & Eberhard E. Fetz11.Department of Physiology & Biophysics and Washington National Primate Research Center, University of Washington, Seattle, Washington 98195, USA

A potential treatment for paralysis resulting from spinal cord injury is to route control signals from the brain around the injury by artificial connections. Such signals could then control electrical stimulation of muscles, thereby restoring volitional movement to paralysed limbs1, 2, 3. In previously separate experiments, activity of motor cortex neurons related to actual or imagined movements has been used to control computer cursors and robotic arms4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, and paralysed muscles have been activated by functional electrical stimulation11, 12, 13. Here we show that Macaca nemestrina monkeys can directly control stimulation of muscles using the activity of neurons in the motor cortex, thereby restoring goal-directed movements to a transiently paralysed arm. Moreover, neurons could control functional stimulation equally well regardless of any previous association to movement, a finding that considerably expands the source of control signals for brain-machine interfaces. Monkeys learned to use these artificial connections from cortical cells to muscles to generate bidirectional wrist torques, and controlled multiple neuron-muscle pairs simultaneously. Such direct transforms from cortical activity to muscle stimulation could be implemented by autonomous electronic circuitry, creating a relatively natural neuroprosthesis. These results are the first demonstration that direct artificial connections between cortical cells and muscles can compensate for interrupted physiological pathways and restore volitional control of movement to paralysed limbs.

http://www.m3.com/tools/MedicalLibrary/nature/200812/nature/7222/01.html

新たな研究が夜勤に光を当てる

(WebMD 12月5日)

夜勤時の集中力を高め、さらに勤務時間外によりよく眠るための
一つの方策を、ある新しい研究が発表。

ラッシュ大学医療センターの研究者らが、夜間勤務に関する実験において、
被験者を真夜中に5回、15分間ずつ明るい光にさらさせたところ、
即座にではないものの、しばらく後の集中力が高まった。

研究者の1人Charmane Eastmanは、役立ったのは光だけではない。
光に暴露した人は、帰宅時に色調の暗いサングラスをかけ、
午前8時半に就寝した。
被験者群は1回目と2回目の夜勤後、
暗い寝室で午前8時半から午後3時半まで睡眠をとった。
3回目以降の夜勤後は、午前8時半から午後1時半まで睡眠をとり、
2日間の週末休暇には午前3時から正午まで睡眠をとった。

一方、同じ実験の対照群は光に当たらなかった。
サングラスは与えられたが、薄暗い程度で暗いサングラスではなかった。
睡眠は無制限とし、好きなだけ外光に当たった。
合計24名の実験参加者は、週休2日で午後11時から午前7時まで勤務に。

Eastman博士とMark Smith研究員は、
実験参加者の体内時計を正常に近づけるためこの研究を実施。
その結果、明るい光、暗いサングラス、強制的な睡眠時間が
夜勤者の集中力を高め、不調感を和らげるのに効果的であることを見出した。

Eastman博士は、「仕事場や休憩室に明るい場所を設置する」ことによって、
実際の夜勤者の気分が良くなり、意識も明晰になる可能性がある。
サングラスも重要で、サングラスは青色光の大半を遮る。
朝の青色光が、体内時計を実際の時刻に合わせて調節する働き。
屋外で青色光をあびると、体は朝であると認識する。
夜勤者は、勤務時間帯へ体内時計を適応させることができない。
我々は体内時計に夜を昼間、昼間を夜だと思わせている」。

被験者は、休日には午前3時に寝るよう指示。
これは、体内時計を段階的にリセットし、
夜に睡眠をとる正常な感覚を取り戻すため。
夜勤者は、窓越しに光が入る中でも目を瞑ることができると考えていても、
「真っ暗な」部屋で眠るべき。

この実験中、被験者群の部屋の窓は黒いプラスチック板で覆われた。
これらの措置により、「体内時計のリセット」に成功したかを確認するため、
被験者の唾液中の化学物質を測定した。

「夜勤者は、電話の線を抜き、家のベルを鳴らさないよう張り紙をし、
仕事の終りにあまり多くのコーヒーを飲まないこと。
アルコールは、寝付きを良くするが、効果は徐々に薄れ、やがて目が覚める。
早過ぎる目覚めは、最大の問題」。

夜勤者は、休日には遅い時間に起床し、正午前に起きない方がよい。
実験群の夜勤者は、長時間のコンピュータ課題で成績を上げることができたが、
対照群はできなかった。

『Sleep』に発表された同研究は、
夜勤者に効果的であった光療法、サングラス、厳密な睡眠スケジュールが
「概日周期の緩衝帯(compromise circadian phase position)」を作り、
休日に十分な夜間睡眠をとり、夜勤の効率と集中力を向上させる。

「この研究成果は、夜勤時の集中力を高め、昼間の睡眠を長くし、
夜働いて昼間に寝る、というスケジュールに体の生理反応を適応させなくてもよい」
「定期的に光と闇に暴露することで、生理的適応を図れば、
夜勤の効率を昼間のレベルに十分戻せる」。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=SPECIALTY&categoryId=580&articleLang=ja&articleId=84909

地域が支える学校(13)住民の授業診断 定着

(読売 12月18日)

コミュニティスクール指定第1号の小学校はどうなったか。

体育館の後ろ半分が大人で埋め尽くされた。
東京都足立区立五反野小学校の土曜参観には、
保護者や地域住民ら約590人が、子供たちの学習の様子を見ようと
学校を訪れた。在籍児童数を上回る数。

同小では2002年から、朝の15分間、音読や漢字ドリルなどで
基礎学力の向上を図る「パワーアップタイム」を設けている。
その成果を見せる論語や詩の音読、全校児童による合唱など、
元気いっぱいの発表が続いた。
この日の参観は、保護者や地域住民が、授業診断をする場にも。

04年11月、全国で最初にコミュニティスクールに指定された同小は、
その2年前から文部科学省の研究校として、
新しい学校運営のあり方を考えてきた。
その一環で、地域住民らが参画して学校運営の方針を決める
学校運営協議会を、私立学校のように最も権限の強い印象がある
学校理事会と呼んできた。

「学校で何をやっているかを広く見てもらう。
学校を理解してもらってこそ、地域住民は学校運営に力を貸してくれる」と
2代目理事長の鴨下甚治さん(69)。

研究校になった02年から続く「パワーアップタイム」は、
五反野小の象徴とも言える。
理事会が目指す学校像として、基礎学力の向上を望んだ結果、始まった。
03年には、理事会の意向も聞いた上で就任した校長が1年で交代。

後任の三原徹さん(60)は、通信教育大手のベネッセコーポレーション出身。
三原さんは4年間校長を務め、地域や保護者による授業診断を
定着させた上で、副校長として支えた土肥和久さん(49)に後を託した。

1年での校長交代は当時、東京の学校関係者に、
「五反野ショック」という言葉で語られた。
新しくできるコミュニティスクールは、校長を交代させることもできると解釈。

当時の校長と理事会には、基礎学力向上を優先するか、
総合的な学力の向上か、といった学力観の違いが見られたのは確か。
理事会は、02年の時点で民間出身校長を望んでいた。
人事権を持つ都教委が一時、小学校への民間出身校長起用を渋ったことが、
1年で校長が代わる遠因に。

現校長の土肥さんと理事会とは、三原さん同様、良好な関係が続いている。
学校理事会長名で4月に出した「保護者の方へのお願い」は、その真骨頂。

「教育は、学校のみで完結するものではない」として、
「礼儀やあいさつは、親が指導するのが基本」など家庭が守るべき
マナー、モラル、ルール6項目を示した。
この「お願い」に対して、9割の保護者から「確認書」を提出。
地域が学校を支える形が整いつつある。

◆五反野小の「マ(マナー)モ(モラル)ル(ルール)」を守る
〈1〉登校時間を守る
〈2〉忘れ物がないよう親がチェック
〈3〉礼儀やあいさつは親の指導が基本
〈4〉基礎学習定着の宿題は家庭でやる
〈5〉子どもの話だけを信じて学校に文句を言う前に状況判断をする
〈6〉PTA活動などに積極的に参加し、保護者としての責任を果たす
※表現は一部省略、変更。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081218-OYT8T00251.htm

環境配慮の都市づくりへ協力を…日本がスウェーデンに提案へ

(読売 12月12日)

ポーランド・ポズナニで開催中の気候変動枠組み条約第14回締約国会議
(COP14)に参加している斉藤環境相は、
温暖化対策の先進国・スウェーデンのカールグレン環境相と会談し、
環境に優しい都市づくりで協力関係を築くことを提案。

来年には、日本で両国の先進自治体の担当者や専門家を集めた
会議を開き、都市間交流を促して環境配慮型の都市づくりを進めたい考え。
事務レベルの折衝では、スウェーデン側も前向きな姿勢を見せている。

スウェーデンでは、首都ストックホルムが、電気自動車などの低公害車以外に
「渋滞税」をかける制度を導入。

太陽光や風力発電による地域冷暖房システムを整備し、
廃棄物焼却場の熱エネルギーも利用している
南部のマルメ市のような先進都市もある。

http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20081212-OYT1T00441.htm

2008年12月18日木曜日

学校保健統計調査:児童・生徒、肥満減る

(毎日新聞社 2008年12月12日)

肥満の児童・生徒の割合が減少に転じたことが、
文部科学省の08年度学校保健統計調査で分かった。

小学校高学年から高校の各学年で、肥満と判定された割合は
10%前後だったが、多くの学年で2年前の調査より1ポイント前後減。
文科省は、「規則正しい食生活が家庭に浸透したため」とみているが、
栄養状態の悪化などが背景にある可能性も「否定できない」としており、
より詳しい分析を進める。

調査は4~6月、幼稚園と小中高校の計7755校を抽出し、
約70万人の発育状態と約332万人の健康状態を調べた。

標準体重より2割以上重い肥満の生徒は、中3男子が10・0%で、
現在の方法で集計を始めた06年度より1・2ポイント減った。

▽高3女子8・6%(06年度比1・1ポイント減)
▽中3女子8・5%(0・7ポイント減)
▽小6男子11・2%(0・6ポイント減)--など各学年で減少。

05年度までは、医学的に算出した標準体重ではなく、
平均体重より2割以上重い場合を肥満と定義していたが、
肥満の割合は増加傾向が続いていた。

一方、視力1・0未満と0・3未満の幼稚園児と小中学生の割合が
いずれも、視力を調査対象に加えた79年度以降で最高となった。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84873

革新創薬加速へバイオ戦略 遺伝子組み換え研究も推進

(共同通信社 2008年12月12日)

生命科学分野関連の閣僚や有識者でつくる
「BT(バイオテクノロジー)戦略推進官民会議」は、
新型万能細胞「iPS細胞」などを活用した革新的医薬品の速やかな開発など、
日本の今後5年程度のバイオテクノロジー強化策を掲げた指針
「ドリームBTジャパン」をまとめた。
2002年に策定された「BT戦略大綱」の更新版。

深刻化した食料、エネルギー問題などの解決策として
遺伝子組み換え作物研究の推進も盛り込んだ。
ただ「社会的受容が不可欠」として、そのための行動計画を今後、
作業部会で策定することになった。

官民会議座長の本庶佑・総合科学技術会議議員は、
「遺伝子組み換え技術への国民の理解を深めないと、
日本の科学技術や社会生活に悪影響が出かねない」

強化策は11項目。
研究基盤強化のための関連予算の拡充や、知的財産の専門家育成、
国民の健康志向の高まりに応える「高付加価値食品」の開発も挙げた。
食料と競合せず、効率的に生産できるバイオ燃料の技術開発なども進める。

官民会議は科学技術担当、文部科学、厚生労働、農林水産、経済産業、
環境の各相と18人の有識者で構成する。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84883

地域が支える学校(12)遊びも学びも人材提供

(読売 12月17日)

多様な遊びや学びを、地域が用意する学校がある。

カーペット敷きの多目的室「にじいろひろば」で、
何人かの男児がベーゴマに夢中だった。
その1人に、「あの子は去年、コマのひもがなかなか巻けず、
泣きながらがんばって、できるようになった。今の子も、やる時はやるね」と
講師の鈴木光太郎さん(79)が感心。

東京都小平市立第四小学校で、地域住民らが、放課後や週末に
様々な遊びや学びの場を用意する「放課後子ども教室」の一つ。
インターネットや卓球教室、焼き芋づくりなども行われた。
「にじいろ」のメニューは月替わりで、紙飛行機、折り紙、百人一首など、
昔ながらの遊びが楽しめる。

こういった場が年間200日近く開講し、
予定は、学校のホームページで逐次、紹介。
ウェブでの情報発信も、ネット教室の講師がかかわっており、充実。

四小は、今年度からは、学校運営に地域住民らが参画する
コミュニティスクールに正式に指定。昨年度から研究校だった。
運営方針を話し合う学校経営協議会(法律では学校運営協議会)の会長は、
「子ども教室」の実行委員長でもある民生児童委員の下村咲子さん(60)。
「子ども教室」がすでに5年目を迎えるなど、以前から、
地域が学校に積極的にかかわってきた伝統がある。

同小では、地域の人材を学校とつなぐ、協議会とは別組織の
「コーディネート部会」が、学習面でも大きな役割を果たすようになってきた。
教員の代表3人、各クラスの保護者と、地域代表が2人。
その1人が下村さん。

例えば、総合的学習の時間で取り組む、学校近くの玉川上水の学習には、
企画段階から地域住民らがかかわるようになっている。
「どんな学校にしたいという地域の願いを、はっきりと伝えられるのが、
コミュニティスクールの利点です」

6年生が、約1週間後の地元のまつりに出店するバザーの準備をしていた。
提供してもらう商品を受け取るために、
地元の店などを回り、商品の値付けもした。
このバザーも、地域の学習としてコーディネーターが間に入っている。
「地域全体で大事にしてもらっていることがよくわかる」と
6年の学年主任、山崎一樹教諭(29)。

放課後の子供たちが過ごす場となる「放課後子ども教室」は、
文部科学省が推進。
学校運営協議会を支える組織となりそうな学校支援地域本部事業も、
同省の事業として今年度から始まっている。

「地域が教育を支える点では、バラバラに取り組むのではなく、
全部ひっくるめて考える必要がある」と
小平市で四小のような仕組みの整備をしてきた前教育長の坂井康宣さん。
従来の学校教育と社会教育の枠を超えた地域教育という
考え方が広まろうとしている。
地域教育を広げるには、それを支える人材の発掘と、
学校との橋渡し役の育成が欠かせない。

◆地域教育

東京都では、学校教育と社会教育の枠を超えて、
両者をつなげる新しい教育活動ととらえ、その推進のため、
都教育委員会に今年度から地域教育支援部も作っている。
都生涯学習審議会は今月、地域教育の担い手育成のための方策や
行政の役割について答申をまとめた。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081217-OYT8T00224.htm

スポーツ21世紀:新しい波/286 武道の必修化/4

(毎日 12月13日)

千葉大教育学部付属中学では、以前から2年生全員が
男女とも柔道を履修。
2012年からは全国の中学(1、2年生)で武道が必修化。
その動きを先取りした取り組み。

柔道の授業は、年間13時間程度。
その1時間目の講義で、柔道の本質とは何かを教える。

テーマは、「嘉納治五郎の生涯」、「カラー柔道着導入の経緯」、
「一本を目指す精神」など。
指導する保健体育科の渡辺冬花教諭(40)は、
女子柔道の強豪・埼玉大の出身で、教員になってからも
ずっと柔道の魅力を伝えたいと思い続けてきた。

嘉納治五郎の生涯では、「精力善用」、「自他共栄」という
柔道の創始者が残した言葉を紹介。
精神と力を正しく用いれば、体が小さくても相手の力を利用して技を掛けられる。
力の強い者が偉いのではなく、弱い者も共に栄えるという思想。
カラー柔道着の導入では、テレビ映りを意識した国際柔道界のビジネス改革と、
抵抗した日本柔道界との考えの違いを説く。
一本を目指す精神では、自分が体得した最高の技を出し切る大切さを教える。

「柔道は、この100年で世界に急速に広まった。
でも、日本が大切にしてきた精神が失われた側面も。そんな話をします」

実技では、まず受け身を体験させ、投げた側にも「相手がけがをしないよう、
投げ終わっても引き手を離してはだめ」と指導。
渡辺教諭は大学時代、大事な大会を控えた練習中に左鎖骨を骨折。
つらい経験だったが、投げた相手も泣いていた。
その顔が今も忘れられない。

「受け身は、負け方の練習です。
そんなことを最初にする競技は他にない。
負けた側は自分を守り、勝った側は相手を思いやる。
ともに相手がいなくては、柔道はできない。それは社会そのものです

勝負を競う面白さだけでなく、武道に宿る精神性も教える。
競技化した世界の柔道と、人間教育も重視する日本の柔道。
渡辺教諭は「どうバランスを取るか、どの先生も悩むのでは」

http://mainichi.jp/enta/sports/21century/

2008年12月17日水曜日

地域が支える学校(11)校長が先頭に立とう

(読売 12月16日)

早大ラグビー部監督 中竹竜二さんに聞く

校長の力量が問われる時代だ」と、中竹竜二さんは見る。
「学校を支える地域の支援体制が整ってきた。
校長がリーダーシップを発揮しないと、支援する人は動かず、文句も出る。
校長のリーダーシップの有無が、はっきり見えてしまう

早稲田大学ラグビー部監督の中竹さんは、地域住民らが学校運営に
参画するコミュニティスクールの一つ、東京都杉並区立三谷小学校で、
学校の運営方針を話し合う学校運営協議会の会長。

「校長は、どんな学校にしていくかを明確に語れる必要がある。
自分とはどういう校長かを、一言できっぱりと表現できるくらいであってほしい」
「今の学校が抱える様々な課題を、1人では解決できない。
これからの学校経営には、先生たちに、リーダーを支える
フォロワーシップも必要です

ラグビー部の寮は、三谷小と目と鼻の先。
前校長が、清宮克幸前監督に「学校評議員」就任を要請したことが、
中竹さんと小学校をつなぐきっかけになった。
「お前、教育に興味があるだろう」と、清宮さんから
後輩の中竹さんにお鉢が回った。

当時は、大手政策研究機関の三菱総合研究所で、
文部科学省や教育委員会の依頼を受けた調査の仕事をしていたほか、
杉並区の新しいカリキュラム作りの支援にも携わっていた。

「学校評議員」は、個人的に学校長に意見を述べる立場。
学校評価にかかわる場合も多い。
しかし、評議員として自己紹介をする場で、「制度が意味をなしていない。
現場を知らない人が評価などできるわけがないし、
知らない人の意見を聞いてはダメだ」と20分以上もしゃべった。
研究所での企業の評価は、大がかりなものだ。
学校評価の軽さとの落差を痛感していた。
その直言ぶりが逆に、前校長の心をとらえた。

コミュニティスクール指定から4年目。
「地域が学校を支えることが、三谷小に限らず、当たり前になってきた。
だからこそ、学校運営協議会制度をしっかり押さえることが重要」

授業支援などの活動をするのが、協議会委員の役割ではない。
学校運営の基本方針や人事など重要事項に、意見を述べるのが本来の仕事。
「我々は実動部隊ではない。諮問機関だと思っている」

それを意識しながら、1年目は自ら汗を流した。
子供たちの挨拶プロジェクト、学校の図書の充実、ホームページ作りなどの
情報発信に、他の委員にも動いてもらった。

教員も巻き込んで一緒に活動をしてこそ、コミュニケーションも強まり、
互いの信頼も得られる。
最初から、教員の人事や評価に口出しをしようとしても無理」。
3年目に考え出したのは、ほめたたえる評価。
教員も、地域の人も、子供たちも、協議会として表彰する場を作ること。

しかし、「制度がなくても、地域の人が学校を支え、校長がリーダーシップを
発揮するようにならないとおかしい。
最終的には、学校運営協議会の積極的な解散が目標です」。

それは、現状の学校教育への危機感の裏返しの言葉に聞こえた。

◆なかたけ・りゅうじ
福岡県出身。2006年、三菱総合研究所を退職して、
早大ラグビー部監督に就任。2年目の昨シーズン、大学選手権を制した。35歳。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081216-OYT8T00217.htm

「男の生きがい」ストレスに勝つ?脳卒中の死亡率減

(朝日 2008年12月11日)

生きがいを感じて暮らしている男性は、精神的ストレスがあっても、
脳卒中で亡くなるリスクが大幅に低い。

秋田大が、県民を対象にした調査でこんな傾向が出た。
ストレスは、脳卒中などで亡くなるリスクを高めるといわれるが、
「生きがい効果」はそのリスクを上回るのかも知れない。
文部科学省がかかわる研究班調査の一環。

88年、秋田県大森町(現横手市)の40~74歳の住民を対象に、
健康状態をチェック。
同時に、「生きがいをもって生活しているか」、
「ストレスが多いと思うか」などと質問し、約1600人を03年まで追跡。
男女249人が亡くなった。

生きがいが「非常にある」、「ある」と答えた男性355人では、58人が死亡。
うち4人が脳卒中。
これに対し、「普通」、「はっきり言えない」と答えた男性477人、114人が死亡。
19人が脳卒中。

小泉恵医師(循環器内科)らが、年齢や血圧、喫煙歴などの影響を除いて
解析したところ、生きがいがある男性の死亡リスクは、
それ以外の男性より38%低かった。
脳卒中で亡くなるリスクは、72%も低い。
心臓病やがんによる死亡では差がなかった。

生きがいの有無とは別に、ストレスが多いと答えた人が2割ほどいたが、
ストレスの影響を考慮しても、死亡リスクを減らす効果があった。

生きがいの有無が、なぜ死亡率の差に影響するのか、
理由はわかっていない。
女性では、差がはっきりしなかった。

研究の中心だった本橋豊教授(公衆衛生学)は、
自殺率が全国でも高い秋田県で予防事業に携わっている。
「『生きがい』を通して、自殺を防ごうという取り組みは、
結果的に住民の健康水準全体を高めることにつながるかも知れない。
都市部でも、同じような傾向が出るか確かめたい」

http://www.asahi.com/science/update/1211/TKY200812110132.html

麺の材料に適したコメの新品種誕生

(サイエンスポータル 2008年12月11日)

国産のコメより、粘りが少ない新品種を育成することに、
農業・食品産業技術総合研究機構の中央農業総合研究センター
北陸研究センターが成功。

カロリーベースで40%と先進国中、著しく低い食料自給率を上げる一手段として、
米粉利用の拡大に期待が高まっている。
大きな問題点として、コシヒカリなど味のよい国産米は
麺にすると表面の粘りが強く麺離れが悪いという欠点。

粘りを強くしている原因は、国産米にアミロースがあまり含まれていない。
北陸研究センターは、国産品種の「キヌヒカリ」に
インド原産の在来種「Surjamukhi」の持つ高アミロース性を導入することで、
新品種「越のかおり」を育成

「越のかおり」は、タンパク含有率は約6%と「コシヒカリ」と
ほとんど変わらないが、アミロースをコシヒカリに比べ
ほぼ倍に近い33.1%含み、粘り気はぐっと落ちる。
2004年から06年にかけての栽培で、収量性は、
標準的な標肥区では「コシヒカリ」よりやや落ちるが、
施肥が多い場合では「コシヒカリ」並であることが確かめられた。

北陸研究センターと、株式会社自然芋そば、上越市、
えちご上越農業協同組合は、共同で「越のかおり」の製麺適性を検討し、
自然芋そば社から「越のかおり」を原料とする米麺の販売を開始。
「麺はコシが強く、切れにくく、コメ本来の味が活かされている」と
北陸研究センターは言っている。

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0812/0812111.html

モノかめば脳の働き活発に

(サイエンスポータル 2008年12月12日)

ものをかむと脳の働きが活発になることを、
自然科学研究機構・生理学研究所の研究チームが
脳波を使った実験で確認。

外国人スポーツ選手たちがプレー中、ガムをかむ行為に
合理的な理由があること裏付けた研究結果。

生理学研究所の柿木隆介教授、坂本貴和子研究員は、
P300という脳波反応を利用して、ものをかむことの効果を調べた。

P300は、何らかの刺激が与えられてから300ミリ秒(0.3秒)後に
脳波に出現する反応。
脳が活性化すると反応時間が短くなることが知られ、
臨床医学では認知症など病気の早期診断にも使われている。

健康な人に5分間、無味・無臭のチューインガムをかんでもらい、
直後に音刺激を用いてP300を測定、同時にボタン押しによる反応時間も測定。
この結果、反応時間とP300反応が出現するまでの時間が短くなり、
この運動を繰り返せば繰り返すほど、その効果は顕著。

一方、ものをかむ行為と比較するため、顎の運動はするが
実際にはものをかまない行為と顎とは関係ない指の運動(タッピング)を
したときにも同様な測定をしたが、いずれも反応はむしろ遅くなり、
P300反応出現の時間も遅くなった。
繰り返せば繰り返すほど、遅くなる傾向がはっきりした。

「メジャーリーガーが試合中にガムをかむことや、
車の運転中にガムかみを行うことによる、脳の覚醒効果の根拠が、
生理学的に証明された。
ただし、かむことで“頭が良くなる”という説の裏付けではない」

http://www.scienceportal.jp/news/daily/0812/0812121.html

2008年12月16日火曜日

奮闘する葛巻 地域医療の危機 揺れる県立病院再編案/5止

(毎日新聞社 2008年12月8日)

「これまで通り、医師を派遣していただける」
葛巻町立国保葛巻病院の鳩岡修事務局長は、
出張先の盛岡市からホッとした表情で帰ってきた。

同病院は、常勤医2人と医師3人の診療応援を得て、78病床を切り盛り。
岩手医大から派遣されている医師が定年を迎え、引き続き診療応援を要請。

同病院は、県立病院のある自治体とは異なり、町自身が経営し、
医師確保にも汗を流さなくてはならない。
医師の診療応援を担当する県立中央病院地域医療支援部長の
望月泉副院長は、「葛巻町長からは幾度も依頼を受けたが、
(紫波地域診療センターのある)紫波町長は顔を見たこともない。
県にお任せだったのでは」と温度差。

葛巻病院は、01年度に不良債権額が約2億2700万円まで膨れ上がり、
5年間の病院事業経営健全化計画を策定。
▽母子センター休止
▽給食、ボイラーなどの外部委託
▽薬の院外処方
▽退職後の不補充による職員削減--などを実行し、
06年度までに不良債権を解消。
鳩岡事務局長は、「可能な限りコストは下げた。ほとんど策は残っていない」

事務の電子化を進め、複数の診療科を利用する患者のカルテを一本化。
延べ患者数を抑えることで、1日の平均患者数を基準より引き下げ、
交付税算定上の「不採算地区」に。
年間5000万円程度の地方交付税を積み増した。

このような努力もあり、収支は改善。
医業収益に対する人件費の割合は07年度70%に抑え、
自治体病院の目安6割に近づけた。
町の一般会計から繰り入れた後の純損益も、05年度からの3年間は
年638万-3720万円とわずかだが、黒字を計上。

しかし、病床稼働率は同じ3年間で77・5%から59・5%に減少。
一般病床の1人あたり平均在院日数も25・9日(06年)と、
県医療局の平均16・6日(同、療養病床含む)に比べ回転率が悪く、
経営上好ましい数字ではない。
「高度専門医療の病院から患者を紹介されることはあっても、
ここから紹介できるところはない」(鳩岡事務局長)。

効率が良くなくても、長期療養をする町内の老人にも
ベッドを用意しなくてはならない、という考え。
薬は、長期の投与分を処方。
処方するだけの患者や1人あたりの通院回数を増やした方が収入は伸びるが、
それでは医師の事務量が増え、医師確保につながらない。

一方、県医療局の新経営計画案。
07年度98・8%だった経常収支比率は、13年度に101・6%に、
病床稼働率は79・1%から84・1%に伸ばすなど、
経営改善に向けた数値目標が躍る。

無床化後の施設活用について、岩渕良昭・保健福祉部長は、
県議会の一般質問に「民間移管は可能だ」と答弁するなど、
早くも計画策定後の運営形態に注目が集まる。

鳩岡事務局長は、民間移管やサービスカットの前に公立でもできることはある。
町が他の事業と医療、どちらを優先するのか。
病院も町づくりの一つ。
町が行うことで自由度はあるし、町民の誇りにもなったんじゃないかな」

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84580

犬も「公平」重んじる ただしご褒美もらえればOK

(CNN 12月13日)

犬も人間と同じように、公平を重んじるらしいという研究結果を、
ウィーン大学の研究チームが米科学アカデミー紀要(PNAS)に発表。
研究チームは、「犬のストレスを避けるためには、
平等な扱いを心がけた方がいい」とアドバイス。

実験は、同大の研究所で飼育している犬のうち29頭を使い、
2頭を1組にして並ばせて「お手」をさせた。
1頭だけにご褒美の餌を与え、もう1頭には何も与えなかった場合、
餌をもらえなかった方は以後お手をしなくなり、
そっぽを向いてしまうことも。

2頭とも餌を与えた場合や、1頭のみで実験して餌を与えなかった場合は、
反応に変化はなかった。

同じような反応は霊長類でも報告されているが、
犬は霊長類と違ってご褒美の内容にはこだわらないらしいことも分かった。
もらえる餌がソーセージでもパンでも、犬の反応は変わらなかった。

霊長類の場合、ご褒美の内容が不公平だと判断すると、
餌を拒絶することもあるが、犬は拒否はしなかった。

犬にとって大切なのは、ご褒美をもらえるかどうかであって、
好みは二の次になるのだろうと推測。
不公平なご褒美は拒否するという代償は好まないようだと解説。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200812130001.html

乳酸菌研究発表会 免疫力アップなど高まる期待

(毎日新聞社 2008年12月11日)

人の腸内には、約500種に及ぶ細菌類がいる。
その中で「善玉菌」の代表格とされ、注目度の高い「乳酸菌」の
最新の研究成果などを報告する「乳酸菌研究発表会」(信和薬品・主催)。
乳酸菌は腸内での「働き」で脚光を集め、広く健康飲料などで使われているが、
発表会では「人が摂取する乳酸菌は生菌である必要はあるのか」など、
最先端の研究成果が披露。

◆特別講演「バイオジェニックスの時代へ」--東京大学名誉教授・光岡知足さん

私は、1997年に「バイオジェニックス」を提唱。
それまでは、腸内の細菌叢(フローラ=群生)によって
体に良い効果をもたらす「プロバイオティックス」と、
腸内の有用菌の増殖や活性化を促す「プレバイオティックス」という
考え方が一般的。
この二つが、細菌・微生物や食品関係の研究者に広く受け入れられていた。

バイオジェニックスは、「腸内細菌叢の助けを借りる」、「細菌叢を介して」
という発想は取らない。
整腸作用やコレステロール低下作用などの生体調節・防御、疾病予防・回復などに
「ダイレクトに働く」という着眼に立つもの。

1908年、免疫の先駆的な研究でノーベル生理学医学賞を受賞したのが
ロシア生まれのメチニコフ博士
彼は、ブルガリアに長寿者が多いという事実に着目、
乳酸菌をたっぷり含むヨーグルトの「長命効果」を示唆したことは有名。
乳酸菌・飲料の研究では、「生きた菌」こそが有用という考え方が根強く、
プロバイオティックスは「生きた細菌・微生物」に限定した方向で
研究・開発が進められている。

私はそうは考えなかった。
菌が生きているか死んでいるかは関係なく、さまざまな働きは
菌体成分そのものに由来する。
この点、実はメチニコフも「死んだ菌でもいい(働きがある)」と書き残している。

生後すぐの乳児の腸は無菌状態だが、1日過ぎると大腸菌や「善玉菌」の
代表・ビフィズス菌が出現し、ビフィズス菌が優勢になって腸内を安定。
ビフィズス菌には腐敗菌などを抑え、腸の活動を活発化させる働きがあり、
同時に、乳酸を作る力もあるので関心が集まった。

例えば、生きた乳酸菌を含む飲料と変わらない人気を持つ殺菌乳製品では、
乳酸菌は生きていない。
乳製品は必ずしも、乳酸菌の生死に制約されていないのが実情。
死んだ菌の方が、腸内の免疫機能を高める力が強いという見解も。

食品の機能には、生存のため栄養を補給すること、味覚を楽しむことなど。
しかし、90年代に入って、栄養や味覚以外の目的を掲げた
「機能性食品」が登場し、脚光を浴びることに。
この流れの中から、腸内のバランス改善を図るプロバイオティックスや、
腸内細菌叢の調節や強化を狙うプレバイオティックスに注目。

私たちのバイオジェニックスには、前二者にはない機能、働きが期待。
いま多くの研究が進められているが、目標になっているのは例えば、
腸内の免疫機能の強化、発がん性物質の吸着、生活習慣病の予防など。
現代生活はストレスが多く、ストレスはアドレナリンを多く出して、
交感神経を刺激する。
その結果、免疫力が弱まる。
バイオジェニックスは、こうした分野でも力を発揮するだろう。

機能がプラスに働くのに必要な菌の量はどれほどか、
安全性の問題はクリアできているか、なども大きな課題。

◆ナノ型ラブレ菌の可能性--
NPO法人日本サプリメント臨床研究会代表理事・長谷川秀夫さん

私たちは、植物性乳酸菌の一種、ラブレ菌の「ナノ化」(極小化)に成功。
その概要を報告し、併せてその意義について説明したい。

ラブレ菌は、財団法人・京都パストゥール研究所
(現ルイ・パストゥール医学研究センター)の故岸田綱太郎博士が、
京都の酸茎漬から分離・発見した乳酸菌。

体に侵入したウイルスが細胞を刺激すると「産生」され、
ウイルスの増殖を抑えるのが体内の「インターフェロン」で、
ラブレ菌には、インターフェロンαの「産生能」を高める働きがある。
リンパ球の免疫に携わる細胞の活動を活性化する働きがある。

ラブレ菌の粒子の大きさが8-10ミクロンを超えると、免疫力が弱まる。
体内のインターフェロンαも、このラブレ菌が小さいほど、
その産生能が高まっていくことが判明。

私たちは、ラブレ菌の表面がプラスに荷電していることに着目、
菌体を1ミクロン以下に小さくすることに成功。
ラブレ菌には、凝集する傾向があるので
「ナノ化」のための技術は容易ではなかったが、
培養・加工工程をある特定の条件に調整することで実現。

この結果、新型のラブレ菌は数ミクロンの従来菌に比べ、
インターフェロンαの産生能を5・6倍に高めることができた。

光岡、菅両博士が指摘されたように、このナノ型ラブレ菌の働きは、
生きていても死んでいても同程度であることも分かってきた。

私たちのラブレ菌を巡る研究は、乳酸菌加工品として結実してきたが、
今後は、より高機能のナノ型ラブレ菌を用いた機能性食品の追求の一方、
医学・薬学の世界も視野に入れた活動を心掛けていきたい。

◆複雑な腸内作用を追って--NPO法人日本サプリメント臨床研究会理事・菅辰彦さん

ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌は、消化器内で出る胃酸や胆汁で死ぬ。
私が研究を続けてきた乳酸菌飲料は、特殊な、胃酸や胆汁では死なない
乳酸菌が基になっている。

乳酸菌は、食物を「腐敗」から「発酵」へと移行させる働きを持ち、
整腸効果もそこに由来。
腸内で増殖し、多くの量の有機酸を出すことで有害菌の増殖を抑え、
腸内を正常化して、腸管の動きを活発化させる、と言われてきた。

乳酸菌が腸内で生き続け、増殖するという証拠はいまだに報告されていない。
乳酸菌飲料を飲むことで、乳酸菌が増殖するのなら、
ある日1本を飲めば、後は自然に乳酸菌が増えるのを待てばいいことに。
実際、2-6歳の幼児に乳酸菌飲料を飲ませて便を調べると、
乳酸菌の70%は生きていなかった。

小腸を食物が通過するのは3時間ほどなので、
乳酸菌が増える時間的な余裕はない。
大腸内では、1000倍にも及ぶビフィズス菌などとの栄養の取り合いに
乳酸菌が勝てる余地はない。

(1)生きた乳酸菌を腸内に入れても増殖しない
(2)生菌にも死菌にも整腸効果がある
(3)生菌の中に混ざっている死菌が整腸効果に寄与している可能性が高い、
ことなどが推測。
……………………………………………………………………………
◇光岡知足さん(みつおか・ともたり)
1958年東大大学院修了。同農学部教授を経て名誉教授。
フラクトオリゴ糖の腸内フローラ改善効果を発表。
バイオジェニックス連絡協議会特別顧問。農学博士。
専攻は細菌分類学、微生物生態学。
2003年安藤百福賞大賞、07年メチニコフ賞。
78年刊行の「腸内細菌の話」(岩波新書)はロングセラー。
……………………………………………………………………………
◇長谷川秀夫さん(はせがわ・ひでお)
1988年京大大学院修了。バイオジェニックス連絡協議会議長、
明海大歯学部客員准教授、理化学研究所客員研究員などを兼務。薬学博士。
2001年和漢医薬学会奨励賞、03年韓国薬学大賞。
……………………………………………………………………………
◇菅辰彦さん(かん・たつひこ)
バイオジェニックス連絡協議会議員を兼務。農学博士。

http://www.m3.com/news/news.jsp?sourceType=GENERAL&categoryId=&articleId=84805

地域が支える学校(10)祖父母の力授業に深み

(読売 12月13日)

祖父母の団体が授業を支援する学校がある。

京都府京丹波町の町立丹波ひかり小学校で、2年生の生活科の授業には、
保護者とともにかっぽう着やエプロン姿の年配女性3人が加わった。
同小に通う孫がいる祖父母らで作るGTAのメンバー

子供たちが畑で自ら育てた大豆を石臼ですりつぶし、きな粉にする。
「ゆっくり回しや」、「指挟まれないようにな」。
3人が子供たちにやさしく声をかけて一緒に石臼を回すと、
「きな粉のにおいがする」と子供たちから歓声が上がった。
2人の孫を通わせる田端康江さん(65)は、
「何十年も前に少しやったことがある程度だったが、交流が楽しい」と笑顔。
大豆を使ったみそ造りでも、GTAの力を借りることに。

GTAの誕生は、同小が2006年、地域住民らが学校運営に参画する
コミュニティスクールに指定されたのがきっかけ。
以前から年1回の祖父母参観はあったが、
祖父母の持つ知恵や技能を授業に生かせないかと考えた。

全児童を通じて手紙で協力を呼びかけると、
「紙細工ができる」、「昔のおもちゃなら作れる」と応じる人が出てきた。
祖父母参観では、百人一首やわらび餅作りなど6分野で先生役に。
「元気をもらえたし、先生の苦労も分かった。できる範囲で協力していきたい」。
参観後に出た意見が、同年10月のGTA発足につながった。

メンバーは現在23人。
裁縫や農作業などで教員の支援をしたり、戦争体験を話したり。
学校が呼びかけると、メンバー同士や得意な知り合いに声をかけて仲間を集める。
「教員も知らない、幅広い知識や技を持っている。体
験者から学ぶことで深みが出る」と担当の堀下みゆき教諭(47)。

2000年に2校の統合でできた同小は、敷地内に地域住民が利用できる
「地域交流センター」を設けるなど、地域への開放を意識して作られた。
住宅地とは離れた高台の上にある上、不審者対策もあって、
開放が思うように進んでいなかった。

指定をきっかけに、子供や孫がいない地域住民の団体約30人による
「みのり会」も誕生。
組織を作ることで、活動が単発ではなく、継続的になっている。
朝の本の読み聞かせ活動などもあり、校内には
祖父母や地域住民の姿が毎日見られる。
授業で知り合った子供たちから「今度はいつ来る?」と、
町の中で声をかけられる場面も。

「活動を通じて、『学校のために何かやってやろう』という気持ちが
住民の中に出てきたと感じる。
前と比べて、地域と学校のつながりは深まっている」。
学校運営の方針を話し合う学校運営協議会の山崎博会長(75)は
目を細める。
法貴雅男校長(55)も、「より学校を理解してもらえる。
地域に見られることで、学校側も緊張感が生まれる」。
開かれた学校作りが着実に歩みを進めている。

◆GTA

「G」はグランドファザー・グランドマザーを意味し、PTAにならって名付けた。
孫が通っていれば、誰でも自由に参加できる。
鳥取県南部町立会見小でも、同様の名称で、
祖父母の団体が児童の学習を支援。
同小では、入学時に希望を聞いて入会してもらう。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20081213-OYT8T00213.htm

夢や空想まで映像化?脳血流パターンから画像再現に成功

(読売 12月11日)

人が見た文字や図形を脳から読み取り、画像化する技術を、
国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)などが開発。
11日付の米科学誌ニューロンに発表。

将来、睡眠中の夢や、頭の中で空想した内容などを、
映像にできる可能性がある。
人が目で見たものは、網膜で電気信号に変換され、
大脳の視覚野で映像化される。

同研究所の神谷之康・神経情報学研究室長らは、
100個のマス目に白と黒のモザイク模様が並ぶ画像400枚を被験者に見せ、
脳の活動(血流の変化)を、機能的磁気共鳴画像(fMRI)という装置で計測。

そのデータをコンピューターで分析し、脳の血流変化のパターンから、
見たマス目が白だったか黒だったかを類推する技術を編み出した。

この方法を用いて、アルファベットや図形を見せた人の脳から読み取った
情報を基に、元の文字や図形を再現することに成功。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20081211-OYT1T00018.htm

2008年12月15日月曜日

母親の愛に応える免疫系

(Science 12月5日)

母親の愛に応える免疫系
Immunity: Learning to Love Your Mother

妊娠している女性では、母体の細胞が胎児の体内に入るが、
胎児の免疫系は、後年獲得される体外からの異物を攻撃する
免疫系とは異なり、母体由来の細胞に対して攻撃せずに
免疫寛容を獲得することを学習していることが報告。

この免疫寛容は、少なくとも成人期初期まで持続することから、
臓器移植を必要とする患者が、母親に由来する組織に類似した
組織に対して免疫寛容を示す理由が説明できるかもしれない。

これまで、発達中の胎児の免疫系が異物に対して、
非常に高い免疫寛容を持っていることに気づいていた。
しかし、ヒト胎児の免疫系にそれ以上のことはほとんどわかっていない。
マウスを使った研究は、これまでいくつか行われてきたが、
マウスとヒトの免疫系の発達速度は異なるため、
両者の子宮内での異物に対する反応にはかなりの違いがある。

Jeff Moldらは、ヒトの組織を研究して、驚くほど多量の母体由来の細胞が
胎児のリンパ節内に侵入していることを報告。
そこでは、侵入した細胞が一群の制御性T細胞を誘導して
母体由来細胞に対する胎児の免疫反応を抑制。
マウスの免疫系とは対照的に、ヒト胎児のT細胞は、
母体由来抗原の刺激に反応してみごとに制御性T細胞になる傾向。

誕生後、これらの制御性T細胞は母体由来細胞に対する免疫反応を
抑制し続けることができると報告。

"Maternal Alloantigens Promote the Development of Tolerogenic Fetal Regulatory T Cells In Utero,"

by J.E. Mold; T.D Burt; M.O. Muench; K.P. Beckerman; M.P. Busch; T.H. Lee; D.F. Nixon; J.M. McCune

at University of California, San Fransico in San Francisco, CA; J. Michaelsson at Karolinska Institutet in Stockholm, Sweeden; K.P. Beckerman at Albert Einstein College of Medicine in Bronx, NY.

http://www.sciencemag.jp/highlights.cgi#574