2009年7月7日火曜日

高校再生(2)校長の熱意 生徒変える

(読売 6月24日)

元女性校長らの奮闘を土台に、生徒同士が支え合う学校へと変わった。

教室には私語もなく、意欲的に問題に取り組む生徒らの姿。
広島県立安西高校での日本史の授業。
三堂和生教諭(57)の問いかけに、生徒は4人1組になって
意見を出し合い、教科書を参考に答えを出した。
まじめな生徒の姿に、三堂教諭は「全く別の学校になったよう」

「こんな学校は見たことがなかった」
2001年から教頭や校長を務めた山広康子元校長(60)。
生徒は、化粧やアクセサリーなどで格好は乱れ、
授業中でも自由に教室を出入りした。
赴任の翌月、6件の暴力事件が連続して起こった。
たまり場だった玄関付近には、菓子袋や、
げた箱からこぼれ落ちた教科書が散乱。

それ以上に驚いたのが、教師のあきらめムード。
「1学期が過ぎれば静かになりますから」
課題ある生徒は入学当初に辞めることが多く、
教師からそんな言葉が漏れるほど。
01年度の中退率は、14・8%(86人)。

生徒指導担当の教頭だった山広さんは、
やればできるとお経のように唱えていた。
中断していた遅刻指導を始め、校内を巡回しては生徒を注意し、
ごみを拾って美化に努めた。
「時には問題を起こした生徒と一緒にご飯を食べたり、自宅に行ったり。
その子の気持ちをくもうと思った」

その年の年末、NPO団体と校内のトイレ掃除を行った時のこと。
「やってみて気持ち良かったので、またやりたい」
必死で掃除する大人の姿に感化されたのか、
暴力事件を起こした生徒らがそんな言葉を口に。
当番制だった校内の掃除を全員でやるようにしようと、
教師の方から提案が出るようになってきた。

「当たり前のことを当たり前にできるようにと思った。
こちらが本気の姿勢を示せば、生徒に伝わる」

「生徒は落ち着きを取り戻し始めていたが、意欲の面では今一つ」
3年前に着任した才木裕久前校長(55)は、そう感じていた。
学校に対する生徒の意欲をかき立てることが、次の課題。

「学びの共同体」を参考に、2年前からすべての授業で始めたのが
グループ学習だった。
1人では難しい問題を、4人1組で協力して解く。解ければ自信になる。
「仲間が待っていると感じられれば学校への意欲は高まる。
支え合う、認め合う仕組みが必要だった」

昨年6月の文化祭。
各クラスが出店するテントで、多くの生徒が一緒に活動する姿。
以前は当番の生徒しかおらず、校内で所在なげに、
たむろしていた生徒が見られた風景はそこになかった。

昨年度の中退率は3・7%(20人)まで下がり、入試の倍率も上がった。
「今度は、社会人として必要な力をつけさせたい」と、
奥山雅大校長(55)は考えている。

◆学びの共同体

生徒同士の顔が見えるように、机を「コ」の字形に並べ、
時に男女4人1組のグループで学習。
提唱する東大大学院の佐藤学教授によると、
授業レベルは高く設定するが、低い学力の生徒の疑問を
グループ内で解消することで、すべての生徒の学ぶ権利を保障できる。
10年前から各地で始まり、現在は全国約3100の小中高校で実践。

http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20090624-OYT8T00294.htm

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