2009年7月9日木曜日

米燃費規制、ゴーン氏が狙う逆転劇

(日経 2009-06-29)

GMの法的整理が進む米国。
自動車市場はまだ厳冬期が続くが、
自動車メーカーの間で少しずつ差が開いてきた。
不況を脱した後にやってくる「環境の時代」への対応。

「ポテンシャルは大きい」
日産自動車のカルロス・ゴーン社長兼最高経営責任者(CEO)は、
米国での電気自動車事業への期待感。

日産は来年、電気自動車を商品化するが、
日本での量産とほぼ同時期(2011~12年)に米国でも現地生産。
日本の自動車大手は、金融危機以降、生産能力の拡大につながる
投資を先送りしているが、ゴーン社長は「電気自動車は別枠」と即断。

インセンティブも働いた。
電気自動車の米国生産には、オバマ政権から16億ドル(1520億円)の
公的融資が出る。
引き出したのは、ゴーン社長。
大統領選のさなか、オバマ陣営にアプローチし、昨年末には
「(融資の方向で)いい感触を得ていた」(関係者)。

「活用できる公的資金は、世界中で確保せよ」
そんな指示を出していたゴーン氏の本当の狙いは、米国の政府資金。
危機後をにらんだ果敢な経営判断という点では、
機敏なロビー活動を含め、評価していい。

日産は、電気自動車の米国での本格展開で、
オバマ大統領が導入の4年前倒しを決めた
新燃費規制の対応に大きく前進。

新基準は、乗用車・トラックを合わせた全社平均で、
1ガロンあたり35.5マイルと、日欧の長期規制と比べても厳しい。
現状では、最も基準値に近いとされているのは、
ハイブリッド車を持つホンダ(現在1ガロン26マイル程度)と
トヨタ(同24マイル程度)だが、ガソリンを使わない電気自動車が増えれば、
日産が一気に優位に立つことも不可能ではない。

日本勢に比べ、米国勢は動きが鈍い。
GMは、再建の目玉、電気自動車「VOLT」の量産時期が見えてこない。
米政府から60億ドル(6315億円)の融資を受ける
フォード・モーターもハイブリッド車を持つものの、
「35.5」のハードルをどう越えるのか、具体策が見えない。

最も心配なのは、現金の流出が止まっていない点。
米国でも、3500ドルから4000ドルのスクラップ・インセンティブ
(廃車にして新車を買う際に支給する補助金)制度ができたが、
GM車はさらに7000ドルから8000ドル値引きして売る
ディーラーが少なくない。
日本車の値引き率ははるかに小さい。

GM、クライスラーの再建は緒についたばかり。
この状況が続くとなると、電気自動車やハイブリッド車どころではない。
ブッシュ時代の遅れを取り戻すのは重要だが、
今の状況で燃費規制を強めたら、オバマ大統領も米国勢の力不足を
目の当たりにする場面が増えそう。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090626.html

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