(サイエンスポータル 2009年6月25日)
文部科学省は、今後のiPS細胞研究について
具体的な目標を示したロードマップを策定。
山中伸弥・京都大学教授らが樹立したiPS細胞は、
再生医療だけでなく、生命の仕組みの解明から疾患研究や創薬など、
基礎研究から臨床研究、産業応用まで幅広く活用されることが期待。
ロードマップでは、研究分野を4つに大別し、
約10年後の到達目標を設定。
初期化メカニズムの解明では、5年以内にiPS細胞の初期化の
分子メカニズムの解明を進め、iPS細胞とは異なる新たな
多能性幹細胞の樹立を目指す。
標準iPS細胞の作製と供給(標準化)では、
1年以内にiPS細胞の性質を明らかにするための評価項目を策定、
2年以内に、高品質でリスクの少ないiPS細胞の作製方法の確立と
その最適化、高品質でリスクの少ないiPS細胞の評価方法の確立、
iPS細胞の体系的な評価結果に関する情報を蓄積・解析する体制を構築。
3年後以降、高品質でリスクの少ないiPS細胞を国内外に
安価かつ同条件で配布できる。
疾患研究・創薬のための患者由来のiPS細胞の作製・評価、
バンクの構築では、2年以内に、疾患研究用iPS細胞の
作製方法の確立とその最適化、評価方法の確立、
疾患特異的iPS細胞バンクを整備し、2年後以降、
疾患特異的iPS細胞の国内外研究者への配布を開始。
5-10年後の目標として、遺伝病等の先天的疾患の患者の細胞から
作製されたiPS細胞を用いた病態の再現と解明、
後天性疾患の患者の細胞から作製されたiPS細胞を用いた
病態の再現と解明を掲げた。
再生医療については、iPS細胞バンクを5年以内に構築し、
4年後以降に前臨床研究用として再生医療用iPS細胞の分配を始める。
各部位別に目標を掲げ、中枢神経系は、2-4年で神経細胞への
分化誘導技術を確立し、3-5年程度で霊長類への前臨床研究を、
7年後以降にヒトへの臨床研究を開始する。
角膜については、5年以内にはモデル動物への前臨床研究、
7年以内にヒトへの臨床研究を開始。
網膜色素上皮細胞は、モデル動物への前臨床研究は2年以内に、
5年以内にヒトへの臨床研究を、
視細胞については、3-4年で前臨床研究を進め、
7年以内にヒトへの臨床研究を開始する。
血小板と赤血球については、血小板で5-8年程度、
赤血球では10年後以降、造血幹細胞は7年後以降、心筋は5-7年程度、
骨・軟骨、骨格筋は、10年後以降、肝臓細胞や膵ベータ細胞、
腎臓細胞などの内胚様系細胞についても10年後以降と、
ヒトへの臨床試験開始目標年を設定、
臨床試験開始に至るまでのiPS細胞からの分化誘導技術の確立や、
モデル動物への前臨床研究開始の目標時期も示している。
文部科学省は、今回のロードマップについて、
すでに多額の予算が投じられ、iPS細胞研究ネットワークや
ライフサイエンス委員会の意見を踏まえ、
国民への説明責任を果たす意味で策定した。
塩谷立・文部科学相は、
「iPS細胞研究の成果が少しでも早く臨床応用され、
難病に苦しむ世界中の患者の福音となるよう、
研究者に一層の主体性を持って研究に取り組んでもらうとともに、
文部科学省も必要な施策の実施に努める」
http://www.scienceportal.jp/news/daily/0906/0906251.html
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