2009年3月4日水曜日

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/5 戦力向上、安定経営

(毎日 2月21日)

競技力向上が先か、安定経営が先か。
「ニワトリと卵」のような難題が、Jリーグ入りした各クラブを悩ませている。
00年以後に参入した7クラブのうち、J1昇格を果たした
経験を持つのは横浜FCのみ。
多くのクラブで競技力、営業力強化が進まず、経営に影響を与えている。
昨年12月、半数近い選手を解雇したFC岐阜徳島ヴォルティスが象徴的。

07年、J入会が承認され、昨季はJ2で戦った岐阜は、
JFL時代等を含めた累積負債が約3億円。
元日本代表選手で広島総監督、日本サッカー協会技術副委員長などを務め、
07年に就任した今西和男社長は、「強化を急ぎすぎた。
『イケイケドンドン』の、つけがまわった」
選手獲得に予算を割いても成績が上がらず、観客動員も伸び悩んだ。
昨年12月、Jリーグから5000万円の融資を受ける事態。

今季、開幕に向けて経営方針を一変。
「給料の高い選手はお引き取り願い、『安い選手』をそろえた」
新たに15選手を獲得、約450万円だった平均年俸を約300万円まで抑えた。

不況の影響もあり、ユニホームの「胸スポンサー」獲得のメドは立たない。
「最低、昨季のスポンサーは確保したかったが、減額や辞退も出ている」
今西社長は、地域貢献活動を重視する考え。
個人の寄付を、1口1000円で受け付ける「You&Me(夢)募金」を開始。
地元の理解を得て観客を増やし、入場料収入を確保する。
「その先に、チーム力がついてくるはず」。そう信じている。

大塚製薬をメーンスポンサーに持つ徳島は、身の丈経営を貫き、
08年度の収支も黒字になる見込み。
戦績は、J2昇格初年度(05年)の9位が最高、以後は3年連続最下位。
「屈辱的な現状」、「『金がない』という言い訳は通らない」など、厳しい声も。

今季開幕に向け、実績のあるGK高桑(横浜マ)、FW徳重(京都)らを獲得。
サポーターとクラブ幹部の意見交換会では、新田広一郎社長が
「目標は(J2の)6位以内」とぶち上げ、中田仁司強化育成部長は
「選手の質を高めるため、大きな補強をした」

サポーター側も、「これだけ期待できるのは初めて」と歓迎。
大補強が成績向上と観客増に結び付く保証はない。
新田社長もこう訴えた。「大不況の中で、(収入を)スポンサーだけで
賄うわけにいかない。入場者収入で選手を獲得するのが、健全経営の姿。
多くの皆さんに支えてもらいたい」
==============
◇昨季のJ2ホームゲーム1試合平均観客数◇
(1) 仙台   14080人
(2) 広島   10840人
(3) セ大阪  10554人
(4) 甲府   10354人
(5) 福岡   10079人
(6) 鳥栖    7261人
(7)★横浜FC  6793人
(8) 山形    6273人
(9) 湘南    5994人
(10)★熊本    5279人
(11)★草津    4215人
(12)★徳島    3862人
(13)★岐阜    3745人
(14)★愛媛    3704人
(15)★水戸    3044人
※★は00年以後にJリーグに参入したチーム

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/21/20090221ddm035050007000c.html

2009年3月3日火曜日

英ピアソン日本法人のデラハンティ社長 「デジタルが日本の教育を変える」

(日経 2月19日)

世界最大の教育出版社、ピアソン・エデュケーション(本社英国)は、
デジタル教材の開発など、紙の教科書にとどまらない教育事業を展開。
教育への関心が高いアジアを有力な市場とみて、積極的な投資。
「我々は変革の最先端をいく」と、ブレンダン・デラハンティ社長
日本市場の開拓戦略などを聞いた。

——日本市場の位置づけと特徴は。

「日本は、ピアソンにとって7番目の市場。
最大は米国で、英国、カナダ、オーストラリア、スペインと続く。
アジアでは、香港と日本が売上高でほぼ同規模。
日本と、それ以外の国で違う点が1つある。
日本以外では、学校教育向け教科書を発行。
日本では、英語や日本語など語学学習者向けに特化している

「教育市場という観点でみれば、日本は世界で米国に次ぐ第2位。
日本は、塾など学校以外の教育出費が多い。
中国は、人口が多いものの1人当たりの教育費はまだ少ない」

——少子化により市場が縮小しているが。

「日本の市場は興味深い。
人口減少で、学校教育などの市場は確かに縮小。
欧米に比べ、伝統的な教育制度が生き残っている点も日本の特徴。
教室で先生が教壇に立ち、40—45人の生徒が一斉に学ぶ」

「生徒は本来、1人ひとりが目をかけられるべき。
個人教授に近い教育法が、生徒の力を引き出し向上させる。
教室でも、技術革新が起こるべきだ。
先進技術に秀でた日本人がなぜ、教育分野ではITを積極活用しないのか、
パラドックス(矛盾)だ」

——欧米での教育出版のデジタル化の現状は。

ピアソンの『ブレンディッド・ラーニング(組み合わせ学習)』という
指導法が学校現場などに導入。
先生が教える伝統的なやり方と、最先端のオンライン学習をミックス。
米国では、数学の授業で、紙の教科書とオンラインの問題集を組み合わせ。
教科書に付与された固有の数字で、オンラインの問題集にログインする仕組み。
生徒は、自宅のパソコンで問題集を解き、
得意な分野ではどんどんより難しい問題を自動的に出題。
進ちょく状況や成績は、教師もオンラインで把握できる。
生徒が苦手な分野があれば、教室での教え方を変えられる」

「ピアソンは、オンラインデータを収集。
ネットとの組み合わせ学習は好成績を生み出し、
紙だけの学習よりもはるかに効果がある。
組み合わせ学習の手法は、心理学や経済学などを含め、
全部で43科目が確立」

「生徒が電話で試験を受け、コンピューターが判定する我が社のテストも活用。
試験官の資質に左右されず、客観的な判定が可能。
エッセーを、コンピューターが採点する事業も米国で行っており、
毎年3000万件のエッセーを採点。
英国では、高校生の学習レベルを測る全国テストに活用」

——日本への導入の予定は。

「アジアでは、中国語や日本語などへの対応が難しく、導入が遅れている。
日本でも、大学や高等専門学校など英語学習で取り入れている。
新たな技術が市場に受け入れられるかどうかは、先生の受け止め方による。
デジタル教材を日本に積極投入したいと考えており、
ここ1年で実地調査を行う。
高校の生徒などにメリットが大きいだろう」

「日本市場でも、『TOEFL』と競合する新たな英語テストを秋から導入。
グループの様々な技術を集めて、サービスを開発できるのが我々の強み」

——出版だけでなく、ピアソン傘下の経済紙「フィナンシャル・タイムズ(FT)」
も電子事業に注力。

「ピアソンは、ピアソン・エデュケーションのほか、
FTや書籍の「ペンギン」事業を擁している。
FTは10年前、収益の80%が広告収入。
不況になると、リスクが高くなる事業モデル。
最近は、有料のウェブサイト購読者が増えている」

「書物を生活からなくすことは、当面は不可能。
個人的にも読書が好きで、デジタル機器も使うが、本も読む。
10—20代の人は、携帯電話などの電子機器で文字情報を得るのが当たり前に。
音楽のiTunesのように、新たなダウンロード法の変革が起これば、
ある時点で電子書籍が一挙に普及する可能性はある。
アマゾンの『キンドル』などがあるが、ドイツの企業が開発した、
薄い紙のようなディスプレーの電子書籍機器が1番感触がいい。
使い勝手のいいものが開発されれば、紙の売り上げは減少が避けられない」

電子書籍の成功は、出版社に恩恵をもたらす。
第1に、直販ができることで取次店への手数料がなく、利益率が高まる。
第2に、紙や製本のコストが省ける」

——主力の「ロングマン現代英英辞典」にはどのようなIT技術が活用?

「ピアソンには、コーパスという言語データベースがある。
英語や日本語の話し言葉や書き言葉をネットやメディア、日常会話などから
収集し、ロングマンの英英辞典や英和辞典の製作に生かしている。
言葉が使われる頻度も分析し、最重要の1000語や3000語などを指定。
面白いのは、語学学習者の言い間違いの事例も収集していること。
隠しマイクを服につけて、自然な会話を収録するほか、
ネットのブログからも言葉を集めている。
自然な日本語や英語による辞書が可能な秘密がここにある」

「言葉は日々変わるもの。教育も同じだ。
日本の教育にはリスクがある。
革新的な教え方を取り入れていかないと、今はハイレベルな教育でも、
今後は他の国に追い抜かれるかもしれない。
我々のスタッフはベトナムで、現地政府と英語教育法について話し合う。
サウジアラビアやエジプト、中国でも同様に協力。
日本でも、文部科学省との協議を進めたい。
テクノロジーは、教え方を変えると理解してほしい」

「ピアソンは、IT技術に投資してきた出版社。
我々は、変革の最先端を行く。
ピアソンは、1990年代まで総合商社のようだった。
ウエッジウッド社やフランスにワイン畑まで持っていた。
教育とメディアに絞って事業の選択と集中を進め、
出版事業に必要な最先端技術に投資。
競合他社は、投資しようとしても追いつくのが難しい状況。
教育を向上させるために、紙にこだわらずデジタル化を進めていく」

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/interview/int090218.html

地熱発電に国が本腰 本県での事業拡大期待

(岩手日報 2月28日)

国は、クリーンエネルギーである地熱発電の開発支援に。
2030年度の発電能力を、現在の2-3倍に引き上げる目標を打ち出す方針。
国立公園内の開発促進や、「電気事業者による新エネルギーの利用に
関する特別措置法」(RPS法)で、地熱発電の認定拡大なども検討。
国内有数の地熱発電地域の本県にとって、開発支援に期待。

地熱発電は、CO2をほとんど排出しないため、
温暖化防止からも優れたエネルギー。
開発費用がかさむこともあって1999年以降、
国内で新規発電所は建設されていない。

経済産業省は開発を促進しようと、地熱発電に関する研究会を設置。
本県の2カ所を含む18地熱発電所の出力は53万キロワットで、
国内発電能力の0・2%にとどまるため、
30年度の目標を大幅に引き上げる方向性を打ち出す。

支援策として、国立公園内での開発規制緩和、
電力の買い取りを電力会社に義務づけるRPS法で地熱の認定を拡大、
発電所建設費の補助率引き上げ-などを検討。

産業技術総合研究所によると、国内の地熱資源量は2347万キロワット。
81・9%が国立公園で開発規制を受け、規制緩和や、公園外から掘削して
公園内の熱源を活用する手法なども検討。

現在のRPS法では、大規模な地熱発電所は認定の対象になっていない。
来年は、同法の見直し時期に当たるが、
前倒しで地熱発電の認定拡大も視野に入れる。

経産省電力基盤整備課は、「今のままでは、地熱は30年度の
エネルギー需給見通しでも横ばい。
純国産の再生可能エネルギーとして潜在力も高いので、
事業化に結び付けていきたい」

本県では、松川地熱発電所(八幡平市)が国内で初めて運転を開始。
葛根田地熱発電所(雫石町)と合わせた出力は、10万3500キロワット。
安比や八幡平地区などでも地熱発電の調査を行っているが、
事業化に至っていない。

県の新エネルギービジョンでは、10年度の導入目標を12万キロワット。
県資源エネルギー課の吉田博特命課長は、
「地熱開発には、時間もコストもかかる。
制度の緩和も含めた国の支援が欠かせない」と期待。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090227_6

減量はカロリー次第、炭水化物や脂肪はOK…米研究所

(2009年2月26日 読売新聞)

米国立衛生研究所(NIH)の研究チームが、
「豊富な食物繊維など心臓に良い食事ならば、
体重の減量は摂取カロリー次第で、炭水化物が多くても
脂肪が多くても変わらない」という結果を、
米医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に発表。

研究チームは、30-70歳の男女の肥満者811人に、
4種類の減量法のいずれかを試してもらった。
4種類は、脂肪、たんぱく質、炭水化物の3大栄養素の割合を変えたもの。
どれも食物繊維が多く、心臓に悪い飽和脂肪酸とコレステロールが少ない。

摂取カロリーや運動の目標を各自設けて取り組んだ結果、
2年間にわたって平均4キロ・グラムの減量効果を持続できた。
効果は、3要素の割合には関係なく、
カロリーの摂取量と消費量の差に左右された。

別のチームが一昨年、女性に様々な減量法を1年間比較して、
「炭水化物を減らすのが最も効果的」という結果を発表。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/26/92607/

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/4 クラブ経営、地域にシフト

(毎日 2月20日)

昨年12月、J1リーグ最終節で敗れJ2降格が決まった
東京ヴェルディのサポーターは試合後、7時間半にわたって
味の素スタジアムに残り、クラブ幹部に説明を求めた。
「現場の意向を無視した補強、解雇の責任はどこに」
などと書かれたメッセージとともに。
だが、それは混迷の一端に過ぎなかった。

不況の波が押し寄せていた。
クラブ運営会社の98・8%の株式を所有する日本テレビ放送網が、
昨年9月の中間連結決算で12億円の赤字を計上。
同社として37年ぶりの赤字転落は、東京ヴへの支援縮小に。
東京ヴの萩原敏雄社長は、日テレの全面撤退こそ否定するが、
「業務委託費」名目で多額の支援を受けてきた日テレだけを頼ることはできず、
「今後は潤沢な資金が下りてくることはない」(東京ヴ広報宣伝部)。

萩原社長は、「多くの株主がチームを支えるようになった方が、
親会社に頼らない経営に近づく」と、今オフは新たな株主探しに奔走。
だが、まだ経営パートナーは確定していない。

今季のスポンサー数は昨季の7、8割。
ユニホームの胸スポンサーも確定していない。
高額年俸のベテランを放出し、外国人選手の新規獲得はゼロ。
Jクラブの年間運営費は、J1が平均30億円、J2が10億円程度、
東京ヴはJ2で戦った06、07年でも20数億円規模を保っていたが、
今季の運営デザインが見えてこない。

入場料収入を十分に増やせなかったことも影響。
Jリーグ創成期は人気選手をそろえ、初代リーグ年間王者に輝くなど
名実ともにトップに君臨。
徐々に成績、集客とも落ち込み、01年以降は本拠地を川崎市から
東京都に移したが、流れは変わらなかった。
Jクラブの営業収入に占める入場料収入の割合はJ1、J2とも20%前後、
東京ヴは7~8%(06、07年)。
3季ぶりでJ1に復帰した08年の平均入場者数は約1万5000人、
同じ味の素スタジアムが本拠地のFC東京より、1万人以上も少ない。

Jリーグは、98年横浜フリューゲルスが出資企業の撤退で
経営難に陥って以降、「地域密着」を根幹に身の丈経営を推奨。
事務局内「リーグマネジメントグループ」では、Jクラブや一般企業で
経理、運営担当の経験を持つスタッフがクラブ経営の安定化促進、
運営ノウハウ共有化などを推進。
米国公認会計士の資格も持つ同グループの小沢昭彦マネジャーは、
経営は、入場料収入がベース。そのよりどころは地元。
企業以外に支えるところがなければ、企業が撤退すると危機になる」

東京ヴでは現在、地元教育委員会と連携して
サッカーコーチの学校巡回活動を大幅に増やすなど
地域活動にシフトしつつある。
クラブ創立40周年の今年、転換期となるか。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/20/20090220ddm035050053000c.html

2009年3月2日月曜日

第1部企業スポーツの危機(3)「身の丈」強化の限界(氷河期を生き抜く)

(2009/02/24 日本経済新聞)

昨年末、年明けと行われたハンドボール日本代表の強化合宿。
招集されたトヨタ紡織九州の2選手の姿がなかった。
派遣従業員を減らし、佐賀県神埼市の本社工場の生産現場が急変。
「製造技術員室」の2人も職場を離れづらくなった。

「こういうご時世。仕事をしっかりやる姿勢を会社に示すことが先決」
業務部長でもある同社ハンドボール部の原田孝幸ゼネラルマネジャー(GM)は
苦しい胸の内を明かす。
昨年12月から日本リーグの遠征帯同メンバーを4人減らし、
試合前日の宿泊もやめた。

企業チームは、会社側と来年度の活動費をめぐる折衝の真っ最中。
日本ハンドボールリーグ機構の家永昌樹GMは、
「前年比で10―20%減という企業が多い」
ラグビーでは、社員選手よりも高年俸のプロ契約を打ち切るケースが相次ぐ。
底の見えない不況がチーム防衛に走らせる。

オンワードが廃部を決めたアメリカンフットボール・Xリーグ。
昨季1部で最下位のROCBULLは、入れ替え戦を辞退、すすんで2部落ち。
前年には2部を連覇したクラブが、2年連続で入れ替え戦を辞退。
目標とすべき最高峰の舞台を半ば押しつけ合う。

縮み志向の背景には、リーグ参加費もある。
Xリーグ1部の場合、年会費やチケット購入の負担など総額800万円。
プレーオフを勝ち上がって決勝まで進めば、さらに最大750万円。
プロリーグでないから、賞金や放映権料の分配はない。
勝てば勝つだけ、チーム側の持ち出しが増える。

会社とリーグ(競技団体)との板挟みとなったチームの現場は、
双方の顔色をうかがいながら生き残りへ知恵を絞る。
ハンドボール男子の大崎電気は、スター選手の宮崎大輔をフル活用。
今季からホーム試合の入場券を、1000円から2000円に値上げ、
宮崎の所属マネジメント会社の協力を得て、
広告看板スポンサーを6社見つけた。

「興行収支は、トントン以上。会社側の持ち出しを少しでも減らさないと」
と大崎の矢内浩GM。
競技団体への不満も漏れる。
「チームや選手にプロ意識を持てと言うけど、協会がアマチュア。
何でも企業におんぶに抱っこでは困る」

ホンダが撤退するハンド日本リーグは、地域リーグをつくるなど再編。
社会人野球は、大会の統廃合を検討。
競技団体も、生き残り優先の縮み志向を強めている。

来季より、チーム数を10から8に減らすバレーボールのVプレミアリーグ女子。
関係者から「外れたチームが(意欲をなくし)やめてしまうのではないか」と、
コンパクト化のマイナス作用を案じる声も。
本来堅持すべき強化の道筋さえ見失いかねない。

酸味があって、スポーツにもぴったり!ドールからクエン酸約1.5倍のさっぱりバナナが登場

(日経ヘルス 2月25日)

青果物販売大手のドールは、日本で流通するバナナとしては
新品種となるラカタン種のバナナ、「ラカタンバナナ」を3月から本格発売。

ラカタン種は、一般的に日本で食べられているキャベンディッシュ種の
バナナに比べて、ひと回り以上小ぶりで、クエン酸が平均して約1.5倍
含まれているのが大きな特徴。
ほのかな酸味があり、口当たりもさっぱり。
バナナ特有のねっとり感が苦手という人も、食べやすい。
「本場フィリピンでは、『バナナのエリート』と称され、最も愛されている品種」
(ドール営業本部の大滝尋美さん)

バナナはもともと、ブドウ糖や果糖など様々な種類の糖分を含んで
エネルギーになりやすいため、運動前後に好んで食べる人が少なくない。
こうした点に加え、代謝を促すクエン酸も豊富なラカタン種は、
スポーツ後のエネルギー補給に最適として、ドールでは
「スポーツバナナ」として売り出していく考え。

PRの一環で、3月22日に開催される「東京マラソン2009」で、
参加者3万人に計6万本を無償提供する予定。
「通常のバナナが、1本の木から30kg程度とれるのに対し、
ラカタン種は15kg程度と希少性が高い」(大滝さん)ことなどから、
価格も1房298~350円と少し高め。

3月2日にはラカタンバナナの専用サイトを立ち上げ、品種の説明やレシピ、
販売店などの情報を提供していく考え。

http://nh.nikkeibp.co.jp/article/nhpro/20090225/103203/

住田型林業にふれる家造りシンポ参加者生産・加工の現場を見学

(東海新報 2月26日)

仙台市のNPO法人スモリ(須森明理事長)による
「山からの一貫体制による家造りシンポジウム」に参加する
建築関係者らが、同シンポジウムの一環として
住田町で「森林エコツアー」を実施。

地域林業活性化に向けた特色ある取り組みを見学し、
「住田型林業システム」に理解を深めた。
スモリでは、国産材活用による家づくりの支援事業を通じ、
地域経済の活性化や雇用促進、職業訓練に寄与しようと活動。
「山からの一貫体制による家造り」は、林産地で製造したパネルを用いて
住宅を超短工期で建設することにより、
消費者に低コストで提供し、林産地の経済活性化も図ろうとの考え。

今回のシンポジウムは、啓発事業が国土交通省の
地域木造住宅市場活性化推進事業に採択されたのを受けて実施。
初日が仙台市内での超短工期建築現場視察、
2日目が住田町の生産現場を見学する「森林エコツアー」として企画、
建築業関係者ら約60人が参加。

世田米のホテルグリーンベル高勘で、町産業振興課から
「森林林業日本一のまちづくり」の取り組みについて聞いたあと、
下有住字新切地内での現場見学に出発。

案内したのは、地元の農林業・水野哲太郎さん(72)と吉田正平さん(51)。
水野さんは、自ら植林し手入れするスギ林について話し、
「木価はよかったころの三分の一ほど、作業を外に頼めば儲けはない。
住宅建築によい材料を提供したいと、自分で間伐し手入れを続けている」
吉田さんは、カラマツやスギ、ヒノキなどの苗木生産をはじめ、
森林認証を取得したスギ林の管理について説明。
「木価はだいぶ落ち込み、山は荒れがちだが、努力している山も見てもらい、
その木で家を建てようという気持ちが皆さんに生まれればすごくうれしい。
少しでも山もとに還元される流れが出れば、再造林の力になるはず」

超短工期建築を可能とするパネル生産を一体的に手がける木工団地や
陸前高田市のけせんプレカット事業協同組合高田工場を見学。
森林の造成から加工利用にいたるまで、一貫した地域林業活性化への
取り組みについて理解を深めていた。

http://www.tohkaishimpo.com/

理系白書’09:挑戦のとき/5 九州大特任准教授・杉原知道さん

(毎日 3月1日)

人間のように、しなやかに動くヒト型ロボットを作りたい。
そうやって作ることで、ヒトの知能の謎が初めて分かるのではないか。
「介護用とか家事用とか、何の役に立つのかをあれこれ考える前に、まず作る。
うまく動けば用途は、いくらでも思いつくはず」
前のめりな研究姿勢を、自ら「クラフトマンシップ(職人かたぎ)」と呼ぶ。

タップダンスを踊るロボットを作り、05年「愛・地球博」に出品した経験。
母校の常勤ポストをなげうって07年、九州大の新制度
「次世代研究スーパースター養成プログラム」の
学術研究員(特任准教授)に移籍。

成果次第で正規の准教授登用も夢ではないが、
5年間の任期が終わって「お払い箱」となるリスクも。
「本当にいいの?」と仲間に言われたが、
自分一人で一から作る「時間と自由がほしかった。
やりたいことが、今はドンドン出てくる時期だから」
放置されていたヒト型ロボットの自作1号機だけが、九大への「嫁入り道具」

小学2年生のころから、パソコンゲームを改造して周囲を驚かせる
「典型的なパソコン少年」。
次第に「もっとすごいもの」でないと満足できなくなり、
やがて「人間ほど賢いもの」を作るのが夢に。
目標を人工知能からヒト型ロボットに変えたのは、大学2年の時。

ロボットの世界では、企業が強力。
杉原さんが進路を決めた直後の96年、「ASIMO」の前身となる
本田技研工業のヒト型ロボット「P2」の登場に圧倒。
ロボットが職人芸ではなく、工学研究の一分野だと認められる雰囲気に
大学が一変した。

「成功した組織は、次の失敗は許されなくなり、
やがて大胆な冒険は避けるようになるはず。その点、独り身は気楽」

プログラムに従って、なめらかに動かすだけではなく、
跳びはねて着地したり、転びそうになった時のとっさの動きなど
極めて複雑な情報処理と身体制御を、連動する数十個のモーター群と
それを動かす何本かの方程式で形にすることを目指す。

人間は、環境に対して本質的には受け身な存在。
外界に働きかけるだけではなく、外界から押し返される力に
柔軟に応じる動きができて初めて、私たちが身近に感じるはず」
==============
◇すぎはら・ともみち

さいたま市出身。情報理工学博士。04年、東京大大学院を修了、
同大学院知能機械情報学専攻助教を経て07年6月から現職。
電気電子学会(本部・米国)の最優秀論文賞を05年に受賞。

http://mainichi.jp/select/science/news/20090301ddm016040025000c.html

2009年3月1日日曜日

縦割り崩せるか「水の戦略機構」

(日経 2009-02-23)

権威はあるが、権力はもたない——。
そんなうたい文句の組織が発足。「水の安全保障戦略機構
水問題を資源確保、環境保全、防災など様々な角度から統合的に扱う組織、
政策の立案・実行の面で従来とは異なるプロセスを想定している。

どんな組織なのか?
まず権威。設立発起人は、森喜朗・元首相、御手洗冨士夫・日本経団連会長、
丹保憲仁・北海道大学名誉教授の3人。
政界、経済界、学会を代表する「顔」であり、オール・ジャパン体制で
水問題に取り組む姿勢を示す人選。
会社でいえば、取締役会に当たる「執行審議会」の委員には、
産業界・団体の役員、大学教授、有識者など42人が就任。

政界から自民党のほか、公明党、民主党の議員も加わり、超党派の体制。
第1回執行審議会では、森元首相があいさつ、
「ようやく国を挙げて、水に関する取り組みを支援できる構造が生まれます」

「権力」はどうか?
同機構は任意団体であり、法律に基づく権力は与えられていない。
この点では、賢人会議のようなものとも言える。

なぜ、こんな組織にしたのか?
出席したのは、執行審議会の共同議長に就任した遠藤武彦・元農水相と丹保氏。
記者との質疑応答でこんなやり取りがあった。
記者:「国民の関心を集めるには、例えば老朽化した水道管の更新などで
雇用を生み出すプロジェクトを打ち出すべきではないか」
遠藤氏:「私たちが話すのは簡単だが、癒着、談合と言われやすい。
(そうならないよう)わざわざ権威はもつが、権力はもたない組織にした」
国民から、「政治家が水問題で利権を得ようとしているのではないか」と
疑われるのを避けたいようだ。

どうやって政策に影響力を及ぼそうとしているのか?
水問題に取り組む他の組織との関係を示した
「『チーム水・日本』全体像」から見えてくる。

水問題については、経済界や学会などに様々なテーマを掲げた組織がある。
水処理関係の企業が集まり、海外での水ビジネスの拡大を目指している
「海外水循環システム協議会」もその1つ。
水の戦略機構は、これら様々な組織から要望や報告を受けて戦略を策定、
政府などに提言をしていく。

同機構の提言を行政に反映させるのが、「水問題に関する関係省庁連絡会」。
厚生労働省、経済産業省、国土交通省など13の省庁が参加して発足。
「省庁の壁を取り払う」(遠藤氏)狙い。
機構の「権威」が官僚を動かし、連絡会をつくらせたとも言えそう。

同機構の設立を発案したのは自民党だが、あえて超党派の体制にし、
経済界や学会などから多数のメンバーを募った。
“霞が関”を統合的に動かすため、同機構の権威を高めるのが狙い。

「権威はあるが、権力はもたない」という同機構はうまく機能するだろうか?
指導力と透明性の両立が課題に。
権威あるメンバーを大勢集めても、機構としてリーダーシップを
発揮できなければ、縦割り行政の打破はおぼつかない。
多様な水関連団体の要望や報告をしっかり“消化”できるか?
国益を守りながら、海外にも貢献するような提言ができるか?
民間団体などの要望を単に省庁の連絡会につなぐだけでは、
「戦略機構」の名が泣く。

指導力の発揮と同時に、透明性の確保も重要。
戦略機構が省庁連絡会にどんな提言をしているのか?
国民から見えにくければ、遠藤氏が懸念したように癒着、談合のたぐいを
疑われかねない。
省庁連絡会に提言する政策は、分かりやすく一般公開する必要がある。
同機構が指導力と透明性を両立できないと、
「チーム水・日本」の求心力も生まれてこない。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/tanso/tan090219.html

東大・岩坪教授にメトライフ医学研究賞/日本人で2人目

(2009年2月20日 Japan Medicine)

東京大大学院医学系研究科神経病理学分野の岩坪威教授が、
アルツハイマー病研究で成果を挙げた人に贈られる
2008年メトライフ医学研究賞を受けた。

共同受賞者は、ハーバード大のマイケル・S・ウォルフ教授。
受賞理由はともに「γセクレターゼ研究」。
ワシントンで表彰式が行われ、研究補助金20万ドルと個人賞が贈呈。

岩坪氏は、死亡したアルツハイマー病患者の脳組織病理学と
タンパク質生化学に関する研究が評価。
その研究成果は、神経変性のステップを説明する細胞・遺伝子モデルの
作成につながり、アルツハイマー病の発症機序として有力視されている
「βアミロイド仮説」を裏付けた。

βアミロイド仮説とは、脳のβアミロイドタンパク(Aβ)が凝集して脳実質に蓄積し、
アルツハイマー病を発症するというもの。
その過程でAβの産生量を低下させれば、
アルツハイマー病の発症や進行を食い止められるのではないか。

γセクレターゼは、Aβを作り出す酵素の1つで、
Aβの体内生産量を調節する「γセクレターゼ阻害剤」の創薬ターゲット。
γセクレターゼ阻害剤は、現在、各国の製薬企業が開発中。
同賞の日本人の受賞者は、井原康夫氏に次いで2人目。

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/20/92198/

定額給付金などで大幅増補正予算案を可決 3億円の交付金事業も大船渡市議会

(東海新報 2月26日)

大船渡市議会定例会は、20年度各種会計補正予算など、
議案12件と諮問2件を審議し、いずれも原案通り可決。
今補正予算は、定額給付金給付事業や臨時交付金事業を盛り込み、
6億円近い増額。
21年度各種会計予算案13件は、予算審査特別委員会に付託。

議案は、介護報酬改定に伴う介護保険料の急激な上昇抑制を
目的とした市介護従事者処遇改善臨時特例基金条例の制定と、
20年度一般会計、10特別会計の各補正予算。

補正予算は5億9280万円の増額、本年度予算は197億1450万円。
国・県補助事業費の確定による事業費補正をはじめ、
決算見込みによる予算調整、国の第二次補正予算に伴う定額給付金、
地域活性化・生活対策臨時交付金の関連事業費補正が中心。

主な増額分は、定額給付金事業に6億8633万円、
子育て応援特別手当交付事業に2668万円、
地域活性化・生活対策臨時交付金事業に3億円、
国際貿易コンテナ定期航路開設促進事業に1100万円。

経済対策の一つとして行われる定額給付金事業は、
対象者一人あたり1万2000円を支給。
65歳以上の高齢者と、18歳以下の青少年は2万円が給付。

大船渡市では基本的に、各世帯主の銀行口座への振り込みを
中心とする形で支給を計画。
市生活福祉部の山口清人部長は、「各世帯主に送付した申請書を記入、
通帳と身分証明書の写しを同封して郵送してもらうか、
窓口で申し込みを行う形を考えている」

もれなく市内全世帯に申請書を送る方法として、
郵送後に宛先不在などで戻ってきた場合、追跡調査を行う方針。

給付金の事務作業に伴い、臨時職員も若干名採用。
補正予算案通過を受け、今後申請書の送付作業準備を本格化。
子育て応援特別手当交付金は、第二子以降の3~5歳までを対象、
一人3万6000円を給付、700人分を予算化。
定額給付金との同時期給付を予定。

3億円の地域活性化・生活対策臨時交付金事業では、
道路・水路維持補修事業に1億3460万円、学校施設整備に2820万円、
観光施設整備事業に2000万円などを計上。

年度末の交付金となり、多くの事業は21年度に繰り越した形で実施。
諮問2件は、人権擁護委員に関して意見を求め、
柿崎昌源氏(三陸町吉浜)、木下美榮子氏(三陸町越喜来)の両氏を了承。

http://www.tohkaishimpo.com/

スキー:ノルディック世界選手権 複合団体 日本、復活の「金」 「歴史を作った」

(毎日 2月27日)

複合団体で14年ぶりの優勝を果たした日本(湊、加藤、渡部、小林)
4選手は今大会初のメダル獲得の喜びに浸るとともに、
1年後に迫ったバンクーバー五輪に向け、闘志を新たにしていた。

日本の複合は90年代、前半飛躍で稼ぎ、後半の距離で逃げ切るという
勝ちパターンで一時代を築いた。
今回は、飛躍でやや出遅れても、距離で優勝争いを演じるという
今までにない勝ち方だった。

象徴的だったのが、アンカーの小林。
4位以下が離れ、2位でスタートした小林は、
「メダルは確実。あとはどのタイミングで抜け出すか」と
冷静に仕掛けどころをうかがい、力を蓄えて勝負に備えた。

ワックスの選択が当たり、スキーがよく滑ったため、
「下りで前に出ていれば行ける」と判断し、
残り700メートルの上りでスパート。
ゴール目前の競技場内でも、「余裕があった」といい、
猛追するドイツをかわした。
その姿は、前半飛躍の貯金で後半距離は悠々とゴールする
荻原健らとは違っていた。

急成長中の湊が183センチの長身を生かした滑りで1位に躍り出て、
距離に不安のある加藤も粘った。
渡部も集団に食らいついた。
それぞれが距離で力を発揮し、飛躍の得意な高橋大斗(土屋ホーム)が
外れた試合で勝ったという結果が、距離での健闘を物語っている。

複合選手だった父の影響で競技を始めた小林は、
荻原健らの活躍をテレビで見て、「かっこいい。自分もああなりたい」
20歳の渡部にとって、日本の全盛期は既に「歴史」。
その歴史と常に比較されてきただけに、小林は
「ぼくらが新しい歴史を作ったと思う」と胸を張った。
バンクーバーへ向け、新スタイルによる「お家芸」復活ののろしが上がった。

◇最後の直線、競り勝つ

前半飛躍5位の日本は、後半距離をトップと24秒差でスタート。
距離を得意とする第1走者の23歳、湊祐介(東京美装)から
首位争いを展開し、24歳の加藤大平(サッポロノルディックク)、
20歳の渡部暁斗(早大)も力走して先頭集団を形成。
最終走者の26歳、小林範仁(東京美装)がドイツ、ノルウェーとの
競り合いから抜け出し、最後の直線で追いすがるドイツを振り切ってゴール。

日本は、荻原健司らを擁した92~95年に五輪と世界選手権を4連覇し、
世界最強の名をほしいままに。
98年長野五輪はメダルなしに終わり、荻原健の引退もあって低迷。
今回の勝利は、来年のバンクーバー五輪へ弾みをつける復活劇。

金メダルに輝いた日本は、リベレツ市内でのメダルセレモニーに出席。
4人は市民らの歓声を浴びながら、ステージ中央で
メダルとトロフィーを受け取り、喜びを爆発。

湊は「不思議な気持ち」、加藤は「うれしい。夢みたい」と笑い、
渡部は「メダルは取れたらいいなぐらいに思っていた」
小林は「バンクーバー五輪へ、いいステップになった。
勝ったのはたまたまだと思っている。
まだ課題はあるので、しっかりステップアップしたい」と、
冷静に1年後へ気持ちを切り替えていた。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/27/20090227dde035050020000c.html

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/2 英クラブの巨額負債

(毎日 2月18日)

イングランド・サッカー協会のトリーズマン会長は昨年10月、
イングランドのクラブが合わせて約30億ポンド(約3900億円)の
巨額負債を抱えている。

近年、プレミアリーグは外国資本によるクラブ買収が相次いだ。
03年、ロシア人の大富豪アブラモビッチ氏がチェルシーを買収。
05年、米国人実業家のグレーザー氏がマンチェスター・ユナイテッドを、
07年、米国人のジレット、ヒックスの両氏がリバプールを買収。
「4強」のうち、国外の富豪に買収されていないのはアーセナルのみ。

高年俸を用意して世界中からスターをかき集め、
「世界最高のリーグ」と称されるまで成長したプレミアリーグ。
好況時に隠れていた借金依存度の高さが、
金融危機で改めてクローズアップ。

国際的監査法人デロイト社によると、07年プレミアリーグの負債は
前年比19%増の24億6900万ポンド(約3210億円)。
マンチェスター・ユナイテッドの6億500万ポンド(約786億円)、
チェルシーの6億2000万ポンド(約806億円)などが目を引く。
トリーズマン会長の発言は、負債が膨らみ続ける現状を警告、
ビッグクラブが破綻する可能性についても、「あり得る」と語った。

世界的な金融危機は、外国人オーナーの懐をも直撃。
資金繰りがつかなくなり、経営難に陥るクラブが続出。
英国ではリバプールや、アイスランド人のグズムンドソン氏が
オーナーのウェストハムが売却される可能性があるなど、
ロシア系フランス人オーナーが会長を務め、
身の丈を超えた大量補強が裏目に出たポーツマスなども、身売り話が浮上。

プレミアリーグは、10年から3シーズンのリーグ生中継(英国内)の
放送権の3分の2を、オーストラリア生まれの「世界のメディア王」、
ルパート・マードック氏が所有する「ニューズ・コーポレーション」傘下の
英衛星テレビ大手「BスカイB」が獲得。

英紙タイムズは、入札額が前回の3シーズンを上回る
16億ポンド強(約2100億円)に達し、巨額な契約の影で、
クラブレベルでは危機は着実に進行。
状況がより深刻なのは、プレミアリーグより注目度が低い
欧州他国のリーグという声も。

国際サッカー連盟のブラッター会長は、金融危機を「津波」に例えて
警鐘を鳴らした。
まず影響を受けるのは、小さなクラブ。
そこから波が広がって第3波、第4波が襲ってくる可能性。
今、大丈夫だからといって安心はできない」

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/18/20090218ddm035050042000c.html

2009年2月28日土曜日

超薄型電池を開発 馬場岩手大教授と日本電気硝子

(岩手日報 2月24日)

岩手大工学部の馬場守教授(63)と、液晶ディスプレーなど
特殊ガラスメーカーの日本電気硝子(大津市、井筒雄三社長)は、
毛髪の約3分の1の厚さの超薄型ガラスを使い、
小型化した充電型の「薄膜電池」の共同開発に成功。

実用化、量産化も可能な優れたタイプで、
小型化が進む携帯電話、各種電子機器のバッテリーとして製品化が期待。

馬場教授や同社によると、開発した電池は、厚さ30マイクロメートルの
ガラス基板の上に、金属のリチウムなどを使って
約1マイクロメートルの薄い膜で覆い電極を付けた。

特許を取得するなど、この分野は馬場教授が第一人者。
絶縁性や耐熱性に富み、特殊技術で凹凸をなくした
超薄型ガラスを日本電気硝子が提供。

試作品は、縦横約5センチで、指で挟むと湾曲するなどガラス基板と
思えないほど薄く、重さも紙と同じくらい。
電池容量は、携帯電話のバッテリーの約2000分の1、
重ねるなどすれば総容量を大幅に増やせる。
実験で1万回の充電と再利用ができた。

馬場教授と日本電気硝子の担当者は2008年、
横浜市内の展示会で出会い、超薄型電池の開発に取り組んだ。
馬場教授は、10年以上前に薄膜電池の技術を確立、
性能がよく軽量化した基板を求めてきた。

馬場教授は、「材料のコストは安く、量産化ができ、市販品として普及も可能。
身近になった携帯電話の小型化や、バッテリーで動くカード型機器の
開発などにも道を開く」

日本電気硝子は、パソコンや液晶テレビに使うガラス製品が主力の
東証一部上場企業。
総務部の松田隆幸広報担当課長は、
「ともに開発した電池をぜひ製品化、産業化したい」

超薄型電池は国際展示会に出品、馬場教授も加わり
デジタル時計のバッテリーに使うなどして公開。

http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20090224_7

「認」「関」「肯」「称」 部下のやる気を引き出すキーワード

(日経 2月18日)

部下を鼓舞してやる気を引き出すことは、いつの時代でも上司の重要な課題。
「オレの背中を見ろ」という旧来型のスタイルはもう通用しない。
組織の活性化策を企業に授けているトーマツイノベーション社長の
白潟敏朗さんは、「認関肯称」をキーワード。
このキーワードは、認知、関心、肯定、称賛の頭文字をとったもの。
それぞれにどのような意味が込められているのだろうか?

◆「認知」…話しかける習慣、「関心」…調子を聞く一手

まず、認知と関心。これは、部下の名前を呼ぶことでできる。
「○○さん、おはよう」、「○○君、最近どう?」
簡単ではあるが、普段できている人は少ない。
「部下は、自分が認知され関心を持たれていることを知って安心する」

◆「肯定」…まず「なるほど」

肯定とは、否定をしないこと。
違うなどと言って話を遮らないことが重要。
「なるほど」、「おっしゃるとおり」といった相づちは部下をリラックスさせる。
どう見ても部下が言っていることが間違っていたら、
「なるほど。その心は?」と問うのがよい。
部下が自分の考えを整理し、自ら誤りに気づくのを待つ。

◆「称賛」…第三者の言葉で

最も難しいのが、最後の称賛だ。
日本人は、面と向かって相手を褒めることに慣れていない。
ましてや上司部下の関係だとなおさらだ。
「いいねー」、「やるじゃん」、「さすが!」といったワンフレーズなら照れくさくないし、
次第に口癖となって会話の潤滑油となる。
「部長が君を褒めてたよ」とか、「みんな○○君を頼ってるよ」など、
第三者の言葉として伝えると効果が倍増。

会話以外に、称賛の言葉を「流通」させるのも効果がある。
「普段目につかないような所まで掃除してくれて、いつも感心しています」、
「外国人の案内で困っているとき、英語で案内を作ってくれて本当に助かりました」

自動車学校や整備工場などを展開するユタカコーポレーション(豊橋市)は、
「やるじゃん」カード制度を採り入れている。
名刺大のカードに感謝の気持ちを書き、投票箱を通じて本人に伝える仕組み。
同社管理部課長補佐の磯村英也さんは、「全社で400通ほど流通している」
同社の従業員数は255人だから、1人が月に2枚近く書いている計算。
磯村さんも、折に触れて部下をねぎらう文章を書いている。

システム開発のキャパ(東京)は、メールを使って部下を積極的に褒める
「おほメール」運動を始めている。
「いやー、○○さんがいないとプロジェクトがうまく進まないよ」、
「君のおかげで、トラブルもうまく解決できた」などと褒める活動。
「効果はかなりある」とソリューション&プロダクトサービス部長の古株健さん。
部下に仕事を手伝ってもらうよう頼んだとき、
これまでは「忙しいんですが」と後ろ向きの反応が多かったが、
最近は積極的に引き受ける部下が増えている。

◆「褒めるミスマッチ」注意 良好な関係が大切

部下をむやみに褒めても、やる気を引き出せるわけではない。
ポイントを外したり、良好な人間関係を築けていなかったりすれば、
逆効果になるというから難しい。

西日本旅客鉄道(JR西日本)の安全研究所が、
「効果的な褒め方・しかり方に関する研究」というリポートをまとめた。
京阪神地区で勤務する運転士と、運転士の上司である係長の
合計530人に聞き取りした結果。

リポートが着目した第1点は、「褒めのミスマッチ」。
運転士が褒めてもらいたいと思っている点を、
係長が必ずしも褒めているわけではなかった。
このミスマッチが大きいほど、上司の部下への評価は低くなり、
部下のやる気も失われる傾向がみられる。
組織全体の業績にも悪影響を及ぼす。

第2のポイントは、部下と上司が良好な関係にあるかどうか。
リポートは、ある実験結果を紹介。
面識のない人同士で、上司と部下のロールプレイングをしてもらったところ、
部下が評価してほしい点を、上司役の人が褒めたとしても、
部下のやる気は上がらなかった。
上司と部下が互いに気まずく思っている場合、
褒めの効果はあまり期待できそうにないことを示している。

http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/bizskill/biz090218.html

新たながん抑制遺伝子

(2009年2月23日 読売新聞)

がんを抑える新たな遺伝子を、国立がんセンター研究所の
大木理恵子研究員らが発見。
がんの新しい治療法や診断法の開発につながると期待。
米科学誌セルに掲載。

肺がんなど多くのがんの細胞では、がん遺伝子「Akt」が活性化し、
異常な細胞増殖を起こす。
研究チームは、代表的ながん抑制遺伝子「p53」が機能する仕組みを
調べる過程で、これまでどのような働きがあるかわからなかった
遺伝子「PHLDA3」に注目。
この遺伝子から作られるたんぱく質は、Aktたんぱく質の活性化を抑える
働きがあることを明らかにした。

肺がん細胞の多くは、PHLDA3遺伝子が欠損しており、その結果、
Aktが活性化し、がん化に結びつくこともわかった。
大木研究員は、「PHLDA3たんぱく質と同様の働きをする薬剤を開発すれば、
新しいがん治療薬となる可能性がある」

http://www.m3.com/news/GENERAL/2009/2/23/92324/

逆風の中で:第3部・サッカー界は今/1 営業収入、大半が広告料

(毎日 2月17日)

「プロスポーツの私たちにとって、別の話だと理解している」。
Jリーグ横浜F・マリノスの運営会社の資本金(3000万円)のうち、
約93%を出資する日産自動車が、野球部や陸上部、卓球部の休部を
含む業務改善策を発表。
横浜マの斎藤正治社長は、即座にクラブへの影響を否定したが、
その表情は厳しかった。

Jリーグ発足時からの強豪で、固定ファンも多い横浜マ。
07年度の営業収入は、Jのクラブで2番目に多い約49億円。
入場料収入は約8億4000万円で、26億円超が広告料収入。
大部分を、日産自からの広告料が占める。

05年度から3年間の各クラブの経営状況を見ても、
横浜マの05~07年度の営業収入は3年連続で上から2番目だが、
広告料収入は25億円超で推移し、3年連続の1位。
Jのクラブの中では高収入ながら、親会社の影響を受けやすい経営。

「世界不況」の影響は、選手補強の面で昨年末に表面化。
スコットランド・プレミアリーグ、セルティックのMF中村俊輔の1月獲得断念。
日産自から億単位の移籍金について支援の約束を取り付け、
3月のシーズン開幕に間に合う1月中に獲得する方針が、
円高や販売不振などが日産自の経営を直撃して事態が急変。
横浜マの斎藤社長は、移籍金捻出が困難になったとして、1月獲得断念。

主力選手のうちDF中沢、FW坂田の流出は阻止できたが、
MF田中隼は名古屋へ、FW大島は戦力外通告を受け、新潟へ移った。
今季、チームは目立った補強をしない緊縮体制をとった。
中村俊について、斎藤社長が「彼がいるのといないのとでは、
チーム力が大きく変わる」と、契約切れで移籍金が生じなくなる
セルティックのシーズン終了後の6月にも獲得に動くことを明言。

そのさなかでの日産自の赤字転落。
今後の支援がさらに厳しくなるのは明らかで、中村俊の獲得について
斎藤社長は、「与えられた予算のなかで、やりくりして事業を進めるだけ」
契約切れで他クラブとの競争になる可能性もあり、
2億円前後とも言われる高額年俸の用意など、クリアすべき課題も多い。

年俸相場が急騰した欧州リーグなどと、Jリーグの経営規模の格差は
大きく開いてきている。
リーグ創成期には数多かった「国際的スター選手」は減り、
各チームとも「身の丈」に合った運営を模索。
横浜マの苦悩は、そんな現状を象徴する出来事の一つ。
==============
◇Jリーグ各クラブの経営状況

Jリーグでは05年度からJ1、J2各クラブの年度別「経営成績」と
「財政状態」を開示、ホームページなどで公開。
最新の07年度開示資料によると、各チームの営業収入は
浦和の約80億円がトップ。横浜マが約49億円、鹿島・約40億円、
名古屋・約36億円、J1のチームの平均は約33億円。
各チームとも、営業収入とほぼ同額の営業費用を計上、
営業利益の平均は約1100万円。
各チームとも、入場料収入を広告料収入が上回っているが、
浦和は入場料収入が約30億円でJ1のチームで唯一、
広告料収入(約24億円)を上回っている。

http://mainichi.jp/enta/sports/general/archive/news/2009/02/17/20090217ddm035050018000c.html

2009年2月27日金曜日

インタビュー・環境戦略を語る:東京ガス・前田忠昭副社長

(毎日 2月16日)

東京ガスは、09~13年度の5年間を対象にした中期経営計画を発表。
計画では、「環境を基軸とした価値創造」を3本柱の一つに据え、
CO2排出量の削減効果が期待される燃料電池の普及や、
太陽光など再生可能エネルギーの利用促進を盛り込んだ。

--地球温暖化防止のため化石燃料の使用抑制が必要。

◆天然ガスに含まれる炭素は比較的少なく、燃やした際のCO2排出量は
石炭を100とすれば、石油は80、天然ガスは60程度。
燃料を石油から天然ガスに置き換えるだけで、25%もの削減効果。
今後、10~20年で日本のCO2排出量を15~20%程度減らすなら、
天然ガスの利用促進が一番簡単な解決法。

--環境対応はどう強化していきますか。

◆中期経営計画では、再生可能エネルギーを事業の中に
取り込む方向性を示した。
東京ガスは、家庭用の給湯機器などを販売し、工場やビルには
ガスを活用した冷暖房設備を納めてきた。
今後は、「総合エネルギー事業」を目指し、太陽光発電を組み合わせた
省エネ設備を家庭、企業に提案。

--09年度から家庭で発電する燃料電池「エネファーム」の販売を開始。

◆燃料電池は、水と天然ガスから水素を取り出し、酸素と化学反応させて発電。
発電所では、発電の際に発生する熱の大半を空気中や海に捨てるが、
燃料電池の場合、熱は給湯・暖房用に有効活用。
火力発電所の電力を使った場合と比べ、エネルギー効率は約2倍、
CO2排出量も削減。
燃料電池では、発電に伴って新たに水が発生し、
その水は燃料電池内で再利用。
エネファームは、水という再生可能な資源を使ったシステム。

--販売目標は?

◆13年度に、累計で4万2000台を目指す。
実売価格は、工事費を含め1台300万円程度。
国から補助金(上限140万円)が出て、光熱費の節約効果も年6万円程度、
値段はまだまだ高い。
環境に関心が高い層に買ってもらい、量産効果などで価格を低下させたい。

--今後、家庭での発電が増えそうです。

◆従来、電力やガス事業者は遠隔地で大規模に発電やガスの製造を行い、
一方的に各地へ流してきた。
自分たちで作ったエネルギーを、自分たちで利用する「地産地消」が効率的。
今後、需要地がそれぞれ再生可能エネルギーを有効活用し、
それでも足りない部分をガス事業者が補完する役割を担うことが必要。
==============
◇まえだ・ただあき

東京大大学院修了(計数工学専攻)、70年に東京ガス入社。
商品技術開発部長などを経て00年に取締役、06年に副社長へ昇格。
現在は環境部などを担当。東京都出身。63歳。

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/02/16/20090216ddm008020037000c.html

iPS細胞が切り拓く今後の医学研究 慶応義塾先端科学技術シンポジウム

(毎日 2月17日)

人工多能性幹細胞(iPS細胞)の臨床応用を展望するシンポジウム
「iPS細胞が切り拓く今後の医学研究」が慶応大学で開かれた。
山中伸弥・京都大iPS細胞研究センター長や岡野栄之・慶応大医学部教授、
iPS細胞研究の4拠点を代表する研究者らが、研究の最前線などを発表。
安西祐一郎塾長のあいさつの後、司会の青野由利・毎日新聞論説委員が
iPS細胞研究の全体像を紹介。

文部科学省ライフサイエンス課の菱山豊課長が、
iPS細胞研究に関する政策を説明。
国は、「iPS細胞研究等の加速に向けた総合戦略」を策定、研究を支援。
文科省の09年度予算案では、iPS研究に関連する予算が45億円。
「iPS細胞研究が重要だと考え、集中して予算を確保。
iPSへの期待は大きく、皆さんのご支援を賜りたい」

山中センター長は、iPS細胞の可能性と課題について分かりやすく解説、
「Myc」(ミック)と呼ばれる遺伝子を題材。
Mycは、皮膚細胞などからiPS細胞を作る際に導入された4遺伝子の一つ。
がん遺伝子としても知られる。
「Mycは、腫瘍形成という点では悪者だが、
完全な初期化を促進するという善の部分もある。
初期化が不完全だと未分化の細胞が残り、特殊な腫瘍ができる。
単純に、化合物に置き換えるのがいいのかどうかは疑問。
ミック君の運命はどうなるのか?
iPS細胞研究は奥が深い」と、ユーモアを交えながら問題提起。

坪田一男・慶応大教授は、「99年、角膜の幹細胞移植例を発表、
世界に先駆けた体細胞の移植として注目。
幹細胞による再生医療はすでに実現している。
マウスで、iPS細胞から角膜の細胞を作ることができた。
近い将来、ヒト細胞でもできる。
iPSの出現によって、涙腺の再生医療の道筋も見え、
患者さんを治せる希望が生まれた」

中内啓光・東京大教授らのグループも世界に先駆けて、
止血作用を持つ血小板をマウスとヒトの胚性幹細胞(ES細胞)から作った。
同じ培養系で、iPS細胞でも血小板を作ることに成功。
中内教授は、「出血系疾患の患者さん由来のiPS細胞を遺伝子修復し、
正常な血小板を作って自己輸血することが、理論的には可能な段階に」

高橋政代・理化学研究所網膜再生医療研究チームリーダーは、
サルのES細胞から作った網膜色素上皮移植成功などの実績を踏まえ、
iPS由来の色素上皮細胞や視細胞の作成に取り組み、
「再生医療は、必ず主流になる治療法であり、
企業の協力があれば、臨床応用がより早く進む」

福田恵一・慶応大教授は、心筋細胞のシートを作って、
心筋梗塞部分を修復できることを動物実験で明らかに。
心筋細胞は移植後に大きくなり、周辺から血管が入り込んで
血液が供給されることも確かめた。
「ES細胞で臨床試験をして、安全性が担保された時点で、
iPS細胞の臨床試験に取り組みたい」

体細胞の中でも、iPS細胞にしやすい細胞とそうではない細胞とがある。
松崎有未・慶応大特別研究准教授は、「脂肪や骨などに分化する
間葉系幹細胞だと、高品質のiPS細胞ができる」

岡野栄之・慶応大教授は、iPS細胞を使った中枢神経系再生の
世界最先端の成果を詳しく発表、「ゴールが近づいてきた」

羽鳥賢一・慶応大知的資産センター所長は、iPS細胞をめぐる特許が
出願された経過を時系列的に説明、
大学の特許収入は、米国では年間2000億円超、日本は13億円しかない。
米国には仮出願制度があるが、日本にはないなど、
日米の特許制度には違いがある。
米国の制度をよく理解して対応する必要がある」

iPS細胞研究には、製薬会社などの企業の関心も高い。
中西淳・武田薬品工業開拓研究所主席研究員は、
「iPS細胞を使うと、創薬スクリーニングや薬効評価、安全性評価に
活用できる可能性は非常に高い」
「ヒトの組織細胞の機能をきちんと反映しているか、
分化して成熟細胞になるまでの期間を、どれだけ短縮できるかが課題」

日本せきずい基金の大濱眞理事長が車椅子で演台に。
大濱理事長は、幹細胞移植を受ける海外のツアーに
70カ国1200人が参加したという現状を紹介、
「患者は先行きが見えないことに焦燥感を抱いている。
iPS細胞樹立は希望の光。
患者団体にも分かりやすい形で、研究の環境整備を進めてほしい。
市場原理に任せていては、研究は進まない。
政府の援助による臨床応用が不可欠だ」

◆基調講演
◇「遺伝性」の治療も可能に-岡野栄之(慶応大医学部教授)


私たちは幹細胞の技術を使って、中枢神経系の再生に取り組んできた。
中枢神経系の再生研究の中で、最も歴史が古いのはパーキンソン病の研究。
ドーパミン・ニューロン(神経細胞)が脱落する病気で、
根本治療はニューロンの再生。

劇的な治療効果を示した例もあり、世界で200例ほど行われたが、
量的な制約や倫理的問題が。そこで、幹細胞研究に移った。
1月23日、FDA(米食品医薬品局)は、米ジェロン社によるヒトES細胞を使った
脊髄損傷治療の臨床試験を承認。
損傷から7~14日の亜急性期で、炎症が治まった時期に移植。
この時期の移植がベストであることは、私たちが動物実験で明らか。
受精卵由来のES細胞には、倫理的な問題や拒絶反応の問題が。
体細胞の初期化が次のステップに。

私たちは、脊髄損傷に対する再生医療のスーパー医療特区の申請、採択。
日本発の医薬品を使って、損傷後まもない急性期の治療、
亜急性期の細胞移植治療の臨床研究をしたい。

iPS細胞については、ES細胞ですでに確立していた方法で、
神経系細胞を誘導することができた。
安全性を考え、腫瘍化するかどうかが大事。
iPS細胞から誘導した神経前駆細胞の集団の中に、
未分化の細胞が0・01%混入していると腫瘍が形成される。

腫瘍形成しないことを確認した神経前駆細胞を、
損傷後9日目に後肢マヒのマウスに移植。
有意な運動機能の回復が見られた。
ヒトiPS細胞に由来する神経前駆細胞を、免疫不全マウスに50万個移植。
運動機能は有意に回復し、前肢と後肢の協調運動も。
iPS細胞由来の神経前駆細胞移植の治療効果を、
世界に先駆けて示すことができた。

今後、疾患に特有の神経細胞を作って、病気の原因を明らかにしたい。
将来は、遺伝性疾患の細胞治療も可能になる。

◆特別講演
◇課題克服へ貢献責務--山中伸弥(京都大iPS細胞研究センター長)


iPS細胞をつくるのに必要なのは、数ミリの皮膚細胞。
これを培養し、3つ、あるいは4つの遺伝子を導入すると、1カ月でiPS細胞に。
ヒトES細胞にそっくりな細胞で、半永久的に増やすことができる。
増やした後で分化誘導法を適用すると、例えば拍動する心筋細胞や、
ドーパミンを作る神経細胞ができる。

iPS細胞で何ができるのか?
患者さんからいただいた皮膚細胞でiPS細胞を作り、
それを元に神経や内臓の細胞を作る。
心臓に疾患のある患者さんの心臓の細胞を使って研究する、
薬の開発をするということができる。

運動ニューロン病を例に。運動神経の異常により、筋力低下をきたす病気。
代表例は脊髄性筋萎縮症(SMA)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、
いずれも有効な治療法はない。
原因の一つは、よい病態モデルがない。
iPS細胞の技術を使えば、患者さんと同じ遺伝子を持った
運動ニューロンを作り、原因解明の研究ができる。
ようやくスタートラインに立てる。薬の毒性、副作用の評価にも使える。

細胞移植治療、再生医療への応用も期待。
患者さんご自身の細胞を使うので、倫理的な問題は少なく、
拒絶反応の心配もない。

課題もたくさん。
分化誘導法は、肝臓や膵臓の細胞については十分ではない。
いかに病態を再現するかも課題。
再生医療のハードルはさらに高い。初期化誘導に伴う安全性の問題が。
一番心配していることは、腫瘍の形成。移植法の開発も必要。
臨床試験をできるレベルには達していない。

iPS細胞は世界に広がっている。
3000人以上の研究者が入手し、研究論文も増えている。
日本もきちんと貢献することが私たちの責務。

◆安西祐一郎・慶応義塾長あいさつ

世界のフロンティアで活躍されている先生方の講演で、とても楽しみ。
文部科学省の再生医療実現化プロジェクト・ヒトiPS細胞等研究拠点の
整備事業では、慶応大が京都大、東京大、理化学研究所とともに選定、
協力して研究を進めている。

スーパー特区プロジェクトもあり、岡野栄之教授を代表研究者として、
中枢神経系の再生医療のための先端医療開発プロジェクトが採択。
治療法の確立されていない脊髄損傷、脳梗塞、筋萎縮性側索硬化症など
中枢疾患系の疾患に対する研究。
中枢神経系の再生医療の実現を目指し、臨床応用への研究を加速。
iPS細胞の研究は、世界的な競争の真っただ中に。
日本のiPS細胞研究が、今後の医学研究を切り拓いてほしいと念願。
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◇iPS細胞
神経や筋肉、内臓の細胞など、あらゆる細胞に分化しうる能力を持つ
万能細胞の一種。
山中伸弥・京都大教授らが、06年世界で初めてマウスのiPS細胞を作成、
07年にはヒト細胞でも成功。
従来、万能細胞として期待されてきた胚性幹細胞(ES細胞)は
受精卵を壊して作るため、倫理的な問題を抱えていた。
iPS細胞は、患者本人の細胞から作り、倫理的問題は少ない。
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◇講演者一覧
■「文部科学省におけるiPS細胞研究への取り組み」
 菱山豊・文部科学省研究振興局ライフサイエンス課長

■「iPS細胞を用いた角膜、涙腺の再生プロジェクト」
 坪田一男・慶応大医学部教授

■「iPS細胞からの血液系細胞の誘導」
 中内啓光・東京大医科学研究所教授

■「網膜変性疾患とiPS細胞」
 高橋政代・理化学研究所網膜再生医療研究チームリーダー

■「iPS細胞がもたらす循環器疾患診療へのインパクト」
 福田恵一・慶応大医学部教授

■「高純度体性幹細胞を用いたiPS細胞誘導の高効率化と高品質化」
 松崎有未・慶応大医学部特別研究准教授

■「先端医療分野の知財戦略」
 羽鳥賢一・慶応大知的資産センター所長

■「iPS細胞と次世代創薬」
 中西淳・武田薬品工業開拓研究所主席研究員

■「患者の望むiPS細胞治療:その道筋」
 大濱眞・NPO法人日本せきずい基金理事長

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2009/02/17/20090217ddm010040127000c.html